[独自調査] Report ID: SBR-2026-009
公開日:2026年9月9日 著者:菊地 将
要旨
弊社が47,967社(独自企業データベースの有効観測企業)の企業サイトを独自調査した結果、採用サイトを持つ企業のうち、求職者が最も重視する福利厚生・働き方情報を両方掲載しているのはわずか7.4%でした。本記事では、この独自データと、採用担当者に「現実的な情報開示」の効果を示す組織心理学のメタ分析(40研究)を組み合わせ、情報不足の採用への影響を検証します。ただし、情報不足時の具体的な行動の内訳(追加検索・口コミ確認・応募見送りの比率)は、今回の調査では直接確認できませんでした。
調査概要
- 対象:企業の採用サイト
- 期間:2026年9月4日時点
- 方法:企業サイトの独自調査
- サンプル:47,967社(独自企業データベースの有効観測企業)
自社の採用サイトに、福利厚生や働き方の情報は載っているでしょうか。求職者調査(ニュートラルワークス、2023年3月実施、n=233)では、採用サイトで「具体的な仕事内容が分からない」と感じた経験がある求職者が55.2%、志望度が実際に低下した経験がある求職者が約2割にのぼりました。一方、弊社が47,967社(独自企業データベース[以下DB]の有効観測企業)の企業サイトを調べたところ、採用サイトを持つ企業のうち、福利厚生と働き方の情報の両方を載せている企業は7.4%にとどまりました。
本記事では、この独自データに、現実的な情報開示の効果を扱った組織心理学のメタ分析(複数の研究結果を統合して分析する方法。40研究)を組み合わせ、情報不足が採用にどう影響しうるかを検証します。ただし、情報を見つけられなかった求職者が実際にどう動くか(追加検索、口コミの確認、応募の見送りなど)の割合を直接示すデータは、今回の調査では見つかっていません。読み終えたときには、何が確認できていて何が言えないのかを区別したうえで、自社サイトを点検する視点を持てる構成にしています。
本記事は個別テーマに絞っているため、上位の全体設計を確認したい場合は、採用サイトに載せるべき情報の全体像も参照してください。
採用サイトを持つ企業は46.3%にとどまる
まず、採用サイトそのものを持つ企業がどれくらいあるかを確認します。弊社の独自データベース(観測時点:2026年9月4日、観測成功47,967社)で採用サイトの保有状況を調べたところ、専用の採用サイトを持つ企業は22,231社、46.3%でした。半数以上の企業は、企業独自の採用サイトを持たない状態で採用活動を行っています。
では、採用サイトがある企業には、どのような情報が載っているのでしょうか。次の節で見ていきます。
採用サイトがあっても、福利厚生・働き方の情報はどれくらい載っている?
この節では、採用に関わる情報ごとの保有率を比べ、福利厚生や働き方の情報がほかの情報より少ないかを確認します。

採用サイト自体は46.3%の企業が保有していますが、社員インタビューや福利厚生など、働く実態を判断する情報になるほど保有率が低下しています。
次の表は、各ページの保有率です。括弧内は、該当する企業数と対象企業数を示します。対象企業数は項目によって異なり、47,967社の項目と37,924社の項目があります。
| 項目 | 保有率 |
|---|---|
| 求人票(職務内容等の詳細) | 55.0%(20,862/37,924) |
| 採用サイト保有 | 46.3%(22,231/47,967) |
| 社員インタビュー・働き方が伝わるページ | 17.7%(8,479/47,967) |
| 職種別の採用ページ | 9.3%(3,525/37,924) |
| 福利厚生ページ | 7.4%(3,560/47,967) |
| 新卒採用専用ページ | 3.6%(1,365/37,924) |
求人票と採用サイトは5割前後ですが、社員インタビュー・働き方が伝わるページは17.7%、福利厚生ページは7.4%と、働く実態を判断する情報ほど少なくなります。職種別の採用ページ(9.3%)と新卒採用専用ページ(3.6%)も1割に満たない水準です。
なお、中途採用専用ページは表に含めていません。DB上の分類を検証した結果、該当企業225社のうち96.4%が求人票ページのURLも同時に保有しており、多くのケースで同一URLが両方の分類に登録されていたためです。求人票との分類上の重複が大きく、独立した指標として使えないと判断しました。
外部の求職者調査(ニュートラルワークス、2023年3月8〜10日実施、就活経験者・現役就活生233名対象)では、求職者が採用サイトで最も知りたい情報として「仕事内容」が85.7%で最多でした。一方、独自DBで、仕事内容や働き方が具体的に伝わる社員インタビュー等のコンテンツを持つ企業は17.7%にとどまります。調査対象も項目も異なるため単純には比べられませんが、求職者が知りたい情報と企業の掲載状況の間には、大きな開きがあるとみられます。
