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採用管理システム(ATS)を導入する前に決めておくこと|候補者項目・権限・求人媒体連携・データ出力を整理

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践採用 DX採用マーケティング、DX、業務効率化
ATSを比較する前に必要な7つの導入要件を整理する採用担当者のデスク

ATS(応募者管理システム。採用管理システムとも呼ばれます)の導入を検討し始めると、まず製品の機能一覧や比較表を見たくなります。ただ、自社に必要な条件が決まらないまま見始めると、「便利そうな機能」が増えるほど比較の軸がぶれ、どの製品が合うのか判断しにくくなります。

そこで、製品を見る前に、自社側で次の7つを整理します。候補者項目、選考フロー、権限、外部連携(求人媒体・カレンダーなど)、データ出力、既存データの移行要否、運用責任者です。それぞれを、Must・Want・不要に分けます。ここまで固定できれば、機能の数ではなく、自社の採用業務に必要な条件でATSを比較できます。

この記事は、製品ランキングやおすすめ比較ではありません。比較候補を見る前に、自社側の要件表を完成させる手順を解説します。後半には、そのまま使える要件表の形も載せています。

ATSの要件だけでなく、採用改善を内製・外注・ハイブリッドのどこで担うかから整理する場合は、採用改善の体制構築の考え方も確認してください。

最初に結論|ATSは製品を見る前に「7つの要件」を固定する

ATSの導入要件は、次の7項目で整理すると抜け漏れを減らせます。

  1. 候補者について何を管理するか
  2. 選考をどの順番で進めるか
  3. 誰にどこまで見せるか
  4. どの求人媒体・カレンダー等とつなぐか
  5. どのデータを出力・分析したいか
  6. 現在のデータを新しいATSへ移す必要があるか
  7. 導入後に誰が設定・運用を管理するか

この7項目は、以降の節の「要件1」から「要件7」に順番に対応しています。

ただし、項目を並べるだけでは要件になりません。各要件を、次の3つの区分に分けて判断します。

要件区分 意味 判断の基準
Must 導入条件として必須 ないと現行業務が回らない、法務・セキュリティ上必要
Want できれば欲しい 手作業を減らせる、将来の改善に使える
不要 比較対象から外してよい 現在も将来も利用予定が薄い

分類まで終えてから製品比較に進む流れは、次の図のとおりです。

現在の採用業務を整理して要件を分類した後にATSを比較する導入前の流れ

ATS比較は最初の工程ではありません。現在の採用業務を整理し、必要条件を固定してから製品比較へ進みます。

Mustが固定されていれば、どの候補製品も同じ条件で確認できます。

要件1|候補者項目は「集められる情報」ではなく「採用で必要な情報」から決める

最初に決めるのは、候補者について何を管理するかです。氏名や連絡先だけでなく、応募経路、希望職種、選考状況、評価、面接メモなど、採用で実際に使う情報を洗い出します。

ただし、入力欄を増やせるからといって、候補者情報を多く集めればよいわけではありません。厚生労働省は、労働者の募集では募集業務の目的達成に必要な範囲で求職者の個人情報を収集・保管・使用する必要があるとしています。また、応募者の適性・能力と関係のない事項を応募用紙や面接などで把握しないことも、公正な採用選考の基本として示しています。

この考え方を踏まえると、候補者項目は、何のために使うかを説明できる情報から決めるのが基本だと考えます。

進め方は、現在使っているExcel、応募フォーム、求人媒体、人材紹介会社から受け取る推薦情報を横に並べ、「選考判断に使っている項目」「連絡に必要な項目」「集計に使う項目」に分けることです。

候補者項目の要件表例

次の表は、候補者項目を利用目的と優先度で整理した例です。

項目 利用目的 優先度 補足
氏名・連絡先 候補者への連絡 Must 基本情報
応募職種 選考振り分け Must 複数職種採用なら必須
応募経路 媒体別集計 Must 求人媒体・紹介会社・自社サイト等
選考ステータス 進捗管理 Must 自社フローに合わせる
面接評価 合否判断・共有 Must 評価項目も合わせて定義
自由メモ 補足情報 Want 閲覧範囲に注意

ここで決めるのは「どのATSなら入力できるか」ではありません。自社が採用業務で何を管理する必要があるかです。

要件2|選考フローは職種ごとの差まで書き出す

次に決めるのは、選考フローです。応募から内定までの流れを、現在の実務どおりに書き出します。

「応募→書類選考→一次面接→最終面接→内定」という一つの流れだけで判断すると、職種や採用区分による違いを見落としやすくなります。たとえば、営業職には適性検査がないがエンジニア職には技術試験がある、新卒では説明会や複数面接がある、といった違いまで整理します。

