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「AIに仕事を奪われる」は本当か?企業の差が縮む時代、武器になるのは実績とデータ

部署:マーケティング担当者部署:人事・採用担当者部署:広報・PR担当者部署:経営者・責任者レベル:実践

[独自調査] Report ID: SBR-2026-034

公開日:2026年10月6日 著者:菊地 将

要旨

AIに仕事を奪われるのは本当なのか。事務・エンジニアの求人票400件を2021年と2026年で独自比較した結果、少なくとも今回調べた範囲では、AIによって仕事が一斉に奪われている状況は確認できませんでした。さらに既存研究から、企業同士の違いが見えにくくなる可能性と、その中で何を発信すべきかを考えます。

「AIに仕事を奪われる」と言われ続けています。では、求人票に書かれた仕事内容は、この5年で実際に変わったのでしょうか。マイナビ転職に掲載された事務・バックオフィスとエンジニアの求人票を、2021年と2026年で各100件、合計400件比較しました。

結果は、意外なほど変化の小さいものでした。入力や資料作成、テストなどの業務の記載は大きく減っておらず、企画・設計・要件定義など、判断が必要な業務への急な移行も確認できませんでした。変化の方向が見えたのは、AI関連の語、経験年数の要求、月給の下限です。仕事は残ったまま、そこにAIが加わり始めた。求人票は、そう読める姿を示しています。

ただし、仕事が残ったとしても、企業にとっての問題は別にあります。もしAIの活用によって、多くの企業がこれまでより安定して成果を出せるようになれば、サービスの品質だけでは他社との違いを示しにくくなり、顧客から見て企業ごとの差も分かりにくくなる可能性があります。この点は今回の調査で確認したことではなく、調査結果を踏まえた考察です。

この記事では、まず求人票の比較結果と、その結果から言えることと言えないことを整理します。そのうえで、考察の部分として、企業が何を発信すべきか、どこで出すか、何から始めるかを具体的に説明します。

求人票の仕事内容は、2021年から2026年で大きくは変わっていなかった

「仕事内容は変わったのか」という問いへの答えは、「求人票の上では、大きくは変わっていない」です。

事務・バックオフィスとエンジニアのどちらでも、定型的な作業を示す語は減っていませんでした。企画・設計・要件定義といった判断や設計を示す語も、大きくは増えていません。変化の方向が見えたのは、AI関連の語、経験年数の要求、月給の下限です。主な指標の結果を、職種別に次の表にまとめます。右端の列が読み取りです。

項目 事務・バックオフィス エンジニア 読み取り
入力・資料作成・テストなどの業務の記載 70% → 77% 55% → 57% 大きな減少なし
企画・設計・要件定義などの業務の記載 54% → 56% 89% → 93% 大きな増加なし
AI関連語を含む求人 1% → 3% 16% → 22% 増加方向、差は小さい
自動化関連語を含む求人 2% → 8% 9% → 13% 増加方向
経験年数の要求がある求人 15% → 24% 26% → 37% 増加方向
未経験可の求人 91% → 90% 65% → 65% 変化なし
月給下限の中央値 22万円 → 25万円 23万円 → 26万円 上昇

※2021年・2026年ともに各職種100件(弊社集計)。月給は記載のある求人のみが対象で、事務は78件→68件、エンジニアは78件→55件。各指標の定義は、この後の「何の語を数えたか」で説明します。

事務とエンジニアの求人票を2021年と2026年で比較し、定型業務と企画・設計業務の記載割合が大きく変わっていないことを示す比較図

図でも同じ傾向を確認できます。事務・エンジニアとも、入力・資料作成・実装・テストなどの記載は大きく減らず、企画・設計などへの急な移行も確認できませんでした。

生成AIの影響は、職業の消滅より仕事の変容として語られている

生成AIの影響については、国際機関の分析でも「職業がなくなる」より「仕事の中身が変わる」という見方が示されています。

国際労働機関(ILO)は2025年5月、職業ごとに生成AIの影響をどの程度受けやすいかを推計しました。世界の就業者の4人に1人は、生成AIの影響を一定程度受ける職業に就いていると推計され、その中でも特に影響を受けやすい職業は全雇用の3.3%です。一般事務や事務補助などの事務職は、引き続き生成AIの影響を受けやすい職種とされています。ILOは、多くの仕事には人が関わる必要のある業務が残るため、仕事そのものがなくなるより、仕事の中身が変わる可能性の方が高いと述べています。

