多店舗のMEOを初めて外注するとき、最初から完璧な施策案を作る必要はありません。先に必要なのは、「何店舗を対象にするか」「Googleビジネスプロフィール(GBP)を誰が管理しているか」「何を成果として測るか」「口コミや店舗情報を現在どう運用しているか」を、支援会社が確認できる状態にすることです。
これらが店舗ごとに分散したままだと、同じ「MEO支援」でも見積もりに含まれる作業範囲が変わります。その結果、複数社の提案を同じ条件で比べにくくなります。
本記事では、初回相談の前に整理したい情報を6つに分け、1枚の要件表にまとめる形で解説します。この順に確認すれば、自社でどこまで分かっていて何が不明なのかを、そのまま相談の材料にできます。
多店舗MEOの全体設計から確認したい場合は、MEOの内製・外注・ハイブリッドの判断基準も参照してください。本記事は、そのうち外注前の準備に絞った内容です。
外注前に整理する6つの情報は何か
相談前に整理したい情報は、次の6つです。各項目の用語は、後の節で順に説明します。
| 整理項目 | 確認する内容 | 相談時に分かること |
|---|---|---|
| 1. 店舗マスター | 店舗名、住所、電話番号、URL、営業時間、業態など | 対象店舗数と管理単位 |
| 2. Googleビジネスプロフィールの権限 | オーナー、管理者、ビジネス拠点グループ | 支援開始に必要な権限整理 |
| 3. KPI・計測状況 | 検索表示、電話、ルート、Webサイトクリックなど | 成果の評価方法 |
| 4. 口コミ運用 | 依頼方法、返信担当、承認ルール、対応状況 | 依頼できる業務範囲 |
| 5. 現在の施策と課題 | 投稿、写真、店舗情報更新、順位計測など | 改善対象と優先順位 |
| 6. 外注したい範囲 | 本部、店舗、支援会社の担当範囲 | 見積条件と役割分担 |
表の「相談時に分かること」は、その項目を整理すると、支援会社との話の中で何が具体的になるかを示しています。

店舗情報だけでなく、権限、KPI、口コミ運用、現状の課題、役割分担まで順番に整理すると、依頼条件を明確にしやすくなります。
すべての情報を最初から整備し終える必要はありません。「把握済み」「未確認」「店舗によって異なる」の3つを区別できれば、初回相談の材料になります。分からない項目そのものが、外注後に整理すべき課題になるためです。
1. 最初に全店舗の「店舗マスター」を作る
この節で決めるのは、相談の対象になる店舗と、その管理単位です。まず、対象店舗を1行ずつ並べた店舗マスターを作ります。最低限、次の項目を整理しておきましょう。
- 店舗ID
- ブランド名
- 正式な店舗名
- 郵便番号
- 住所
- 電話番号
- 店舗ページURL
- 営業時間
- 定休日
- 主な業種・サービス
- Googleビジネスプロフィールの有無
- オーナー確認の状況
- 社内担当者
- 備考
Googleビジネスプロフィールは、Google検索やGoogleマップに表示する営業時間、Webサイト、電話番号などのビジネス情報を管理する仕組みです。店舗マスターでは、「Google上の情報」と「社内で正としている店舗情報」が一致しているかを確認できる状態にします。
店舗マスターは、単なる名簿ではありません。たとえば30店舗のうち、20店舗は本部管理、5店舗は店舗責任者管理、残り5店舗は管理者が分からない状態だとします。この場合、外注先の初期作業は「30店舗への施策開始」だけでは済みません。
権限確認や情報整理が必要な店舗を分けておけば、初期対応の範囲を具体的に決められます。
2. Googleビジネスプロフィールの権限は誰が持っているか確認する
この節で確認するのは、現在「誰が所有し、誰が操作できる状態なのか」です。外注するからといって、アカウントのIDやパスワードを支援会社へ渡す前提で考える必要はありません。
Googleビジネスプロフィールにはオーナーと管理者の役割があり、プロフィールのオーナーは他のユーザーを招待できます。管理者も店舗情報の編集や口コミ返信などを行えますが、ユーザーの追加・削除など一部の権限はオーナーに限定されています。

