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売り手市場は本当か?3.8万社調査で考える「求職者に選ばれるための情報発信」とは

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
建設系職種8.25倍と一般事務0.29倍の求人倍率差を、現場とオフィスの仕事風景とともに示したアイキャッチ

[独自調査] Report ID: SBR-2026-033

公開日:2026年10月5日 著者:菊地 将

要旨

売り手市場は求人倍率だけで語れるのか。職種別の倍率は8倍超から0.3倍前後まで分かれます。37,924社の企業サイト調査と人手不足に関する指標をもとに、採用情報の違いを確認。求職者に選ばれるために企業が発信したい5つの情報を整理します。

「今は売り手市場だから、人が採れなくても仕方がない」。採用の現場では、こうした説明をよく耳にします。しかし、この言葉は採用市場の実態をどこまで表しているのでしょうか。

厚生労働省の統計では、有効求人倍率(求職者1人あたりの求人件数)は2024年平均の1.25倍から2026年8月の1.18倍へ低下しています。職種別に見ると、建設躯体工事の従事者は8倍を超える一方、一般事務は0.29倍です。職種によって、求人と求職者のバランスは大きく異なります。日本全体を「売り手市場」と呼ぶのは粗い表現です。

さらに、37,924社の企業サイトを調べたところ、正社員不足の割合や必要人数の確保状況だけでは、企業の採用情報発信の違いを説明できませんでした。なお、この調査で確認したのは採用情報の掲載状況であり、採用成果への効果ではありません。

求人倍率が示すのは、人材の「量」の需給です。企業が採りたいのは単なる求職者ではなく、自社で活躍できる特定の人材ではないでしょうか。この記事では、調査結果と外部統計をもとに、「売り手市場だから採れない」で止まらず、自社が欲しい人材に選ばれる視点で採用を考える手順を整理します。読み終えると、自社が最初に確認すべきことと、求職者に向けて発信したい5つの情報が分かります。

求人倍率は低下傾向で、職種によって8倍超から0.3倍前後まで分かれる

全体の倍率は直近で低下している

求人倍率が1倍を超えると、求人が求職者を上回ります。まず、公的統計と民間統計の数値を表で確認します。

指標 数値 時点 出典
有効求人倍率(季節調整値) 1.31倍 → 1.25倍 → 1.22倍 → 1.18倍 2023年平均 → 2024年平均 → 2025年平均 → 2026年8月 厚生労働省
正社員の有効求人倍率(季節調整値) 1.00倍 2026年8月 厚生労働省
大卒求人倍率 1.75倍 → 1.66倍 → 1.62倍 2025年卒 → 2026年卒 → 2027年卒 リクルートワークス研究所

水準は1倍を超えていますが、直近は低下が続いています。大卒求人倍率も、2025年卒の1.75倍から2年連続で下がりました。

一方、民間の転職サービスdodaの転職求人倍率は、2026年6月に2.55倍で、前年同月より0.22ポイント高くなっています。dodaの数値は、同社の会員である転職希望者に対する、中途採用求人の割合です。算出方法が違うため水準は比べられませんが、公的統計と民間統計で動きの向きは一致していません。指標によって、採用市場の動きの見え方は異なります。

職種別・企業規模別に見ると、需給の差は大きい

次の表は、職種別の有効求人倍率です。求人が多い職種と、求職者が多い職種が並んでいます。

職種 有効求人倍率
建設躯体工事従事者 8.25倍
保安職業従事者 6.99倍
土木作業従事者 6.71倍
建築・土木・測量技術者 5.71倍
介護サービス職業従事者 3.89倍
営業職業従事者 2.05倍
保健師・助産師・看護師 2.00倍
情報処理・通信技術者 1.33倍
管理的職業従事者 0.81倍
事務従事者 0.37倍
 うち一般事務従事者 0.29倍

※2026年8月、全国、常用(パートを含む)、原数値。職業計は1.06倍で、季節調整値の全体1.18倍とは集計方法が異なります。出典:厚生労働省。

建設・土木・保安・介護では、求人が求職者を大きく上回っています。一方、事務は0.37倍、一般事務は0.29倍で、求職者のほうが求人より多い状態です。管理的職業も0.81倍と1倍を下回ります。