ただし、これは世界全体の推計です。日本の企業が実際に出している求人で、仕事内容の記載が変わったのかどうかは、別に確かめる必要があります。そこで、事務とエンジニアという生成AIの影響を受けやすいと言われる2つの職種を選び、求人票の記載を比べました。次の節で、比べた求人の条件と、数えた語を説明します。

事務とエンジニアの求人票400件を、仕事内容の記載で比較した

比較した求人と条件

マイナビ転職に掲載された求人情報から、事務・バックオフィス職とエンジニア職の求人を選び、2021年と2026年の求人票を比べました。各年・各職種100件ずつで、合計400件です。収集時期と企業数は次の表のとおりです。

区分 件数 収集時期 企業数
事務・2021年 100件 2021年1〜10月 98社
事務・2026年 100件 2026年4〜9月 99社
エンジニア・2021年 100件 2021年1〜10月 95社
エンジニア・2026年 100件 2026年4〜9月 96社

※2026年は、掲載終了と表示されていた求人を除いた100件です。掲載終了を含めた100件で集計しても、大きな傾向は同じでした。

表のとおり、企業数は件数とほぼ同じで、同じ企業の求人が大きく重なっているわけではありません。同じ求人の重複は除いています。

一方で、この比較には限りがあります。2021年と2026年の両方に登場する企業は3社だけで、同じ企業を5年間追ったものではありません。求人件数の増減は比較していません。見ているのは、求人票に何が書かれているかです。

何の語を数えたか

仕事内容の本文から、次の語を含むかどうかを求人ごとに判定しました。

  • 入力・資料作成・テストなどの業務:入力、転記、資料・書類作成、電話・問い合わせ対応、受付、集計、テスト、コーディング、保守など、手順に沿って進める業務を示す語。幅広く拾う基準と、より限定した基準の2通りで確認しました
  • 企画・設計・要件定義などの業務:企画、戦略、設計、要件定義、折衝・交渉、レビュー、マネジメント、意思決定、提案など、考えて決めることが多い業務を示す語。こちらも幅広く拾う基準と、より限定した基準の2通りです
  • AI関連語:AI、生成AI、ChatGPT、Copilot、LLM、機械学習、プロンプトなど
  • 自動化関連語:RPA、自動化、ノーコード、マクロ、業務効率化など
  • 求められる水準:経験年数の要求、未経験可、マネジメント経験、資格
  • 条件:月給の下限、雇用形態

語の有無を見ているため、業務時間の配分や、実際の仕事の難しさそのものを測ったものではありません。結果は、「求人票にその語が書かれている割合」として読んでください。

事務の求人では、入力や資料作成などの定型作業の記載が残っている

事務・バックオフィスの求人で、入力や資料作成など、手順に沿って進める業務を示す語を含む求人は、幅広く拾う基準で70%から77%、より限定した基準で60%から65%でした。減ってはおらず、むしろわずかに増えています。企画や設計など、判断が必要な業務の記載も54%から56%と、ほぼ横ばいです。

個別の作業語の結果は、次のとおりです。

作業 2021年 2026年 差
データ入力・入力作業 30% 32% +2pt
転記 0% 0% 0pt
資料・書類作成 36% 30% −6pt
一次対応(電話・問い合わせ・受付・来客) 37% 30% −7pt
更新・修正 10% 2% −8pt
折衝・調整・提案(参考) 33% 36% +3pt
企画・改善提案(参考) 14% 19% +5pt

※各100件、弊社集計。ptはパーセントポイント。

この表で減少がはっきりしていたのは「更新・修正」だけです。資料・書類作成と一次対応は6〜7ポイント下がっていますが、100件ずつの比較では、偶然でも出る幅を超えて減ったとは言えません。データ入力はほぼ変わらず、「転記」という語は両年とも求人票に出てきませんでした。