図のように、IDやパスワードを共有するのではなく、本部・店舗・外注先の役割に合わせて必要な権限を設定します。
複数店舗を複数人で管理する場合は、「ビジネス拠点グループ」を使ってプロフィールをまとめて管理する方法もGoogleから案内されています。Googleは、ユーザー名とパスワードを共有する方法より、ビジネス拠点グループによるアクセス共有を推奨しています。
相談前には、店舗ごとに次の項目を確認します。
| 確認項目 | 記載例 |
|---|---|
| メインのオーナー | 本部共通アカウント |
| その他のオーナー | マーケティング責任者 |
| 管理者 | 店舗責任者 |
| ビジネス拠点グループ | 設定済み/未設定 |
| オーナー不明 | あり/なし |
| 外部会社の権限 | なし/あり |
| 対応が必要な店舗 | ○○店、○○店 |
表の「記載例」は、店舗ごとに書き込む内容の例です。「オーナー不明」と「対応が必要な店舗」が埋まれば、支援開始前に権限を整理すべき店舗が分かります。
外注先へどの権限を付与するかは契約内容によって決めればよく、相談時点で権限そのものを渡す必要はありません。
Googleも、承認を受けた代理人について、可能な限りビジネスオーナー自身がプロフィールを所有し、代理人を管理者として追加する考え方を示しています。
3. 順位だけでなく、何を成果として見るか決める
この節で決めるのは、外注先に何を成果として伝えるかです。「○○駅+業種で何位か」だけを成果指標にすると、実際の来店や問い合わせとのつながりが見えにくくなります。
Googleビジネスプロフィールでは、プロフィールの閲覧だけでなく、電話、ルート検索、Webサイトクリックなど、ユーザーの行動につながる指標を確認できます。そこで相談前に、現在確認できる指標を一覧にします。次の表は、その整理の例です。
| KPI | 現在計測しているか | 今後重視したいか |
|---|---|---|
| 対象キーワードの順位 | ○ | ○ |
| プロフィールの閲覧 | ○ | ○ |
| 電話 | ○ | ○ |
| ルート検索 | ○ | ○ |
| Webサイトクリック | ○ | ○ |
| 予約・問い合わせ | △ | ○ |
| 来店・売上 | × | △ |
表の「現在計測しているか」と「今後重視したいか」の差が、外注先に相談したい点です。この例では、予約・問い合わせは今後重視したいのに計測が十分でなく、来店・売上は現在計測できていない指標として読み取れます。

検索順位は、MEOの確認指標の一つです。電話、ルート検索、Webサイトへのアクセス、その先の予約や来店までつなげて、成果を設計します。
最初からすべてをMEOだけで計測できる必要はありません。伝えるべきは、「最終的に何を増やしたいのか」です。
来店を考える人にとって、Googleマップ上で順位を見ること自体は目的ではありません。店舗情報や口コミなどを確認し、その後に電話、ルート検索、Webサイト閲覧、予約などの行動へ進みます。そのため、検索順位だけでなくその先のユーザー行動までKPIに含めると、支援会社に求めるレポートの内容を決めやすくなります。
必要に応じて、GoogleビジネスプロフィールとGoogleアナリティクスを接続し、プロフィール経由のデータを分析環境へ連携する方法もあります。
4. 口コミ運用を「誰が・いつ・どう対応するか」で整理する
この節で確認するのは、口コミの依頼と返信を、現在誰がどのように進めているかです。口コミは「何件あるか」だけでなく、運用方法まで整理します。
店舗ごとの口コミ依頼を仕組み化する選択肢を確認したい場合は、クチコミ増えるくんのサービス内容も参照できます。
確認したいのは、次の項目です。
- 現在口コミを依頼しているか
- どの顧客へ依頼しているか
- 店舗と本部のどちらが依頼しているか
- 口コミ返信の担当者
- 返信前の承認が必要か
- 低評価口コミの報告・相談先(エスカレーション先)
- 未返信口コミを確認する担当者
- 返信文の共通ルールや禁止表現
- 店舗ごとに運用方法が違うか
ここまで整理する理由は、外注先へ「口コミ対応をお願いします」と伝えるだけでは、依頼範囲が決まらないからです。たとえば、文章案の作成だけを依頼するのか、投稿前に本部承認を挟むのか、店舗責任者が事実確認するのかによって、必要な運用は変わります。
