身に覚えのない口コミや事実と異なる口コミを見つけると、すぐに削除申請を出したくなります。しかし、先に削除申請だけを進めるのは避けたほうがよい場合があります。投稿が削除・編集されると、後から「どのような口コミが、いつ、どこに掲載されていたか」を確認しにくくなるためです。
最初に行うのは、口コミ本文だけを保存することではありません。URL、投稿日時、投稿者情報、取得日時、社内で確認した事実を、ひとまとまりで保存します。政府広報も、インターネット上の権利侵害への対応では、該当ページのURLを控え、画面や動画を保存しておくよう案内しています。
この記事では、広報・PR担当者が媒体を問わず使える「口コミ証拠保全の7点セット」と、発見から削除申請・専門家相談までの実務手順を整理します。読み終えると、何を残し、どの順で動き、どこから専門家に相談するかを、自社の運用として決められます。
関連する全体像や前提は「ネット上の投稿を削除依頼する方法|媒体別の流れと削除できない場合の対処法」で整理しています。
削除申請より先に、なぜ証拠を保存するのか
不正・虚偽の疑いがある口コミを発見した場合は、原則として「保存→事実確認→対応判断→申請」の順に進めます。
理由は、口コミが常に同じ状態で残るとは限らないためです。投稿者自身が削除・編集することもあれば、プラットフォーム側の判断で表示されなくなることもあります。削除された後では、元の文面や投稿者情報を再確認できない可能性があります。
削除申請だけでなく、社内調査、プラットフォームへの再申請、弁護士への相談、発信者情報開示や損害賠償請求などを検討する場合は、なおさらです。後から第三者が状況を確認できる記録が重要になります。
保存の方法については、大阪府が公表しているインターネット上の誹謗中傷に関する相談資料が参考になります。この資料は、スマートフォンのスクリーンショットだけではURLや書き込み日時が記録されないことがあると指摘しています。そのため、できるだけPCを使い、全画面のスクリーンショット、PDF保存、保全日時が分かる形での記録を助言しています。
つまり、「スクリーンショットを1枚撮れば完了」と考えないことが出発点です。
口コミの証拠保全では、何を残せばよいか
実務では、次の7項目を一つの案件として保存しておくと、削除申請や社内判断の際に状況を再現しやすくなります。

口コミの証拠は、スクリーンショットだけでなく、URLや取得日時、自社で確認した事実、対応履歴まで1案件として残します。下の表は、各項目に残す内容と、その目的をまとめたものです。
| 保存項目 | 残す内容 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 1. 口コミ本文 | 星評価、文章、画像を含む投稿全体 | 問題となった表現を確認する |
| 2. URL | 店舗ページと可能なら個別口コミの共有URL | 掲載場所を特定する |
| 3. 投稿日時 | 画面上に表示される投稿時期・日時 | 時系列を確認する |
| 4. 投稿者情報 | 表示名、プロフィール、識別可能な情報 | 投稿を特定する |
| 5. 取得時の画面 | URL等を含むPC全画面、PDF | 掲載状況をまとめて残す |
| 6. 社内確認記録 | 来店・契約・問い合わせ履歴等の確認結果 | 「事実と異なる」と判断した根拠を残す |
| 7. 対応時系列 | 発見、保存、申請、返信、相談等の日時 | 後から対応経緯を再現する |
この7点をそろえると、「口コミの画像は残っているが、どのページだったのか分からない」「虚偽だと思った理由を担当者しか覚えていない」といった状態を防げます。
7点のうち、取得時の画面は「STEP1」、社内確認記録はGoogle口コミの節と「STEP3」、対応時系列は「STEP4」で扱います。ここでは、口コミ本文、URL、投稿日時、投稿者情報の4点について、残し方を説明します。
口コミ本文は、前後を切り取らずに保存する
問題だと感じた一文だけを拡大して保存するのではなく、星評価、投稿者名、投稿日、本文全体が分かる状態で保存します。
長文の場合は複数枚になっても構いません。どの画像がどこから続いているかが分かるようにしてください。
保存後に説明用の画像を作成する場合も、元画像は加工せず残し、加工版とは別ファイルにしてください。
URLは、スクリーンショットとは別にテキストでも残す
口コミの画面だけでなく、URLをコピーして記録します。URLは、後から第三者が対象ページへアクセスしたり、申請対象を照合したりするための基本情報だからです。
Google口コミでは、ビジネスプロフィール自体のURLだけではなく、可能であれば対象口コミの共有リンクも保存します。
投稿日時と、証拠を取得した日時を分けて記録する
「投稿された日時」と「自社がその画面を保存した日時」は別の情報です。たとえば、次のように記録します。
- 投稿日時:2026年8月25日と画面表示
- 証拠取得日時:2026年8月26日 10:15 JST
- 取得者:広報部 ○○
- 取得方法:PC版Chromeで表示しPNG・PDF保存
口コミサービスによっては、「2日前」「1か月前」のような相対表示しか確認できない場合があります。その場合は、画面表示をそのまま記録し、取得日時を別に残しておくと、時系列を説明しやすくなります。
投稿者のプロフィール情報も、同時に保存する
表示名だけではなく、クリックして確認できるプロフィール画面や、公開されている範囲の投稿履歴も、必要に応じて保存します。
短期間に類似した口コミが複数投稿されている場合や、競合企業への投稿が疑われる場合には、投稿単体だけでなく周辺情報が判断材料になることがあります。
ただし、「同じような口コミを書いている」「取引記録が見当たらない」といった事情だけで、特定人物や競合企業による投稿だと断定するべきではありません。
Google口コミでは、虚偽と思う理由をポリシーとの対応で残す
Google口コミの場合は、証拠保存と同時に、どのポリシーに抵触する可能性があるのかを整理しておくと、その後の削除申請を行いやすくなります。
Googleは、単に事業者が内容を気に入らない、意見に同意できないという理由では削除対象にしません。削除対象は、Googleのコンテンツポリシーに違反している口コミです。
Google Mapsのポリシーでは、実体験に基づいていないコンテンツや、競合他社の評判を傷つける目的で投稿するコンテンツなどを「虚偽のエンゲージメント」として禁止しています。
そのため、社内では次の表のように整理します。
| 確認事項 | 記録例 |
|---|---|
| 問題となる口コミ | 「○月○日に契約したが~」 |
| 社内事実確認 | 当日の契約・来店・問い合わせ履歴なし |
| 確認範囲 | 店舗予約システム、CRM、電話履歴 |
| ポリシー上の論点 | 実体験に基づかない投稿の可能性 |
| 判断状況 | 虚偽と断定せず「該当する取引を確認できず」と記録 |
ここで気をつけたいのは、「顧客台帳に名前がない=虚偽口コミ」と即断しないことです。匿名・別名で利用している場合、同伴者だった場合、予約を伴わない利用だった場合なども考えられます。
事実確認の範囲と、確認できなかったことを分けて記録してください。
証拠保全は5ステップで標準化する
企業内で担当者によるばらつきを減らすには、次の5ステップに固定すると運用しやすくなります。