AI関連の語を含む求人は、100件中1件から3件へ、自動化関連の語は2件から8件へ増えました。件数が少ないため、増加の方向が見えた程度に受け取るのが適切です。

エンジニアの求人でも、実装・テストの記載は残り、設計への大きな移行は見えない

エンジニアの求人では、実装・テスト・保守など、手順に沿って進める業務を示す語を含む求人が、幅広く拾う基準で55%から57%、より限定した基準で16%から17%でした。企画や設計など、判断が必要な業務の記載は89%から93%で、より限定した基準では76%のまま変わっていません。エンジニアの求人は、2021年の時点で設計に関する記載がすでに多い職種でした。個別の作業語の結果は、次のとおりです。

作業 2021年 2026年 差
実装・コーディング・開発 81% 74% −7pt
テスト・検証 27% 27% 0pt
運用・保守 57% 60% +3pt
設計 61% 60% −1pt
要件定義 21% 25% +4pt
レビュー 3% 3% 0pt
顧客折衝・提案・ヒアリング 23% 29% +6pt

※各100件、弊社集計。

実装・コーディングは81%から74%、要件定義は21%から25%、顧客折衝・提案・ヒアリングは23%から29%でした。ただし、いずれも差は小さく、仕事の中心が実装から設計や要件定義へ大きく移ったとは言えません。レビューの記載は2021年も2026年も3%でした。

変化が見えたのはAI関連語・経験の要求・月給の下限

AI関連語、経験年数の要求、月給下限について、事務とエンジニアの2021年と2026年の求人票を比較した図

仕事内容の大きな変化は確認できなかった一方、AI関連語や経験年数の要求、月給下限では増加・上昇の方向が見られました。原因をAIと特定するものではありません。

求人票で変化の方向が見えたのは、次の3点です。

AI関連語
エンジニアの求人でAI関連の語を含む割合は、仕事内容欄に限ると11%から19%、応募条件を含む求人全体で見ると16%から22%でした。事務は1%から3%です。増加の方向ですが、100件ずつでは差の幅が大きく、確定的な増加とは言えません。なお、AI関連語が出てくる求人には、AIを使う業務を求めるものと、企業がAI関連事業を行っていることを示すものの両方が含まれます。

経験年数の要求
経験年数の要求がある求人は、事務で15%から24%、エンジニアで26%から37%に増えました。エンジニアで経験3年以上を求める求人は、10%から23%です。一方、未経験可の求人の割合は、事務で91%と90%、エンジニアで65%と65%と、ほぼ変わっていません。

月給の下限
月給の下限の中央値は、事務が22万円から25万円、エンジニアが23万円から26万円に上がりました。月給30万円以上を下限とする求人は、事務で3.8%から16.2%(3件/78件から11件/68件)、エンジニアで11.5%から30.9%(9件/78件から17件/55件)です。ここで示した月給は求人票の名目金額で、記載のない求人は含まれていません。

今回の比較で、比較的はっきり差が出たのは、エンジニアの月給の下限と、仕事内容欄の文章が中央値で約690字から約420字へ短くなったことです。事務の月給の下限も上がっていますが、差の確かさはやや下がります。AI関連語、経験年数、個別の作業語の増減は「傾向」として扱うのが妥当です。

求人票からは、仕事の消滅よりAIが加わり始めた様子が読み取れる

従来の仕事内容がAIに置き換わるのではなく、仕事内容が残る中でAI関連の記載が加わる方向を示した調査結果の概念図

今回の求人票比較では、従来業務の記載が大きく減る一方でAIだけが置き換わる状況は確認できず、従来の仕事内容にAI関連の要素が加わる方向が見られました。ここまでの結果を並べると、次の3点が観測されたことになります。

  • 入力・資料作成・実装・テストなどの業務の記載は、事務でもエンジニアでも大きく減っていない
  • 企画・設計・要件定義など、判断が必要な業務への急な移行は見えない
  • AI関連語、自動化関連語、経験年数の要求は増加の方向にある