口コミ施策では、Googleのポリシーも確認しておきます。Googleは、金銭、割引、無料の商品やサービスなどのインセンティブと引き換えに口コミを投稿してもらう行為や、高評価の顧客だけを選択的に募る行為などを禁止しています。
現在の口コミ依頼の方法を相談前に共有しておけば、単に口コミ数を増やす話ではなく、ガイドラインに沿った運用設計まで相談できます。
5. 過去の施策より「現在どこで困っているか」を整理する
この節で決めるのは、相談資料に何を載せるかです。MEO外注の相談資料は、過去の施策を細かく説明するより、現在の状態と課題を整理した方が、支援会社が実務で使いやすくなります。
まず、次の項目について、「実施中」「未実施」「不明」で分けます。
- 店舗情報の定期確認
- 営業時間・特別営業時間の更新
- 写真追加
- Googleビジネスプロフィールへの投稿
- 口コミ依頼
- 口コミ返信
- 検索順位計測
- 店舗別レポート
- 競合店舗の確認
- 店舗ページのSEO
- 本部と店舗の承認フロー
次に、困っていることを具体的に書きます。「MEOがうまくいっていない」という書き方では、何を支援すればよいのかが分かりません。相談しやすい形にすると、たとえば次のようになります。
- 店舗によって口コミ返信率に差がある
- 営業時間の更新漏れを本部が把握できない
- 本部が全店舗の権限を確認できていない
- 店舗別の数字はあるが比較できない
- 順位レポートはあるが来店につながったか分からない
- 投稿を店舗任せにしており更新頻度に差がある
このように課題を「観測できる状態」に変えると、相談の場で必要な支援内容を切り分けやすくなります。
6. 外注する範囲と社内に残す範囲を仮決めする
この節で決めるのは、本部・店舗・外注先のどこが何を担当する想定かです。初回相談の段階では、最終的な役割分担まで確定していなくても構いません。ただし、「全部任せたい」だけでは見積もり条件が曖昧になるため、担当の想定を仮置きしておきましょう。
外注開始後に、本部・店舗・支援会社の権限、投稿、口コミ、データ管理を標準化したい場合は、複数店舗MEOの運用設計も参照してください。

外注範囲を「全部」とするのではなく、担当を仮置きしておくと、相談内容と見積もり条件を具体化しやすくなります。次の表が、その仮置きの例です。
| 業務 | 本部 | 店舗 | 外注先に相談 |
|---|---|---|---|
| 店舗基本情報の管理 | ○ | △ | △ |
| 営業時間変更 | ○ | ○ | △ |
| 投稿企画 | △ | △ | ○ |
| 投稿作業 | △ | △ | ○ |
| 写真準備 | △ | ○ | △ |
| 口コミ返信案 | △ | △ | ○ |
| 口コミの事実確認 | ○ | ○ | × |
| 順位・実績計測 | △ | × | ○ |
| 月次レポート | △ | × | ○ |
| 改善提案 | △ | △ | ○ |
表の見方は、業務ごとに○が付いた列が主な担当の想定、△が一部関与、バツ印が関与しない想定という整理です。たとえば口コミの事実確認は、本部と店舗が担い、外注先には任せない想定になっています。
Googleは、承認された代理人がプロフィールを管理する場合でも、代理人が行う操作をビジネスオーナーへ通知することや、オーナーから求められた場合に権限を返還することなどをガイドラインとして示しています。
そのため、外注する範囲だけでなく、企業側に残す権限・承認・確認作業も合わせて整理しておきましょう。
初回相談用の「1枚要件表」はどう作るか
ここまでの内容を、長い企画書にする必要はありません。次の項目を1枚にまとめれば、初回相談での現状共有の土台になります。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 対象ブランド | |
| 対象店舗数 | |
| 対象エリア | |
| 店舗マスター | あり/なし/作成途中 |
| GBP登録状況 | 全店/一部/未確認 |
| オーナー権限 | 本部管理/店舗管理/混在/不明 |