企業規模でも差があります。リクルートワークス研究所の中途採用実態調査(2025年度下半期)で、必要な人数を「確保できた」企業の割合から「確保できなかった」企業の割合を引いた値は、5,000人以上の企業だけがプラス13.0ポイントでした。5〜299人はマイナス4.5ポイント、300〜999人はマイナス6.8ポイント、1,000〜4,999人はマイナス4.9ポイントです。

「日本全体が売り手市場」という表現では、職種や企業規模による違いが見えなくなります。では、こうした需給の指標だけで、企業の採用情報の違いは説明できるのでしょうか。次の章で、独自調査を使って確かめます。

37,924社でも、正社員不足の割合や必要人数の確保状況だけでは採用情報の違いを説明できない

正社員不足の割合が高かったり、必要人数を確保しにくかったりする業界ほど、企業は採用情報を充実させているのでしょうか。2026年8〜9月に企業サイトを調べた37,924社の採用情報を、外部の人手不足に関する指標と並べて確認しました。結論を先に言うと、今回の調査では、そうした一貫した関係は確認できませんでした。

採用の入口はあっても、企業を知る手がかりが確認できない企業が多い

調査した37,924社のうち、採用関連のページを1つでも確認できたのは67.3%でした。ページの種類ごとの割合は次のとおりです。

確認できたページ 企業の割合(37,924社中)
採用関連のページ(いずれか1つ以上) 67.3%
採用ページ・採用サイト 58.5%
募集要項 55.0%
社員紹介 22.3%
福利厚生 9.4%
職種別の採用ページ 9.3%
新卒採用 3.6%
中途採用 0.6%

採用ページ・募集要項・職種別の採用ページのいずれかがある企業を「採用の入口がある企業」とします。該当したのは23,229社(61.3%)でした。このうち、社員紹介・福利厚生・新卒採用・中途採用のいずれのページも確認できなかったのは14,781社で、入口がある企業の63.6%です。1つ以上確認できたのは8,448社(36.4%)でした。

求人の入口は用意していても、応募者が企業を知り、比べるための手がかりまでは見当たらない企業が多いことになります。なお、給与・選考フロー・よくある質問・キャリアパスなどの記載内容は、今回の集計には含めていません。

37,924社調査で採用の入口がある企業は61.3%、そのうち63.6%で社員紹介など4種類の手がかりを確認できなかったことを示す図

図の要点は次のとおりです。採用の入口が確認できた企業は37,924社のうち61.3%で、その23,229社の63.6%では、社員紹介・福利厚生・新卒採用・中途採用のページを確認できませんでした。

正社員不足の割合が近い業界でも、採用情報の充実度は異なる

業界ごとに、採用情報の確認状況と外部の人手不足指標を並べました。表中の「pt」はポイントの略で、必要人数を「確保できた」企業の割合から「確保できなかった」企業の割合を引いた値です。

業界 調査社数 採用関連ページあり 採用ページ 社員紹介 福利厚生 確認できた項目数(平均・7項目中) 正社員不足の割合 必要人数の確保(できた−できなかった)
IT・情報通信 2,787 74.0% 67.0% 28.1% 12.9% 1.92 66.7%(情報サービス) +0.5pt
人材 724 85.5% 68.6% 41.2% 16.9% 2.50 56.6%(人材派遣・紹介) ―
医療・福祉 1,447 76.6% 69.6% 24.9% 15.1% 1.90 ― −23.9pt
建設 4,545 68.1% 59.5% 21.5% 7.1% 1.52 65.7% −14.5pt
運輸・物流 487 69.6% 65.5% 14.6% 7.2% 1.56 65.9%(運輸・倉庫) −8.5pt
製造 7,201 62.0% 55.3% 16.6% 6.7% 1.40 ― +1.1pt(機械以外)
宿泊・飲食 214 80.8% 74.8% 18.2% 9.3% 1.94 ― −5.7pt
不動産 1,532 64.4% 46.2% 31.9% 6.4% 1.37 ― ―
サービス 2,858 61.9% 49.4% 26.3% 10.0% 1.44 ― −14.3pt

※「正社員不足の割合」は帝国データバンクの2026年4月調査(有効回答10,538社、全体は50.6%)。「必要人数の確保」はリクルートワークス研究所の中途採用実態調査(2025年度下半期)で、全体はマイナス4.5ポイントです。外部調査の業種区分は、当社の業界区分と完全には一致しません。業界別の社数は9業界で21,795社です。

