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採用管理システム(ATS)の乗り換え手順|候補者データ・求人媒体・権限・選考履歴を安全に移行

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
旧ATSと新ATSの間で候補者データや移行項目を整理する人事担当者の手元

採用管理システム(ATS)を乗り換えるとき、新しい製品を契約して候補者のデータを移せば終わり、と考えていませんか。実際には、現在使っているATS(以下、旧ATS)に蓄積された候補者情報、選考履歴、履歴書、求人媒体との連携、ユーザー権限といった情報と運用を、乗り換え先のATS(以下、新ATS)へ引き継ぐ必要があります。ここが抜けると、切り替えた日から採用業務が止まりかねません。

出発点は、最初から「全部移す」と決めないことです。まず、移行するデータ、旧ATSに保管しておくデータ、不要になったため削除するデータに分けます。そのうえで切り替え日と入力先を決め、テスト移行、本番移行、並行運用(新旧のATSを併用する期間)、旧ATSの停止の順に進めると、採用活動を止めるリスクを抑えやすくなります。

この記事では、人事・採用DX担当者がATSを乗り換えるときに確認したい実務を、7つのステップと旧ATSの停止前の確認項目、チェックリストの順に整理します。最後に、製品を比較するときの確認事項もまとめます。

ATSの乗り換えは「データ移行」ではなく「採用業務の移行」と考える

この節では、乗り換えで何を移行の対象として扱うかを決めます。最初に確認したいのは、CSVを移せるかどうかだけではありません。

現在の採用活動では、ATSを中心に求人媒体、エージェント、メール、カレンダー、オンライン面接、社内チャット、分析ツールなどがつながっている場合があります。候補者情報を移せても、周辺の連携や担当者の権限が整っていなければ、切り替え後に採用業務が止まります。

そこで、最低限、次の6領域を一つの移行プロジェクトとして扱います。表は、領域ごとに何を確認するかをまとめたものです。

移行対象 主な確認内容
候補者データ 氏名、連絡先、応募日、応募経路、応募職種など
選考データ 選考ステータス、面接履歴、評価、辞退・不採用理由など
添付ファイル 履歴書、職務経歴書、ポートフォリオなど
外部連携 求人媒体、エージェント、メール、カレンダーなど
ユーザー・権限 人事、採用責任者、面接官、現場管理者など
運用ルール 誰がいつ入力するか、切り替え日、旧ATSの停止条件など
ATSを中心に候補者、選考履歴、添付ファイル、外部連携、権限、運用ルールの6領域を示した図

図のとおり、候補者データだけでなく、外部連携や権限、日々の運用まで含めて移行の範囲を確認します。

ATSを変える目的は、データを別の箱へコピーすることではありません。「応募が入る」「担当者が確認する」「候補者へ連絡する」「面接官が評価する」「次の選考へ進める」という一連の流れを、新しい環境でも途切れさせないことがゴールです。

ATSの切り替えを含め、採用業務をどこまで社内で担い、どこをツールや外部支援で補うかを整理する場合は、採用改善の体制構築で全体像を確認できます。

STEP1|旧ATSにあるデータを棚卸しし、移行・保管・削除に分ける

最初に、旧ATSに何が保存されているかを一覧にします。この段階で「移行」「保管」「削除」の3つに分けておくと、不要な個人情報まで新ATSへ持ち込むことを防げます。

ATS内の候補者情報を移行、保管、削除の3つに分類する判断フロー

図のように、旧ATSの情報は無条件にすべて移さず、利用目的に応じて「移行・保管・削除」に分けて整理します。

候補者名簿のほかに、何が保存されているかを確認する

候補者単位で、次の情報が存在しないか確認します。名簿にある連絡先だけでなく、選考の経過や候補者・エージェントとのやり取りまで含めて洗い出します。

  • 氏名
  • メールアドレス
  • 電話番号
  • 応募日時
  • 応募職種
  • 応募経路
  • 選考ステータス
  • 面接日時
  • 面接官
  • 評価内容
  • 社内メモ
  • 辞退理由
  • 不採用理由
  • 履歴書・職務経歴書
  • 候補者とのメール履歴
  • エージェントとのやり取り
  • タグ・グループ
  • 重複応募の情報

求人側にも、求人名、募集部門、勤務地、採用担当者、選考フローなどがあります。

旧ATSからどの項目を出力できるのか、新ATSがどの項目を取り込めるのかは、製品ごとに違います。この違いはSTEP2で突き合わせます。

移行・保管・削除は、個人情報の必要性から判断する

個人情報保護委員会は、個人情報保護法に個人情報の一律の保存期間は定められていないと説明しています。一方、利用する必要がなくなった個人データは、遅滞なく消去するよう努めることが求められています。厚生労働省も、募集を行う企業は採用業務の目的達成に必要な範囲で求職者の個人情報を収集・保管・使用する必要があるとしています。