採用サイトを持つ企業でも、福利厚生と働き方の両方を載せているのは7.4%
ここまでは、47,967社などを分母にした数字でした。この節では、採用サイトを持つ企業(22,231社)に限定して、福利厚生ページと社員インタビュー(働き方)ページの掲載状況を集計した結果を確認します。

採用サイトを開設していても、福利厚生と働き方の両方を確認できる企業は7.4%にとどまります。
内訳は次のとおりです。
- 福利厚生ページを掲載:13.2%(2,940/22,231)
- 社員インタビュー・働き方ページを掲載:28.4%(6,317/22,231)
- 両方を掲載:7.4%(1,653/22,231)
- どちらも掲載なし:65.8%
前の節の表にも「福利厚生ページ7.4%」がありますが、これは47,967社に占める割合です。この節の「両方を掲載7.4%」は、採用サイトを持つ22,231社に占める割合で、分母が異なります。
採用サイトを持つ企業のうち、9割近くは福利厚生ページを持っていません。福利厚生と働き方の両方を満たしている企業は、10社に1社を下回ります。
情報が足りないと何が起きる?外部調査と学術メタ分析から分かること
情報不足の影響について、外部調査・学術研究・独自DBの3つが、それぞれ何をどこまで示しているのかを分けて確認します。ここで押さえたいのは、各根拠が直接示すことと、組み合わせて考えられることは別だという点です。
外部調査(求職者への自己報告アンケート)が直接示すこと

外部の求職者調査では、仕事内容が分からない経験や、情報不足によって志望度が下がった経験が確認されています。
求職者調査の主な結果は次のとおりです。
- 採用サイトの利用率:70.4%
- 「仕事内容が分からない」と感じた経験:55.2%
- 志望度が低下した経験:約20%
- 入社後、仕事内容にギャップを感じた経験:69.1%
仕事内容が分からないと感じた経験がある人は半数を超え、志望度が低下した経験がある人も約2割でした。いずれも求職者の自己報告であり、実際の応募行動を測ったものではありません。
学術メタ分析が示すこと
組織心理学の学術研究として、Academy of Management Journal誌に掲載されたメタ分析(Phillips, 1998、40件の研究[うち26件は公刊済み]を統合)を確認しました。この研究は、「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP)」(良い面だけでなく現実的な情報を採用選考プロセスで開示する手法)の効果を検証し、RJPが採用選考プロセスからの離脱(attrition)の減少、入社後の期待値の適正化、自発的離職・全体の離職率の低下と関連していることを、複数の研究を統合した結果として示しています。
RJP理論自体は「良い面・悪い面を含めた現実的な情報開示」を扱うものであり、本記事のテーマである「福利厚生・働き方情報の欠落」と完全に同一の変数を扱っているわけではありません。しかし、「求職者に伝える情報の完全性・具体性が、採用プロセスからの離脱に関連する」という理論的・実証的な知見は、本記事の中心質問と直接関連する学術的裏付けとして参照できます。
独自DBが直接示すこと
福利厚生×働き方情報を両方持つ採用サイトはわずか7.4%という構造的な情報不足の実態です。
ここで直接示されているのは、採用サイトを持つ企業のうち福利厚生と働き方の情報を両方載せているのが7.4%という掲載状況です。上の「わずか」「構造的な情報不足の実態」は筆者の評価で、次に述べる組み合わせの解釈にあたります。
これら3つを組み合わせた解釈(推論であり、いずれか単独が証明した事実ではありません)
独自DBが示す構造的な情報不足、外部調査が示す求職者の自己報告、学術メタ分析が示す「情報の現実性・完全性と採用プロセスからの離脱の関連」は、相互に整合的な全体像を構成していると考えられます。

企業側の情報掲載状況、求職者の自己報告、学術研究はそれぞれ異なる証拠です。本記事では3つを組み合わせて解釈していますが、情報不足後の具体的な行動比率まで直接証明したものではありません。
ただし、明確にしておくべき限界があります。求職者が採用サイトで情報を見つけられなかったとき、「追加検索する」「口コミサイトを見る」「求人媒体に戻る」「応募を見送る」のうち、どの行動をどの程度の割合で選ぶのかを直接示す統計データは、今回の調査(独自DB分析、外部求職者調査、学術メタ分析、既存の関連記事の確認)のいずれからも見つかりませんでした。本記事は、この行動の内訳を独自に明らかにしたものではありません。
業種や企業規模で、採用サイトの保有状況は違う?