正社員が不足している企業の割合は、情報サービス66.7%、運輸・倉庫65.9%、建設65.7%とほぼ並びます。ところが採用情報には差がありました。

  • 社員紹介を確認できた企業は、IT・情報通信が28.1%、建設が21.5%、運輸・物流が14.6%です。運輸・物流は、9業界のなかで最も低くなりました。
  • 確認できた項目数の平均は、IT・情報通信が1.92、建設が1.52、運輸・物流が1.56です。
  • 採用の入口がある企業のうち、企業を知る手がかり(社員紹介・福利厚生・新卒・中途)が確認できなかった割合は、運輸・物流が74.2%、建設が67.9%、IT・情報通信が54.9%です。

また、必要人数の確保状況が最も厳しかった医療・福祉では、採用情報は比較的そろっていました。確保状況を比較できる7業界で見ても、必要人数の確保状況と、確認できた採用情報の項目数には一貫した関係は確認できませんでした。

参考:採用情報には業界による違いもある

採用情報には、業界による違いもありました。参考として、業界を当社の判断で「事務・専門・営業職が中心のIT・情報通信と人材」と「現場・技能職が中心の建設・運輸・物流・製造・宿泊・飲食」に分けて比べました。社員紹介は前者が30.8%(3,511社)、後者が18.3%(12,447社)で、確認できた項目数の平均は2.04と1.46です。

ただし、前者の中心はIT・情報通信で、人材は事業として求人を扱うため、自社の採用情報として単純に読めない可能性があります。宿泊・飲食(社員紹介18.2%、採用関連ページあり80.8%、214社)のように、分類と逆向きの例外もあります。

業界差が生じた理由は、今回の調査では検証していません。また、従業員数を確認できた企業は調査した企業の一部(2,198社)にとどまるため、企業規模をそろえた比較はしていません。

調査結果を読むときの注意点

ここまでの割合を読むときは、次の2点に注意してください。

  • 調査対象は日本企業の無作為な標本ではなく、小規模な企業や、建設・不動産などの業種が多く含まれます。割合は調査した37,924社での値です。
  • 「確認できなかった」は、ページがないことを意味しません。画像や外部サイトで掲載している場合や、今回の方法で見つけられなかった場合も含みます。

ここから読み取れること

正社員不足の割合が同程度でも、企業が公開する採用情報の厚さは同じではありませんでした。求人倍率や人手不足率は、人材の量的な需給や不足状況を把握する指標です。企業が求める人物像や、求職者が企業を選ぶ際に重視する情報は、これらの指標には含まれません。採用市場を見るには、量の需給に加えて、企業と求職者が互いを判断するための情報も見る必要があります。

求人倍率が示すのは人材の「量」の需給で、自社に合う人を採れるかは分からない

この章では、求人倍率が何を測り、何を測らないのかを分けて確認します。求人倍率は、求人の件数を求職者の人数で割った値です。厚生労働省の統計では、2026年8月の職業計で、有効求人2,028,673件に対して有効求職者は1,914,602人でした(常用・パート含む)。事務従事者は求人が約18.0万件、求職者が約49.2万人で0.37倍、建設躯体工事の従事者では求人が約1.9万件、求職者が約2,400人で8.25倍です。

人手不足の割合や、必要な人数を確保できたかどうかの調査も、同じく人数の過不足を見たものです。これらは、採用市場の量の需給を知るには役立ちます。一方で、次のことは示しません。

  • 求職者のなかに、自社で活躍できる人がどれくらいいるか。
  • 自社が欲しい人にとって、自社は転職先の候補に入っているか。
  • 応募や内定の後に、その人が自社を選んでくれるか。
求人倍率が求人件数と求職者数から量の需給を示す一方、自社で活躍できるかや自社を選ぶかまでは示さないことを整理した概念図

図が示すとおり、求人倍率は求人と求職者の量的なバランスを見る指標です。企業と候補者の適合や、最終的に自社が選ばれるかまでは示しません。

たとえば、同じ職種の求人倍率が8倍でも、自社が採りたいのが経験者なのか未経験者なのか、どんな考え方の人なのかによって、実際に競う相手も、選ばれるために必要な情報も変わります。求人倍率とあわせて、自社が欲しい人材は誰か、その人材がどのように会社を選ぶのかを考える必要があります。