この整理が必要なのは、製品によって設定できる範囲が違うためです。ATSの公式機能を見ると、候補者情報の取り込み方や入力項目、選考フローの設定、評価シートなどに製品ごとの差があります。たとえばsonar ATSでは、応募者情報の取り込み、選考フローの設計、独自評価シートなどが提供されています。

そのため、製品側の機能を見る前に、自社で必要な分岐や評価方法を明らかにしておきます。

フローごとに決める4点

各選考ステップでは、次の4点をセットで決めます。

  • ステップ名
  • 合否を判断する担当者
  • 記録する評価項目
  • 次のステップへ進める条件

「一次面接」という名前だけでは要件になりません。現場責任者が評価するのか、人事が確定するのか、評価を誰が修正できるのかまで決めると、次の要件3(権限)の設計にもつながります。

要件3|権限は「役職」ではなく「見せてよい情報・操作」で決める

三つ目は権限です。ATSでは履歴書、職務経歴、評価、面接メモなどの個人データを扱います。そのため、「管理者・一般ユーザー」といった大きな区分だけでなく、誰がどの候補者を閲覧でき、どの操作までできるかで整理します。

個人情報保護委員会のガイドラインでは、個人データを扱う情報システムについて、担当者と取り扱う個人情報データベース等の範囲を限定するアクセス制御が求められています。また、個人データの取扱責任者や、取り扱う従業者・データの範囲を明確にすることも示されています。

この考え方に沿って、少なくとも次の表の利用者ごとに、閲覧・編集・出力の範囲を決めておくと、候補製品の権限設定を同じ基準で比べやすくなります。表は例ですので、自社の体制に合わせて読み替えてください。

利用者 閲覧 編集 出力
採用管理者 全候補者 可 可
採用担当者 担当範囲 可 必要に応じて
現場面接官 担当候補者のみ 評価のみ 不可
経営・役員 最終候補者など必要範囲 原則不可 原則不可

ATSの候補者情報について採用管理者や面接官ごとに閲覧・編集・出力範囲を分ける権限設計図

ATSの権限は役職名だけでなく、候補者情報を「閲覧・編集・出力」のどこまで許可するかで整理します。

特にCSV等のデータ出力は、画面での閲覧とは別に権限を考えます。閲覧できる人全員に、一括出力まで許可する必要があるかを確認しましょう。

要件4|求人媒体・カレンダー・外部サービスは「今使っているもの」を一覧化する

四つ目は外部連携です。一般的に何と連携できるかではなく、自社が現在使っているサービスと、今後も使う予定のサービスを一覧にします。

確認対象は、求人媒体、人材紹介会社、自社採用サイト、GoogleカレンダーやOutlookカレンダー、Web会議、人事労務システムなどです。

ATSによって、求人媒体からの応募取り込み、カレンダー連携、API連携、CSV入出力などの対応範囲は異なります。採用管理システムのRPMでは、CSV・API・FTP等による外部システム連携や、役割別の操作権限・応募者閲覧範囲の制御が案内されています。sonar ATSでもカレンダーや各種HRサービスとのデータ連携が提供されています。

連携できるかどうかは製品ごとに確認が必要なため、要件は具体的に書きます。「求人媒体連携が欲しい」では不十分です。「現在利用中のA媒体とB媒体から応募情報を取り込みたい」「面接予定は社内のGoogleカレンダーへ反映したい」のように具体化します。

要件5|データ出力は「何を分析したいか」から逆算する

五つ目はデータ出力です。CSVが出せるかだけを確認すると不足します。導入後に何を確認したいのかを先に決めます。

たとえば、媒体別の応募数・面接数・内定数を見たいのであれば、応募経路と選考ステータスを出力できる必要があります。職種別の選考期間を見たいなら、職種と各ステップの日付が必要です。

このように、先に「見たい表」を一つ作ってみると、必要なデータ項目が見えてきます。見たい内容の例は次のとおりです。

  • 媒体別の応募数と内定数を見たい
  • 職種別に書類選考から内定までの日数を見たい
  • 拠点別に選考途中の候補者数を見たい
  • 面接官別の評価状況を確認したい

ATSで確認したい採用結果から必要なデータ項目と出力方法を逆算する流れ

先に「何を分析したいか」を決めると、ATSで保存すべき項目と必要な出力方法を整理できます。

見たい内容が決まったら、標準レポートで足りるのか、CSV出力が必要なのか、外部のBI・表計算ソフトへ渡したいのかも決めます。

要件6|既存データは「移すかどうか」まで決め、移行作業そのものは後工程に分ける

六つ目は移行要否です。すでにExcelや別のATSで候補者を管理している場合は、導入要件として「何を新しいATSへ持っていく必要があるか」を判断します。

ここで決めるのは移行作業の手順ではありません。比較前に必要なのは、移行対象の有無と範囲です。次の表は、データの種類ごとに移行要否を分けた例です。

データ 移行要否 理由
選考中の候補者 Must 導入後も選考を継続するため
内定者 Must 入社までの管理が必要
過去応募者 Want 再応募確認等に使う場合
古い求人データ 不要 現在の運用では参照しない