つまり、確認できたのは、従来の仕事内容の記載が残る中で、AI関連の語が増える方向に動いていることです。

ただし、これは求人票の記載から読み取れる範囲の解釈です。AI関連語や経験年数の要求が増えた原因、月給の下限が上がった原因を、AIの影響と特定することはできません。物価や人手不足など、他の要因も同時に働いているためです。

求人票の比較から言えないこと

この結果を見るうえで、確認した範囲、確認していないこと、読み違えないための注意の3つを押さえます。

今回確認した範囲

  • マイナビ転職に掲載された求人票の、仕事内容などに書かれた語の有無
  • 事務・バックオフィスとエンジニアの2職種、各年100件
  • 2021年(1〜10月)と2026年(4〜9月)に収集された求人票の記載内容

今回確認していないこと

  • 求人件数の増減。AIによって求人が増えた・減ったかは分かりません
  • 雇用や失業の動き
  • 事務・エンジニア以外の職種
  • 実際の業務内容や、業務の難しさ

読み違えないために必要な点

  • 求人票は企業が書いた募集文であり、実際の仕事の中身そのものではありません
  • 1つの求人媒体の、2職種・各100件の比較であり、日本のすべての求人を代表するものではありません
  • 2021年と2026年では求人ページの形式が違います。2026年のエンジニア求人は仕事内容の文章が短く、年収の表示欄も増えています。数ポイントの差は、大きな変化として読まない方が安全です
  • 2026年の求人票そのものが、生成AIを使って書かれている可能性は排除できません

こうした範囲と限界のもとで、今回の独自調査では、AIの普及後も、入力・資料作成・実装・テストなど、これまで求人票に書かれてきた仕事内容を含む求人が引き続き見られました。少なくとも今回調べた範囲では、AIによって仕事が一斉に奪われている状況は確認できませんでした。

AIが品質を底上げすると、企業の違いは顧客から見えにくくなる可能性がある

ここからは、今回の求人調査とは別に、AIが企業のサービス品質に与える影響を既存研究から考えます。調査の範囲では仕事が一斉に奪われている状況は確認できませんでしたが、仕事が残ったとしても、企業にとっては別の問題が生まれる可能性があります。

研究が示す、個人の底上げと成果物の類似

AIを使うことで、これまでより安定した成果を出せる人や企業が増えたとき、何が起きるのか。海外の研究には、次のような報告があります。

  • MITのNoyとZhangによる実験では、大学卒の専門職453人に職種に即した文章作成の課題を与え、半数にChatGPTを使わせました。作業時間は平均40%短くなり、成果物の品質評価は18%上がり、参加者間の差は縮まりました
  • Brynjolfssonらが、カスタマーサポート担当5,179人の導入データを分析した研究では、生成AIの支援により1時間あたりの解決件数が平均14%増えました。経験の浅い・スキルの低い担当者では34%、経験豊富な担当者では影響は最小限でした
  • DoshiとHauserによる短編小説の実験では、AIからアイデアを得た書き手の作品は、個人としては「より創造的」「より上手」と評価されました。一方で、AIを使った作品同士は、人間だけが書いた作品同士より似ていました

どれも海外の実験や特定企業の分析であり、日本企業のサービス品質にそのまま当てはめることはできません。ただ、「AIは成果物の水準を底上げし、とくに水準の低かった側を引き上げる」「同じようなAIを使うと成果物が似てくる」という方向の結果が出ている点は、考察の手がかりになります。

サービスの品質だけでは、選ばれる理由になりにくくなる

これまで企業ごとの差になっていた、次のような能力を考えます。

  • それなりに整った文章を書ける
  • 見栄えのよい資料を作れる
  • 安定した品質のデザインやシステムを作れる
  • データを分析し、企画案を出せる

もしAIによる品質の底上げが進めば、こうした能力は多くの企業で実現しやすくなる可能性があります。その結果、企業間の品質差が一部で縮まり、サービスの品質だけでは企業ごとの違いを示しにくくなる可能性があります。