企業が重視するのは経験や資格だけではない

では、企業側は採用の場面で何を見ているのでしょうか。外部調査から確認できたことと、言えないことを分けて見ていきます。

外部調査で確認できたこと

  • 企業は、合否の判断で経験年数や資格だけを見ているわけではありません。マイナビの中途採用状況調査2025年版(2024年実績、3人以上の企業の人事担当者1,500人)では、合否判断で重視する要素の上位に、問題解決力76.9%、主体性76.7%、傾聴力73.2%が挙がりました。
  • 求人上の経験者の比率と、実際の採用の姿は一致しません。マイナビ転職の求人に占める経験者求人の割合は46.7%(2026年3月、過去最高)ですが、リクルートワークス研究所の調査では、中途採用実績に占める未経験者の比率は24.6%(2023年度)から31.9%(2025年度)へ上がっています。経験者求人の割合が過去最高になる一方で、実際には未経験者の採用も増えており、経験の条件だけでは企業の採用像を説明できません。

経験・資格以外を見ることは、新しい現象ではない

人柄や主体性を重視すること自体は、昔からありました。経団連の新卒採用アンケート(2018年度、会員企業597社)でも、選考で重視した点の1位はコミュニケーション能力の82.4%で、16年連続でした。2位は主体性の64.3%です。「経験・資格以外の能力を見る」流れが、近年になって強まったとは、今回の材料からは言えません。

求職者は、仕事内容・一緒に働く人・評価・キャリアまで知りたい

企業側が何を重視するかだけでなく、求職者側が企業選びで何を知りたいのかも確認する必要があります。

リクルートが転職活動中の1,040人に行った調査では、「企業に提示してほしい情報」の1位は「募集している職場の具体的な仕事内容やミッション」21.5%でした。続いて、「上司やメンバーの経歴や能力」13.4%、「募集ポジションの評価指標」12.1%、「職場ならではの慣習やルール」8.3%、「入社後のキャリアパス」8.2%などが挙がっています。

厚生労働省の「求職者等への職場情報提供に当たっての手引(第3版、2026年3月改定)」でも、求職者が企業選びで求める情報として、事業・業務内容、習得できるスキル、入社後のキャリアパス、職場の雰囲気・社風、研修・オンボーディング、過去に同じ部署へ入社した人の経歴などを挙げています。

これらの調査は、「この情報を出せば採用成果が上がる」という効果を示したものではありません。一方で、求職者が求人条件だけでなく、実際の仕事、一緒に働く人、評価、職場環境、入社後のキャリアまで判断材料として求めていることは確認できます。

採用サイトの役割:求人の掲載から、活躍できるかを判断する場へ

こうした求職者側の情報ニーズを踏まえると、採用サイトは求人情報を載せるだけでなく、候補者が自分に合う会社かを判断するための情報を届ける場として考えられます。採用サイトに載せる情報の全体像は、採用サイトに載せるべき情報とSEO・AIOの基本で体系的に整理しています。

採用サイトの位置づけは、次のように変わると考えます。

  • 従来:求人情報を掲載する場所
  • 次の段階:会社の魅力を伝える場所
  • ここで提案する考え方:候補者が、この会社で自分が活躍できるかを判断する場所

つまり、条件を載せて応募を集めるだけでも、会社の魅力を伝えるだけでもなく、自社で活躍する可能性がある人が、自社を理解し、互いに合うかどうかを判断できる場所にする、という変化です。

厚生労働省が2023年6〜12月に実施したヒアリング(求人掲載企業15社、転職経験者10名、民間人材サービス事業者10社)では、次のような声が紹介されています。

  • 転職経験者:「情報開示がないこと自体がマイナスのイメージを与えることはある」
  • 民間人材サービス事業者:求人票に情報を細かく書くほど、マッチした人が集まる一方で、応募は減るという声
  • 民間人材サービス事業者:従業員50人以下の中小企業では、ホームページの整備が進まず、面談が主な情報伝達の場になっているという声

ただし、これは少数のヒアリングであり、全体の傾向を示すものではありません。

独自調査と外部調査は分けて読む

37,924社では、採用の入口がある企業の63.6%で、社員紹介・福利厚生・新卒採用・中途採用のページを確認できませんでした。独自調査で確認したのは「企業がどこまで採用情報を出しているか」であり、採用成果との因果関係ではありません。求職者が何を求めているかは、外部調査から読み取ったものです。この記事では、この2つを分けて扱います。