製品を決めた後のCSV整形、テスト移行、並行運用、旧ATS停止などは別の工程です。

ATS比較前に移行対象を決める工程と製品決定後に実施するデータ移行作業を分けた図

ATS比較前に必要なのは、移行するデータの有無と範囲を決めるところまでです。CSV整形やテスト移行は製品決定後の工程として分けます。

既存ATSから新しいATSへ変更する場合の具体的な移行工程は、ATSの乗り換え手順で確認してください。

要件7|運用責任者を決めないままATSを選ばない

最後に、導入後の責任者を決めます。ATSでは、求人追加、選考フロー変更、ユーザー追加・削除、権限変更、媒体変更など、運用開始後も設定変更が発生します。導入して終わりではなく、変更を判断し実行する担当が必要です。

最低限、次の役割を決めてください。

  • ATS全体の管理責任者
  • 求人・選考フローを変更できる担当者
  • ユーザー・権限を管理する担当者
  • 媒体や外部連携を管理する担当者
  • データ出力・分析を行う担当者

小規模な採用チームでは、同じ人が複数の役割を持っても構いません。大切なのは、「何か変えたいときに誰が判断するか」が決まっていることです。

比較前に完成させるATS導入要件表

ここまでの7項目を1枚にまとめると、ATSを比較するときにそのまま使える要件表になります。右端の列に、Must・Want・不要のどれかを入れて使います。

要件カテゴリ 確認内容 Must / Want / 不要
候補者項目 管理する情報、評価項目、応募経路
選考フロー 職種別ステップ、分岐、担当者
権限 閲覧・編集・出力の範囲
外部連携 求人媒体、紹介会社、カレンダー等
データ出力 必要項目、CSV、分析用途
移行要否 選考中・内定者・過去応募者等
運用責任者 設定変更、権限、連携、分析の責任者

要件表の完成条件は、すべての行について「Must・Want・不要」のどれかが入り、Mustについて「なぜ必要か」を説明できる状態です。

ここまで整理しておけば、「高機能だから」「有名だから」ではなく、自社の採用フローに必要な条件を満たすかという同じ基準で候補を確認できます。

よくある失敗|機能名をそのまま要件にしない

要件整理で避けたいのは、「AI機能」「自動化」「分析機能」「媒体連携」のような機能名だけをMustにすることです。機能名だけでは、製品を見ても何を確認すべきか分かりません。

たとえば「分析機能がMust」では、確認する中身が決まりません。「媒体別に応募数・面接数・内定数を月次で確認したい」まで落とせば、必要な入力項目と出力条件を確認できます。

同様に「権限管理がMust」ではなく、「現場面接官は担当候補者の履歴書と評価シートだけ閲覧でき、CSV出力はできない」と決める方が比較に使えます。

要件は機能の名前ではなく、「誰が・何を・どこまでできる必要があるか」で書くのが基本です。

FAQ|ATS導入要件でよくある疑問

ATSを選ぶ前に要件定義はどこまで細かく必要ですか?

比較前は、画面仕様や具体的な設定方法まで決める必要はありません。候補者項目、選考フロー、権限、外部連携、データ出力、移行要否、運用責任者について、Must・Want・不要を判断できる状態を目指します。実際の設定方法は、候補製品を絞った後に確認します。

Mustが多くなりすぎた場合はどうすればよいですか?

「ないと採用業務が止まるか」「法務・セキュリティ上必要か」「手作業で代替できるか」の3点で再判定します。便利だから欲しい機能はWantに戻すと、比較条件を整理しやすくなります。

現在Excel管理でも移行要件は必要ですか?

必要です。ただし、比較前に決めるのは「どのデータを引き継ぐ必要があるか」までです。実際のCSV加工や移行テストは、製品決定後の工程として分けます。

情報システム担当者はどの段階から参加すべきですか?

権限、認証方式、アクセス制限、外部連携、データ出力などが要件に入る場合は、製品比較前の要件整理から確認してもらうと、比較後にセキュリティ条件が追加されて候補を見直す事態を避けやすくなります。

まとめ

ATS導入で最初にやるべきことは、製品比較ではありません。自社の採用業務を整理し、候補者項目、選考フロー、権限、外部連携、データ出力、移行要否、運用責任者の7項目を要件表へ落とすことです。

最初の一歩は、要件表の各行にMust・Want・不要のどれかを入れ、Mustの理由を説明できるようにすることです。そこまで整えば、比較候補を見る準備ができます。

要件整理を実務で進める際は、無料ダウンロードページで公開している資料もご活用ください。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

‹ 親記事: 採用改善の体制構築、何から着手すべきか?内製・外注・ハイブリッドの判断基準と進め方

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