顧客にとってサービスの質が上がること自体はメリットです。一方で、複数の企業が似た水準の成果を出しやすくなれば、顧客にとって「A社とB社は何が違うのか」「なぜこの会社を選ぶのか」を判断しにくくなる可能性があります。企業にとっては、仕事そのものがAIに置き換わる可能性だけでなく、自社と競合の違いが顧客から見えにくくなる可能性も考えておく必要があります。

企業がやるべきことは、品質向上に加えて「選ばれる理由」を伝えること

この考察が当てはまるなら、AIの導入やサービス品質の向上だけでなく、「自社と他社の違いを、顧客が理解できる状態をつくること」も重要になります。

では、具体的に何を、どこで、どの順番で出せばよいのか。顧客が企業を比べるときに見る10の情報、それを出す場所、始める順番に分けて整理します。

企業が発信すべき10の情報

企業がサービスを選ぶときは、1社だけを見るのではなく、複数社を比較しながら判断するケースが多くあります。トゥモローマーケティングが2026年に全国のビジネスパーソン180人を対象に行った調査では、67.0%が2〜3社を比較しており、選定時に重視する項目として「価格」71%、「製品・サービスの特徴」69%が上位に挙がりました。事例やサポート内容も、比較時に重視される項目として挙げられています。

また、企業向けソフトウェアの比較・レビューサービスG2が2024年に1,900人超の購買意思決定者を対象に行った調査では、31%がレビューサイトを最もよく参照する情報源として挙げています。企業自身の説明だけでなく、利用者による第三者評価も比較材料として使われていることが分かります。

こうした調査から、企業を選ぶ際には価格やサービス内容だけでなく、事例や第三者評価など複数の情報が判断材料になっていることが分かります。そこで本記事では、顧客が企業を比較するときに確認したい情報を、企業がWeb上で発信できる形に10項目で整理します。

顧客が見ているのは、「どの会社も同じように言うこと」ではなく、「比べたときに判断できること」です。まず、顧客が何を知りたいのかとあわせて、10項目を次の表に一覧にします。

発信する情報 顧客が知りたいこと
誰に向いているか 自社に合うか
他社との違い 何が違うか
実績 本当にできるか
顧客事例 自社でも再現できそうか
独自データ・一次情報 根拠はあるか
方法論・考え方 なぜそのやり方なのか
人 誰に任せるのか
第三者評価 自分で言っているだけではないか
価格・条件 いくらで、どこまでか
向いていないケース 自社には合わない条件があるか

左の列が企業側の発信内容、右の列がそのときに顧客が抱いている疑問です。各項目の詳細は、この順に次のとおり説明します。文中の例はいずれも説明のためのもので、実在のデータではありません。

1. 誰に向いているかを、規模・課題・段階まで具体的に示す

「こんな方におすすめです」だけでは、顧客は自社に合うのかを判断できません。次の4点まで出すと、対象が具体的に伝わります。

  • どんな企業規模に向いているか
  • どんな課題を抱える企業に向いているか
  • どの段階(立ち上げ期、拡大期、見直し期など)の企業に向いているか
  • 逆に、向いていないのはどんなケースか

弱い例は「中小企業から大企業まで幅広く対応します」です。具体的な例は、「店舗数30以上で、口コミ管理を本部で一元化したい企業向け」のような書き方です。対象を絞ると、対象外の顧客には響かなくなりますが、対象の顧客には「自社のためのサービスだ」と伝わります。

2. 他社との違いを、比較できる具体情報で示す

「高品質」「丁寧」「専門性」「ワンストップ」は、どの会社でも言えます。これらだけでは、違いとして伝わりません。違いは、顧客が他社と並べて比べられる情報として出す必要があります。

  • 対応範囲
  • 進め方・方法
  • 価格の設計
  • スピード
  • サポート体制
  • 成果の測り方
  • 保証
  • 契約条件
  • 独自の機能
  • 保有しているデータ
  • 運用の方法

弱い例は「高品質なサービスを提供します」です。具体的な例は「月4回の定例分析と、改善提案まで含めて対応する」「成果は問い合わせ数ではなく商談化率で測る」といった書き方です。後者のように、対応の中身まで書くと、他社の説明と並べたときに違いが見えます。