そこで、「念のため全部保存」とはせず、ATSの移行時に、自社の利用目的や社内規程に沿って次のように判断します。

  • 現在選考中なので移行する
  • 再応募対応など明確な利用目的があるため一定期間保管する
  • 利用する必要がなくなったため削除する

「古いATSに入っているから」という理由だけで、過去の候補者情報を無条件に新ATSへ移すのは避けた方が安全です。

STEP2|旧ATSから出せる項目と新ATSに入る項目を対応させる

次に、旧ATSと新ATSの項目を対応させます。同じ採用情報でも、製品によって項目名や管理方法は一致しません。

たとえば旧ATSの「一次選考」が、新ATSでは「一次面接」となっている場合があります。「応募媒体」と「応募経路」が別項目になっている製品もあります。

次のような対応表を作ると整理しやすくなります。移行方法と確認方法まで項目ごとに書いておくと、移行後の照合にそのまま使えます。

旧ATS 新ATS 移行方法 確認方法
応募日 応募日時 CSV 件数・日時を確認
応募媒体 応募経路 CSV 経路別件数を比較
一次選考 一次面接 変換してCSV ステータスを確認
面接評価 評価 CSVまたは個別対応 数件を目視確認
履歴書 添付ファイル 別途移行 ファイルを開いて確認
社内メモ コメント 要確認 移行可否を確認

この表の「社内メモ」のように移行方法が決まっていない項目は、「要確認」のまま残さず、契約前に移行できるかどうかを確かめます。

移せる範囲はATSによって異なります。PERSONAは、候補者情報、求人情報、応募経路、各種テンプレートなどのデータ移行に対応すると案内する一方、応募書類、メール履歴、選考評価詳細など一部データは別途見積もりとしています。

HERP Hireも、候補者データや選考履歴など主要データの移行に対応するとしています。CSVによる応募情報の取り込みでは必須項目や職種名などに条件があり、フォーマットに合わないデータは事前の整形が必要です。

そのため、新ATSの契約前に「データ移行できますか」とだけ聞くのではなく、項目単位で確認します。

STEP3|求人媒体や外部サービスとの連携を作り直す

候補者データの移行と並行して、求人媒体や外部サービスとの接続を確認します。特に注意したいのは、旧ATSから新ATSへ変更しただけで、過去の媒体連携設定まで自動的に引き継がれるとは限らないことです。

確認対象には次のようなものがあります。

  • 求人媒体
  • 求人検索サービス
  • 人材紹介会社・エージェント
  • 採用サイト
  • メール
  • Googleカレンダーなどの予定表
  • オンライン面接ツール
  • Slackなどの社内チャット
  • 適性検査
  • BI・分析ツール
  • API連携

媒体によっては、連携開始以前の応募が後から自動取得されない仕様もあります。たとえばHERP Hireの一部求人媒体連携では、設定前に発生した未取り込み応募は遡って取り込まれず、必要な場合は手動登録またはCSVインポートが必要と案内されています。

切り替え日に媒体連携だけ変更すると、その前後の応募がどちらのATSにも入らない状態が起きる可能性があります。これを防ぐため、媒体ごとに次の3点まで決めておくと安全です。

  • 旧ATSへの最終取り込み日時
  • 新ATSへの連携開始日時
  • その間の応募を誰が確認するか
求人媒体から旧ATSと新ATSへの応募取り込みを切り替える時系列フロー

図のように、求人媒体の連携変更では、旧ATSの最終取り込みと新ATSの連携開始、その間の応募確認まで決めておきます。

STEP4|ユーザーと権限を新ATSで設計し直す

ATSを乗り換える機会に、旧ATSのユーザー設定をそのままコピーする必要はありません。退職者のアカウントが残っていないか、面接官が必要以上の候補者情報を閲覧できる状態になっていないかを確認します。

最低限、次の役割ごとに必要な権限を整理します。表の権限は例で、役割ごとに見られる範囲と操作できる範囲を分けるときの出発点になります。

利用者 主な権限例
採用責任者 全候補者、設定、レポート
採用担当者 候補者管理、連絡、日程調整
現場責任者 自部門の候補者閲覧・評価
面接官 担当候補者の閲覧・評価
情報システム担当 アカウント・認証設定