| ビジネス拠点グループ | あり/なし/不明 |
| 現在のMEO担当 | 本部/店舗/なし |
| 投稿運用 | |
| 口コミ依頼 | |
| 口コミ返信 | |
| 順位計測 | |
| 現在確認しているKPI | |
| 最も困っている課題 | |
| 外注したい業務 | |
| 社内に残したい業務 | |
| 希望するレポート | |
| 開始希望時期 |
この表では、空欄を無理に埋めないことが大切です。分からない場合は「不明」と書きます。
たとえば「30店舗あるが、オーナー権限を本部が確認できているのは18店舗」と分かれば、支援開始前に12店舗の権限確認が必要という具体的な論点になります。
相談前に確認したい15項目のチェックリスト
初回相談の前に、次の項目を確認してください。
- 全店舗の一覧がある
- 正式な店舗名・住所・電話番号を確認できる
- 各店舗のGoogleビジネスプロフィールの有無が分かる
- オーナー確認済みか分かる
- 誰がオーナー・管理者なのか分かる
- 不明な店舗を特定できている
- 現在のMEO担当者が分かる
- 現在行っている施策を説明できる
- 口コミ依頼の方法を説明できる
- 口コミ返信の担当者が分かる
- 現在確認しているKPIが分かる
- 最終的に増やしたい成果を説明できる
- 本部と店舗の役割を説明できる
- 外注したい業務を仮決めしている
- 現在困っていることを3点程度に絞っている
すべてにチェックが付かなくても、相談は可能です。不明な項目を明示しておけば、「施策を依頼する前に何を整える必要があるか」まで含めて相談できます。
多店舗MEOの外注準備で避けたい3つの状態
ここまでの整理が不十分なまま相談したときに、見積もりや評価の前提がそろいにくくなる状態を、3つ挙げます。
店舗数だけを伝えて見積もりを依頼する
同じ50店舗でも、全店舗の権限と情報が本部で整理されている企業と、店舗ごとに管理者が異なる企業とでは、必要な初期作業が変わります。「50店舗です」だけでなく、管理状態も合わせて伝えましょう。
支援会社へ任せたい業務を「全部」とする
MEOには、店舗情報、投稿、写真、口コミ、計測、レポートなど複数の業務があります。支援会社に任せる部分と、自社・店舗側でなければ判断できない部分を分けると、必要な支援内容が明確になります。
検索順位だけをゴールにする
検索順位は大切な確認項目ですが、企業が最終的に増やしたいのは、来店、電話、予約、問い合わせなどの事業成果です。Googleビジネスプロフィールで確認できるユーザー行動も含めて、「どの数字まで改善対象として見るか」を相談前に決めておくと、契約後の評価基準がぶれにくくなります。
まとめ
多店舗MEOを初めて外注する前に、最初に行うことは、外注会社のランキングを作ることではありません。まず、次の6項目を整理します。
- 全店舗の店舗マスター
- Googleビジネスプロフィールの権限
- KPIと現在の計測状況
- 口コミの依頼・返信運用
- 現在行っている施策と課題
- 本部・店舗・外注先の役割分担
この情報がそろうと、「何店舗に、どの作業を、どこまで依頼するのか」が具体的になり、相談や見積もりの前提条件をそろえやすくなります。
すべてを自社で整理しきれない場合も、分からない項目を「不明」としたままで構いません。最初の一歩として、店舗マスターと権限状況を持参し、どこから整理すべきかを含めて支援会社へ相談してください。初回の打ち合わせを、具体的な要件整理の場として使えます。
参考文献・データ元
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・「ビジネス拠点グループを作成、管理する」Google ビジネス プロフィール ヘルプ
使用内容:複数プロフィールのグループ管理、アクセス共有
・「ビジネス プロフィールのオーナーと管理者を管理する」Google ビジネス プロフィール ヘルプ
使用内容:オーナー・管理者の権限
・「ビジネスの適格性とオーナー権限に関するガイドライン」Google ビジネス プロフィール ヘルプ
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