3. 実績は、顧客が「自社でも再現できそうか」を判断できる形で示す

「実績多数」「多くの企業にご利用いただいています」では、判断材料になりません。顧客が知りたいのは、自社と似た条件で成果が出ているかどうかです。次のような情報を出します。

  • 件数
  • 期間
  • 成果
  • 対象企業の属性(業種、規模など)
  • 導入前と導入後の比較
  • 改善率
  • 継続率

たとえば「従業員50〜300名の製造業を、2021年から◯社支援。導入前後6か月で問い合わせ数が平均◯%増え、1年後の継続率は◯%」のように、対象と条件が分かる形にします。数字の定義と集計した時点も添えると、信頼されやすくなります。

4. 顧客事例は、課題から結果までの理由と、うまくいかなかった点まで書く

事例を、ロゴの一覧や「ご導入いただきました」の一文で終わらせると、顧客は何も判断できません。次の流れで書くと、再現できるかどうかが読み取れます。

  1. 顧客が抱えていた課題
  2. なぜその施策を選んだのか
  3. 実際に何をしたのか
  4. 何が変わったのか
  5. どこに限界があったのか

成功談だけでなく、「何をやらなかったか」「どんな条件では成果が出にくいか」も書くと、かえって信頼につながります。うまくいく条件とそうでない条件の両方を知っている会社は、自社の案件にも現実的な見立てを出せると受け取られるためです。

5. 独自データ・一次情報は、その会社にしか出せない強い情報になる

AI時代に、特に重要になるのがこの項目です。一般論は、AIを使えば誰でも一定の品質で作れます。一方、次のような情報は、その会社にしか出せません。

  • 自社の顧客に見られる傾向
  • 運用で積み重ねた実績
  • 独自の調査
  • 累計のデータ
  • 現場で得た数字
  • うまくいかなかったケースのデータ
  • 改善の前後の比較

こうした一次情報は、顧客が企業を比べるときにも、検索やAI検索で情報が参照されるときにも、差になりやすいと考えられます。他のどこにもない一次情報は、その会社について説明できる情報を増やします。出すときは、対象、母数、集計した時点、数字の定義を添えます。条件の分からない数字は、信頼を得にくく、比較にも使えません。

6. 方法論・考え方は、「なぜその方法を取るのか」まで示す

「何をするか」だけでなく、「なぜそうするのか」を出します。サービスの機能や進め方が似て見えても、考え方が違うと分かれば、顧客は「この会社は発想が違う」と認識します。次のような内容が材料になります。

  • 判断の基準
  • 優先順位の付け方
  • あえてやらない施策
  • 失敗から変えた方法
  • 独自のフレームワーク
  • サービスを設計するときの考え方

たとえば「最初の3か月は施策を増やさず、計測の設計に使う。理由は、効果の測り方が曖昧なまま施策を重ねると、何が効いたのか分からなくなるから」といった書き方です。手順だけでなく理由まで書くことで、他社と並んだときの違いが説明になります。

7. 人は、「なぜこの人に任せる意味があるのか」まで伝える

サービスの機能が近く見える場合、「誰がやるのか」も比較の材料になります。担当者の経歴や専門性を出すときは、プロフィールの列挙にとどめません。次の内容まで書きます。

  • 経歴と、経験年数
  • 得意な領域
  • 実務での経験
  • 失敗した経験と、そこから学んだこと
  • 仕事をするうえでの価値観

弱い例は「◯◯大学卒業、△△社を経て入社」だけの紹介です。具体的な例は、「製造業の営業部門で10年、導入支援を担当。最初の2年は施策を急いで失敗し、今は準備に時間をかける進め方に変えた」のような書き方です。その人に任せる理由が、顧客に伝わります。

8. 第三者評価で、自己評価ではない裏付けをつくる

企業自身が「優れている」と書けば、それは自己評価です。第三者による評価は、企業自身の説明とは別の判断材料になります。次のようなものが当てはまります。

  • 口コミ
  • 顧客の声
  • レビュー
  • 受賞
  • 認証
  • メディア掲載
  • 共同研究
  • 第三者による調査
  • 比較サイトでの評価