新ATSの提供会社に個人データの取扱いを委託する形になる場合は、委託先の安全管理措置や契約内容、取扱状況を適切に確認・監督することも必要です。個人情報保護委員会のガイドラインでは、委託先の選定、委託契約、取扱状況の把握などが示されています。

権限設定とあわせて、SSO、多要素認証、IP制限、操作ログなど、自社が必要とするセキュリティ要件も確認します。認証設定は表の情報システム担当と一緒に進めると、要件の抜けを防ぎやすくなります。

STEP5|全件を移す前に、少量のテスト移行で確認する

項目表が完成したら、少量のデータでテスト移行します。単純な候補者だけではなく、条件が異なるデータを混ぜるのがポイントです。たとえば、次のような候補者を対象にします。

  • 選考中の候補者
  • 選考終了済みの候補者
  • 履歴書が添付されている候補者
  • 複数職種へ応募している候補者
  • エージェント経由の候補者
  • 評価コメントが多い候補者
  • 辞退済みの候補者

確認するのは「インポートが成功したか」だけではありません。候補者名、応募職種、応募経路、現在の選考段階、評価、添付ファイルなどが正しい人物へ紐付いているかを確認します。

移行前後で件数も比較します。たとえば1,000件を書き出して新ATSに987件しか入っていない場合、「ほぼ入った」とは考えず、13件の差を特定します。

STEP6|切り替え日と、並行運用中の正しい入力先を決める

新旧のATSを並行して使う場合、最も避けたいのは、担当者によって入力先が違う状態です。「新しいATSも使えるが、念のため古いATSにも入力する」という運用を長く続けると、どちらが最新情報なのか分からなくなります。

そこで、並行運用に入る前に、切り替え日と入力先のルールを決めます。方法は、たとえば次の2つです。

方法1|切り替え日以降の新規応募を新ATSへ入れる

切り替え日前から選考中の候補者は旧ATSで最後まで対応し、切り替え日以降に応募した候補者だけ新ATSで管理する方法です。

選考途中の複雑なデータ移行を減らせる一方、しばらく新旧両方を確認する必要があります。

方法2|選考中の候補者も含めて新ATSへ移す

一定日時を境に、進行中の候補者も新ATSへ移し、以後は新ATSだけを最新情報の入力先とする方法です。

切り替え後の運用は分かりやすくなりますが、面接予定、評価、候補者への連絡履歴などを正しく移す必要があります。

どちらが適切かは、現在選考中の人数、ATS間の移行対応範囲、採用担当者数などによって変わります。どちらを選ぶ場合も、全員が同じルールで動くことが条件です。

STEP7|候補者への連絡が途切れないか確認する

ATS移行の都合は企業側の事情ですが、候補者側から見れば「いつも通り応募・選考できること」が重要です。移行時には、次のような状態が起きないよう確認します。

  • 応募したのに受付メールが届かない
  • 同じ案内が旧ATSと新ATSから二重に届く
  • 面接予約済みのURLが使えなくなる
  • 担当者変更によって過去のやり取りが分からなくなる
  • 選考ステータスが戻ってしまう
  • エージェントへ同じ候補者の確認が二重に送られる

とくに自動メールや日程調整を利用している場合は、本番前に候補者役のテストアカウントを用意し、応募から面接予約まで一度通して確認すると漏れを見つけやすくなります。

ATS移行を成功させる基準は「システムが動いた」だけではありません。候補者とのコミュニケーションを止めず、社内の担当者も迷わず使える状態まで確認して初めて、乗り換え完了と考えます。

旧ATSを停止する前に確認する7項目

旧ATSは、新ATSが使えるようになった直後に解約するのではなく、停止条件を満たしてから終了します。

旧ATSを停止する前に確認する新規応募や選考履歴など7項目のチェックリスト

図のとおり、新ATSが利用できるだけでは移行完了ではありません。応募・選考・連携・権限などを確認してから、旧ATSの停止を判断します。

次の項目を確認してください。

  • 新規応募が新ATSへ正常に入っている
  • 選考中候補者の管理先が決まっている
  • 候補者・選考履歴の移行結果を確認した
  • 履歴書など必要な添付ファイルを確認した
  • 求人媒体・エージェント等の連携を確認した
  • ユーザー権限と現場の操作確認が完了した
  • 旧ATSに残すべき必要なデータを適切な方法で確保した

最後の項目でバックアップを取得する場合も、候補者情報を無期限にPCや共有フォルダへ置くのは避けます。保存場所、閲覧できる人、保存目的、削除時期まで決めます。

個人情報保護委員会は、利用する必要がなくなった個人データの消去を漏えい防止の観点からも重要としています。外部業者へデータ消去を委託する場合も、適切な監督が必要です。