企業が取るべき対応:自社で活躍する人材を定義し、その人に選ばれる情報を設計する

ここからは、独自調査と求職者側の外部調査を踏まえた実務上の提案です。「売り手市場だから採れない」と一括りに考えると、打ち手が見えなくなります。まず採りたい人材を決め、その人が何を見て会社を選ぶかを考えてから、発信する情報を絞る。この順番で整理することを提案します。

採用情報を整える5つのステップ

  1. 採りたい職種・人材を明確にする。 「人が足りない」ではなく、どの職種の、どんな人が必要なのかを決めます。採りたい人物像を職務に必要な条件へ落とし込む手順は、採用要件の作り方で確認できます。
  2. その職種の需給を見る。 厚生労働省の職業別の求人倍率で、自社の職種が売り手市場なのか、求職者が多い職種なのかを確認します。
  3. 自社で活躍している人の特徴を言葉にする。 経験年数や資格だけでなく、仕事の進め方や考え方、周囲との関わり方に共通点がないかを見ます。
  4. その人が会社を選ぶ際の視点を洗い出す。 何を知りたいか、何を不安に感じるか、何と比べるかを整理します。候補者が何を比較し、何を不安に感じるかまで具体化する場合は、採用ペルソナの作り方を参考にできます。
  5. 必要な情報を、必要な場所で発信する。 採用サイトや社員紹介、求人票などのうち、その人が見る場所に絞って厚くします。
採りたい人材の明確化から職種の需給確認、活躍人材の言語化、候補者の判断軸整理、情報発信までの5ステップ

図は、採りたい人材の定義から情報発信までを5段階で整理したものです。

求職者に選ばれるために発信したい5つの情報

ステップ5の「必要な情報」とは、具体的に何でしょうか。リクルート調査と厚生労働省の手引では、求職者が具体的な仕事内容、一緒に働く人、評価、職場環境、キャリアなどの情報を求めていることが確認されています。これらを、企業が実際に発信しやすい形に整理したのが、次の5種類です。

  1. 活躍する人の行動
  2. 実際の仕事
  3. 活躍している人の経歴と成長
  4. 仕事のリアル
  5. 入社後の道筋

5分類そのものは当社の実務整理であり、5種類を発信すれば採用成果が上がることまでを検証したものではありません。以下、順に内容を見ていきます。

活躍する人の行動:どんな人が活躍する会社なのか

「主体性のある人」「コミュニケーション能力のある人」「成長意欲のある人」といった表現だけでは、候補者は自分に当てはまるかを判断できません。その会社の仕事で、実際にどんな行動をする人が活躍するのかに翻訳して伝えます。たとえば「主体性のある人」は、「上司の指示を待たず、顧客の課題を自分で仮説にして、提案まで持っていく人」のように、その会社での活躍行動へ言い換えます。伝える観点は次のとおりです。

  • 正解が決まっていない仕事に、どう向き合う人が活躍するか
  • 指示を待たず、自分で仮説を立てる必要があるか
  • 個人で成果を出す人が向くのか、周囲を巻き込む人が向くのか
  • スピードと正確性のどちらを、より重視するか
  • どこまで自分で判断することが求められるか
  • 顧客・上司・同僚と、どんな関わり方が必要か

実際の仕事:どんな判断や行動を求められるのか

求人票の仕事内容は、「何をする仕事か」にとどまりがちです。候補者が入社後を想像できるよう、「どんな判断や行動を求められる仕事か」まで伝えます。

  • 1日の仕事の流れ、具体的に担当する案件
  • 誰と仕事をするのか、顧客とどう関わるのか
  • 入社直後に任される仕事、半年後・1年後に期待されること
  • どんな判断を任されるのか、どこに裁量があるのか
  • 難しい仕事、苦労するポイント

活躍している人の経歴と成長:自分と近い人はいるか

社員紹介のページを確認できた企業は、今回の調査では22.3%でした。ただし、今回見たのはページの有無で、内容の具体性は確認していません。社員紹介を出す場合は、趣味や休日、入社理由、社員同士の仲の良さだけでなく、次の点まで具体化します。