特にAI検索では、回答をつくるときに自社サイト以外の情報も参照されることがあります。そのため、第三者の情報が自社の主張と合っているかどうかが、これまで以上に重要になると考えられます。自社サイトでは「◯◯が強み」と書いてあるのに、外部の口コミや紹介記事では別のことが書かれている、という状態は避けたいところです。

9. 価格と条件を、問い合わせなしで比較できる程度に示す

顧客が企業を比べるとき、価格や条件が分からないと、比較しにくくなります。問い合わせないと分からない状態は、比較検討のハードルになります。示したい項目は次のとおりです。

  • 価格帯
  • 最低契約期間
  • 対応範囲
  • 追加料金が発生する条件
  • 成果保証の有無
  • 解約の条件
  • 導入に必要な条件

すべてを公開できない場合も、「目安の価格帯」「金額が変わる要素」を示すだけで、比較しやすさは大きく変わります。「問い合わせないと分からない」を減らすことが、顧客の比較しやすさにつながります。

10. 向いていないケースを、先に示す

企業は「誰にでもおすすめ」と言いがちです。しかし、誰にでも向くサービスは、誰にとっても輪郭がはっきりしません。次のことを先に示すと、サービスの輪郭が見えてきます。

  • 向いていない企業
  • 成果が出にくい条件
  • 対応できないこと
  • 他社の方が適しているケース

たとえば「毎月の定例に参加できない体制の会社では、改善のスピードが出にくい」「自社の運用に関わる担当者を置けない場合は、他の形態の方が合う」のような書き方です。向かないケースを伝えることは、対象の顧客に対して「合うかどうかを正直に伝える会社だ」という信頼にもなります。

発信する場所ごとに、出す情報を分ける

顧客は、公式サイト、サービスページ、オウンドメディア、事例、口コミ、第三者のメディア、検索結果、AI検索を行き来して企業を比べます。場所ごとに役割を決めて、同じ違いを同じ根拠とともに出すことが必要です。場所ごとの役割は、次の表のとおりです。

場所 出す情報 役割
サービスページ 対象となる顧客、他社との違い、料金・条件、提供範囲、進め方 顧客が最初に比べる判断材料
事例ページ 課題、施策を選んだ理由、実施内容、成果、再現できる条件、うまくいかなかった点 「自社でも再現できるか」の判断
オウンドメディア(記事・調査) 独自データ、専門家の見解、方法論、調査 一次情報と考え方の置き場所
会社・人物ページ 担当者の経歴、専門性、経験、考え方 「誰がやるのか」の説明
口コミ・第三者情報 顧客からの評価、受賞、認証、メディア掲載、外部評価 自己評価ではない裏付け
検索・AI検索 上記の情報が、矛盾なく参照される状態 外から見たときの、自社の説明

この表の大事な点は、どの場所でも同じ違いを、場所に合った形で出すことです。どこかの場所で別の主張をしていると、違いは伝わりません。サービスページでは一般的な強みを並べ、事例には具体的な成果がなく、外部の評価とも食い違っていれば、顧客はどれを信じればよいのか分からなくなります。AI検索が企業を要約したり比較したりする場面でも、元になる情報を具体的かつ一貫して整えておくことが重要です。

発信とは、記事を増やすことではない

ここでいう発信は、記事や投稿の本数を増やすことではありません。AIを使えば、他社でも発信できる一般的な内容は短時間で作りやすくなります。一般論の記事を大量に増やしても、他社と同じ内容であれば、顧客の判断材料にはなりません。

優先すべきなのは、その会社だから出せる情報です。具体的な実績、事例、独自データ、現場の経験、専門家としての見解、企業独自の方法、担当する人物、第三者からの評価。これらを、顧客が違いを判断できる形で出すことが、発信の中身になります。

明日から始める発信の優先順位

10の情報をすべて一度に整える必要はありません。まずは、自社と他社の違いを明確にし、その違いを裏付ける情報から順に整えていきます。違いが決まっていなければ、何を裏付ければよいかも決まらないためです。次の順で進めます。