採用サイトの保有状況は、企業規模や業種によっても差があります。自社の水準を位置づける手がかりとして確認してください。
企業規模別に見ると、採用サイト保有率は従業員51〜200人規模が70.4%と最も高く、1〜10人規模は45.4%、1,000人以上の大企業でも50.7%にとどまりました。業種別では医療・福祉・介護業種が採用サイト保有率80.8%・福利厚生ページ保有率17.9%と、他業種より高い水準にあります。人材確保が経営課題として強く意識されている業種ほど、採用サイトへの投資が進んでいる可能性があります。ただし、これは数値からの推測で、理由を直接確かめたものではありません。
自社の採用サイトを点検する4つの視点
ここまでの結果を踏まえ、自社の採用サイトを点検するときは、次の4点を確認します。
- 福利厚生・働き方(社員インタビュー等)の情報が、両方とも掲載されているか(採用サイト保有企業の平均は7.4%)
- 求職者が最も知りたい情報として最多だった「仕事内容」(85.7%)に、具体的に答えられているか
- 新卒/中途、職種別など、求職者の状況に応じた情報の出し分けができているか
- 自社の業種平均と比較して、情報整備は進んでいるか遅れているか(前の節の業種別・規模別の数値が手がかりになります)
必要情報を補った後に、求人詳細・CTA・フォームでの離脱まで確認する場合は、採用サイトの応募率を改善する方法も参照してください。
まとめ:まず福利厚生と働き方の情報の有無を確かめる
弊社が独自集計した47,967社のデータでは、採用サイトを持つ企業は46.3%にとどまり、採用サイトを持つ企業の中でも、福利厚生と働き方の情報を両方掲載しているのは7.4%でした。外部の求職者調査では、仕事内容が分からないと感じた経験が55.2%、志望度が低下した経験が約2割あり、組織心理学のメタ分析(40研究)は、情報の現実性・完全性が採用プロセスからの離脱に関連することを示しています。ただし、情報不足時の具体的な行動の内訳(追加検索・口コミ確認・応募見送りの比率)は、今回の調査では直接確認できませんでした。
最初の一歩は、自社の採用サイトに福利厚生と働き方の情報がそろっているかを確かめることです。自社の採用サイトにどのような情報不足があるか棚卸ししたい方は、下記の資料をご活用ください。
参考文献・出典URL
この記事で参照した情報を確認できます。
- Phillips, J. M. (1998). “Effects of Realistic Job Previews on Multiple Organizational Outcomes: A Meta-Analysis.” Academy of Management Journal, 41(6), 673-690. https://journals.aom.org/doi/10.5465/256964
- Wanous, J. P. (1973). “Effects of a realistic job preview on job acceptance, job attitudes, and job survival.” Journal of Applied Psychology, 58, 327-332. https://doi.org/10.1037/h0036305
- 株式会社ニュートラルワークス「採用サイトに関する調査」(2023年3月8-10日実施、n=233) ※記事「企業の”採用サイトの質”が新卒就活生の志望度に影響か」(HRpro) https://www.hrpro.co.jp/trend_news.php?news_no=2205
- ds-b.jp「採用ページ・採用サイトの情報が古いと30%の求職者の志望度が低下!」(参考記事、マイナビ2017年卒調査引用) https://ds-b.jp/media/pages/460/
- 弊社独自企業データベース(観測時点:2026年9月4日、観測対象47,967社/37,924社)
‹ 親記事: 採用サイトには何を載せるべきか。ページの作り方とSEO・AIOの基礎知識
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