ATS乗り換え前のチェックリスト

最後に、ここまでの内容を実務で確認する項目としてまとめます。上から順に、確認できたものへ印を付けて使います。

項目 確認
乗り換えの目的が明確になっている □
現ATSのデータ項目を棚卸しした □
移行・保管・削除を分類した □
旧ATSから出力できる項目を確認した □
新ATSへ取り込める項目を確認した □
添付ファイルの移行方法を確認した □
選考履歴・評価の移行可否を確認した □
求人媒体との再連携方法を確認した □
エージェントとの連携方法を確認した □
メール・カレンダー等を確認した □
ユーザーと権限を整理した □
テスト移行を実施した □
移行前後の件数を確認した □
切り替え日を決めた □
並行運用中の正しい入力先を決めた □
現場向けの操作方法を共有した □
旧ATSの停止条件を決めた □
旧ATS停止後のデータ管理方法を決めた □

ATSの乗り換えでは「移せるか」より「何をどう引き継ぐか」を確認する

STEP2・3で見たとおり、移行支援の範囲はATSによって異なります。ある製品で候補者情報を移せても、履歴書、メール履歴、詳細な評価、独自項目まで同じ方法で移せるとは限りません。求人媒体や外部サービスとの連携も、切り替え後に再設定が必要になる場合があります。

そのため、製品を比較するときは機能や料金だけでなく、次の点まで確認してください。

  • 旧ATSから何を出せるか
  • 新ATSへ何を入れられるか
  • どこまで提供会社が支援するか
  • 移せない情報をどう扱うか
  • 切り替え中の採用活動をどう継続するか

HERP Hireは、乗り換え時に現在利用中のATSからCSVを出力して移行を進める方法を案内しています。移行期間についても、データ量や要件によって変わることを明記しています。

製品名を決める前に、「自社の現在の採用業務をどう移すか」を決めておくことが、乗り換え後の混乱を減らすポイントです。

まとめ

採用管理システム(ATS)の乗り換えでは、候補者データだけでなく、選考履歴、添付ファイル、求人媒体、権限、外部連携、日々の運用まで移行対象として整理する必要があります。

進め方は次の順番です。先に移行の範囲と運用ルールを決めてから移したほうが、切り替え後の手戻りを防ぎやすいと考えます。

  1. 旧ATSのデータと運用を棚卸しする
  2. 移行・保管・削除する情報を分ける
  3. 旧ATSと新ATSの項目を対応させる
  4. 求人媒体や外部サービスを再設定する
  5. ユーザーと権限を設計する
  6. 少量のデータでテストする
  7. 切り替え日と入力先を決める
  8. 候補者対応が途切れないか確認する
  9. 停止条件を満たしてから旧ATSを終了する

手順1・2はSTEP1、手順3〜8はSTEP2〜7、手順9は「旧ATSを停止する前に確認する7項目」にあたります。

採用人数や利用媒体が多いほど、整理すべき移行対象と運用ルールの範囲は広がります。製品を比較する前に、その範囲を決めておくと、乗り換え先の候補を同じ条件で見比べやすくなります。

自社だけで移行範囲、採用フロー、権限、外部連携まで整理するのが難しい場合は、採用業務・採用DXの現状整理から無料相談を利用できます。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

・個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)|個人情報保護委員会
個人データの正確性、保存期間の設定、不要となった個人データの消去、委託先の監督に関する確認に使用。 個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」

・取得した個人情報は、いつ廃棄しなければなりませんか|個人情報保護委員会
個人情報保護法に一律の保存期間が定められていないことの確認に使用。 個人情報保護委員会 Q5-2

・公正な採用選考の基本|厚生労働省
採用時に取り扱う求職者情報の範囲に関する確認に使用。 厚生労働省「公正な採用選考の基本」

・ATS乗り換えをご検討の方へ|HERP Hire
候補者・選考履歴の移行、CSV利用、移行支援範囲等の製品仕様例として使用。 HERP Hire「ATS乗り換え」

・応募を追加・編集・削除する|HERP Hire サービスガイド
CSVインポートの必須項目やデータ形式に関する製品仕様例として使用。 HERP Hire「応募を追加・編集・削除する」

・料金プラン/PERSONAとは|PERSONA
ATS乗り換え時に、候補者情報等と応募書類・メール履歴・選考評価詳細で移行対応が異なる製品例として使用。 PERSONA「料金プラン」

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