  1. 自社と他社の違いを、3つ言語化する。
    社名を隠して読んでも自社と分かる文にします。「高品質」「丁寧」のような、どの会社でも言える言葉は使いません。営業担当や既存の顧客に、選ばれた理由と選ばれなかった理由を聞くと、自社では気づかない違いが見つかります。
  2. その違いを裏付ける実績・事例・データを集める。
    3つの違いそれぞれに、数字、事例、データのいずれかを最低1つ用意します。裏付けのない違いは、主張にとどまります。
  3. サービスページへ反映する。
    対象となる顧客、他社との違い、料金・条件、提供範囲、向いていないケースを書きます。顧客が最初に比べる場所を、最初に直します。
  4. 事例・独自調査・専門家の発信で、根拠を増やす。
    既存の事例を「課題→理由→施策→結果→限界」の形に書き直します。自社が持つデータから、調査として1本まとめます。担当者の見解や考え方を記事にします。
  5. 口コミ・第三者情報との整合を確認する。
    口コミサイト、比較サイト、外部メディアの記載が、自社の主張と食い違っていないかを確認します。裏付けとなる顧客の声が足りなければ、集めます。
  6. 検索結果とAI検索で、自社がどう説明されているかを確認する。
    自社名とサービス名、競合との比較で検索します。AI検索にも質問し、自社の説明が、自社の主張と合っているかを見ます。ずれている場合は、その説明の元になっている情報(サービスページ、事例、第三者の情報)を直します。

最初の3つを終えるだけでも、顧客から見た自社の輪郭は大きく変わります。残りは、結果を確認しながら繰り返します。

自社の違いが伝わっているかを確認する5つの視点

現状を確認するときは、次の5点が目安になります。

  1. 社名を隠して自社のサービス説明を読んだとき、競合と区別できるか
  2. 受注や失注の理由を顧客に聞き、選ばれた理由・選ばれなかった理由を言葉にできているか
  3. AIでも同じ品質で作れる情報と、自社にしか出せない情報(実績・事例・データ・経験・人)を分けて棚卸しできているか
  4. 顧客が比較検討の段階で知りたいことに、Web上の情報で答えているか
  5. 問い合わせや商談で「違いが伝わっているか」を確認し、伝わっていない点を各所の情報に反映しているか

まとめ:AI時代に企業がやるべきことは「違いを伝えること」

今回の求人票の比較で見えたのは、仕事が消えるというより、従来の仕事にAIに関する要素が加わり始めている姿です。AIの普及後も、入力・資料作成・実装・テストなどの業務を含む求人は引き続き見られ、少なくとも今回調べた範囲では、AIによって仕事が一斉に奪われている状況は確認できませんでした。一方で、AI関連の語や経験年数の要求は増える方向にあります。

ここから先は、既存研究を踏まえた考察です。AIの活用によって、多くの企業が安定して成果を出せるようになれば、企業間の品質差が一部で縮まる可能性があります。そのとき企業にとって重要になるのは、「サービスを提供できるか」だけでなく、「なぜ自社を選ぶのかが顧客に伝わっているか」です。AI時代に考えるべきなのは、仕事そのものをAIに奪われる可能性だけではありません。仕事が残ったとしても、自社と競合の違いが見えにくくなる可能性があります。

そのために企業がやるべきことは、次の3点です。

  1. 自社と競合の違いを言語化する。 誰に向いているか、何が違うか、何をやらないかを、比較できる言葉にする
  2. その違いを裏付ける一次情報を持つ。 実績、事例、独自データ、経験、人、方法論を、条件とともに示せるようにする
  3. 顧客が比較する場所すべてで、一貫して発信する。 サービスページ、事例、オウンドメディア、人物ページ、口コミ、第三者情報、検索・AI検索で、同じ違いが同じ根拠とともに伝わるようにする

AI時代に差になるのは、一般論を多く発信することではありません。自社にしかない実績・データ・経験・人・方法論を、顧客が比較できる形で出すことです。最初の一歩は、前の節の最初の項目、自社と他社の違いを3つ言語化することです。

自社と競合の違いを、WebやAI検索上でどう伝えるべきか整理したい方は、関連資料もあわせてご覧ください。

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参考文献・データ元

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