  • 入社前の経歴と、なぜ採用されたのか
  • 入社後につまずいたことと、どう成長したのか
  • 現在どんな仕事を任されているのか
  • どんな行動や考え方が評価されているのか
  • どんな人なら、似たように活躍できそうか

目的は、候補者が「この人と自分は近い」「この環境なら自分も活躍できそうだ」と判断できる内容にすることです。

仕事のリアル:会社の良いところだけでなく、向き・不向きの手がかり

良い面だけを並べるのではなく、候補者が向き・不向きを判断できるよう、仕事の実態も具体的に伝えます。たとえば、次のような内容です。

  • 意思決定が速い一方で、変化も多い
  • 裁量が大きい一方で、指示待ちでは難しい
  • 成果を求められる一方で、昇進も早い
  • 少人数なので、担当領域が広い
  • 仕組みや制度がまだ完成していない
  • 顧客対応の難易度が高い、繁忙期がある

これらは、候補者が応募前に仕事の向き・不向きを判断するための情報です。厚生労働省の手引でも、職場の雰囲気・社風、配属予定部署に近い働き方の実態、研修・オンボーディングなどが、求職者が求める情報として挙げられています。

入社後の道筋:入社したらどうなるのか

候補者が考えているのは、採用条件だけでなく「この会社に入った後の自分」です。「どんな人を採りたいか」だけでなく、「採った後にどう活躍してもらうのか」まで見せます。

  • 入社後1〜3か月で何をするのか、半年後に期待される状態、1年後に任される仕事
  • オンボーディングや教育・研修
  • 評価されるポイント、昇格・昇給の考え方
  • キャリアの選択肢(スペシャリスト、マネジメントなどの進路)
  • 未経験者の場合、どのように立ち上がるのか

5つの情報に共通する目的:候補者が入社後の自分を判断できること

候補者が入社後の自分を判断するために必要な、活躍する人の行動、実際の仕事、活躍者の経歴、仕事のリアル、入社後の道筋の5情報

5つの情報に共通する目的は、情報量を増やすことではなく、候補者が「この会社で働く自分」を判断できる状態をつくることです。次の表に、各情報で候補者が判断できることと、主な掲載先を整理します。

発信する情報 候補者が判断できること 主な掲載先
1. 活躍する人の行動 自分の強みがこの会社で活かせそうか 採用サイト、社員紹介
2. 実際の仕事(判断・行動まで) 自分にこの仕事ができそうか 職種別ページ、求人票
3. 活躍している人の経歴と成長 自分と近い人が活躍しているか 社員紹介、採用コンテンツ
4. 仕事のリアル この会社の仕事の進め方に合いそうか、期待されることを受け入れられるか 職種別ページ、面談・説明会
5. 入社後の道筋 入社後に期待されることを受け入れられるか、他社ではなくこの会社を選ぶ理由があるか 採用サイト、求人票、面談

このように、候補者が次の5点を判断できる状態をつくることが、採用情報発信の目的になります。

  1. 自分にこの仕事ができそうか
  2. 自分の強みが、この会社で活かせそうか
  3. この会社の仕事の進め方に合いそうか
  4. 入社後に期待されることを受け入れられるか
  5. 他社ではなく、この会社を選ぶ理由があるか

求人条件を発信するだけでなく、「この会社で活躍する人の解像度」を発信する。これが、採用サイトを求人の掲載場所から、活躍できるかを判断する場所へ変える中身です。

自社で確認したい5つの問い

ここまでの内容を自社に当てはめるために、次の5つの問いを確認します。表には、確認方法と、発信につなげる例も示します。

確認する問い 確認方法 発信につなげる例
採りたい人材は誰か 現場・経営層へのヒアリング 職種ごとの募集ページ
その職種の需給はどうか 厚生労働省の職業別求人倍率 条件面の見直し、募集方法の選択
活躍している人の特徴は何か 活躍している社員への聞き取り 社員紹介、仕事の考え方の記事
候補者は何を不安に感じるか 面談・辞退理由の確認 働き方、評価、選考フローの説明
比較される他社は何か 求人媒体や口コミの確認 他社と違う点の具体化

情報量そのものを増やすのではなく、求職者が企業選びで判断に使う情報から優先して整えることが現実的です。

この調査から言えることと言えないこと

最後に、この調査の結果をどこまで使えるかを整理します。

言えること

  • 求人倍率は直近で低下しており、職種別・規模別に需給は大きく異なります。
  • 求人倍率や人手不足率は人数の過不足を示す指標で、自社が欲しい人材を採れるかどうかは示しません。
  • 調査した37,924社では、採用の入口がある企業の63.6%で、社員紹介・福利厚生・新卒・中途のページが確認できませんでした。
  • 正社員不足の割合が近い業界でも、採用情報の充実度には差がありました。必要人数の確保状況を比較できた7業界でも、確保状況と確認できた採用情報の項目数に一貫した関係は確認できませんでした。
  • 企業は経験・資格以外の要素(問題解決力・主体性・傾聴力など)も重視しています。

言えないこと

  • 日本企業全体の割合は言えません。調査対象に偏りがあるためです。
  • 採用情報の充実度が、採用の成功や、正社員不足の割合・必要人数の確保状況を左右しているとは言えません。
  • 企業の求める能力が近年高度化・多様化しているとは言えません。これは今回の調査では測っていない仮説です。
  • 「活躍する人の行動」「仕事のリアル」などの5種類の情報を発信すれば、採用成果が上がるという因果関係は言えません。5分類は、求職者側の外部調査をもとに当社が実務向けに整理したものです。
  • 給与・選考フロー・よくある質問・キャリアパスなど、記載内容の中身は言えません。今回確認したのはページの有無で、記載内容は集計に含めていないためです。

まとめ

求人倍率は直近で低下しており、職種別に見ると8倍超から0.3倍前後まで大きく分かれます。「日本は売り手市場」という言葉は、実態に対して粗い表現です。

求人倍率で分かるのは人材の量の需給です。一方、求職者は具体的な仕事内容、一緒に働く人、評価、職場環境、キャリアなども企業選びの判断材料にしています。「売り手市場だから採れない」で止まらず、自社が採りたい人材を定義し、その人が判断に必要とする情報を整えることが、採用を見直す出発点になります。

求職者が判断できるよう、誰が活躍しているのか、実際にどんな仕事をするのか、何が難しいのか、どんな行動が評価されるのか、入社後どうなるのかを具体的に伝えましょう。求人条件だけでなく、「この会社で働く自分」を想像できる情報を整えることが重要です。最初の一歩は、ステップ1の「採りたい職種・人材を明確にする」ことです。どの職種の、どんな人に選ばれたいのかを決めるところから始めてください。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_76397.html
  • 厚生労働省「一般職業紹介状況 参考統計表(令和8年8月分)」 https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/001753011.pdf
  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年12月分及び令和7年分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69302.html
  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和6年12月分及び令和6年分)について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_49776.html
  • リクルートワークス研究所「第43回ワークス大卒求人倍率調査(2027年卒)」(2026年4月23日) https://www.works-i.com/surveys/item/260423_recruitment_saiyo_ratio.pdf
  • リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2025年度実績、正規社員)」(2026年6月12日) https://www.works-i.com/surveys/item/260612_midcareer.pdf
  • 帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001341.000043465.html
  • 帝国データバンク(同調査・業種別の再掲)財経新聞 https://www.zaikei.co.jp/releases/3437421/
  • doda「転職求人倍率レポート(2026年6月・第1四半期)」 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001066.000022215.html
  • マイナビキャリアリサーチLab「中途採用状況調査2025年版(2024年実績)」 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20250326_93514/
  • マイナビキャリアリサーチLab「2026年1-3月 正社員の求人件数・初年度年収レポート」 https://career-research.mynavi.jp/reserch/20260424_109836/
  • 日本経済団体連合会「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」(2018年11月22日) https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf
  • 厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引」について(ヒアリング結果) https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/001187864.pdf
  • 厚生労働省「求職者等への職場情報提供に当たっての手引 第3版」(2026年3月改定) https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001672155.pdf
  • リクルート「転職活動者調査 第2弾 転職活動中の『不安』や『企業に提示してほしい情報』の世代別の傾向」(2023年6月6日、転職活動者1,040人) https://www.recruit.co.jp/wp-content/uploads/2025/07/20230606_hr_01.pdf
  • 当社調査:独自企業データベース(調査対象37,924社、2026年8〜9月に企業サイトを確認)

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