削除申請を急ぐ前に、投稿が残っている状態を保存し、事実確認と対応履歴まで一連の案件として管理します。
STEP1:投稿を発見した時点の状態を保存する
最初に、返信や削除申請を行わず、投稿が表示されている状態を保存します。
PCブラウザを利用できる場合は、アドレスバーを含む全画面スクリーンショットとPDFを残します。前述の大阪府の相談資料でも、PCによる全画面スクリーンショットやPDF保存が案内されています。
スマートフォンしか利用できない場合でも、先に保存し、後からPCで補完してください。
STEP2:URL・投稿者・日時を記録表へ転記する
画像ファイルだけに情報を閉じ込めず、案件管理表にも主要情報を記録します。記録する項目は、最低限、次のとおりです。
- 媒体名
- 対象店舗・企業
- 口コミURL
- 投稿者表示名
- 投稿日時・投稿時期
- 星評価
- 証拠取得日時
- 取得者
- 保存ファイル名
ファイルと管理表を同じ案件IDでひも付けると、後から探しやすくなります。
STEP3:事実確認を行い、「分かったこと」と「推測」を分ける
次に、口コミの記載内容と自社データを照合します。たとえば飲食店なら予約・会計履歴、クリニックなら予約・受付記録、BtoB企業なら問い合わせ・商談・契約履歴などが照合先になります。
このとき、「該当する利用記録を確認できなかった」と「この口コミは競合企業による嫌がらせである」を、同じ扱いにしてはいけません。
前者は、自社で確認できた事実です。後者は、別の証拠がなければ仮説です。削除申請や外部相談で説明するときも、両者を区別してください。
STEP4:対応履歴を時系列で残す
削除申請を行った日時、申請理由、Google等からの回答、再申請・異議申立て、投稿者への返信などを、時系列で追記します。
Googleでは、不適切な口コミの報告後に、クチコミ管理ツールで審査状況を確認できます。ポリシー違反なしと判断された場合には、対象となる口コミについて1回の異議申し立てを行える仕組みがあります。
申請結果だけでなく、「何を根拠に、いつ申請したか」を残しておくと、再検討時の情報不足を防げます。
STEP5:原本と作業用データを分けて保管する
最初に取得したPNG、PDF、URL一覧、記録表などは、できるだけ取得時の状態のまま保存します。社内説明資料を作るために、画像へ赤枠や注釈を追加する場合は、コピーを使用してください。
保存フォルダの例は次のとおりです。
- 01_original:取得時の画像・PDF
- 02_log:取得記録・時系列
- 03_internal_check:社内事実確認
- 04_application:削除申請内容・回答
- 05_working:説明用加工画像等
ファイル名も、20260826_1015_JST_Google_review_001.png のように、取得日時・媒体・対象・連番が分かる形にすると管理しやすくなります。
証拠保全で避けたい5つのミスと、その直し方
口コミ対応では、次のような保存方法だと、後から情報が不足しやすくなります。

スクリーンショット自体は重要な記録ですが、URLや取得日時などと組み合わせることで、後から状況を確認しやすくなります。下の表は、避けたい状態ごとに、問題点と改善方法を整理したものです。
| 避けたい状態 | 問題 | 改善方法 |
|---|---|---|
| 本文部分だけを切り抜く | 投稿者・日時・媒体が分からない | 全画面も保存する |
| スクショだけ残す | URLを確認できない場合がある | URLをテキストでも保存 |
| スマホアプリだけで完結 | URL等が表示されない場合がある | PCブラウザでも取得 |
| 担当者のPCだけに保存 | 退職・異動時に追跡できない | 共有された管理場所へ保存 |
| 虚偽と断定して記録 | 推測と事実が混在する | 確認事実と仮説を分ける |
一方で、スクリーンショットを「証拠として意味がない」と考えてしまうことにも注意が必要です。
スクリーンショットは重要な記録手段ですが、それだけでURLや取得経緯などすべてを証明できるとは限りません。したがって、「スクショを使わない」のではなく、URL、PDF、取得記録、社内確認などで情報を補完するのが実務的です。
削除申請と法的相談では、どこまで証拠を残すか
すべての口コミで、同じレベルの調査が必要なわけではありません。必要な証拠の深さは、その後に行う対応によって異なります。

下の表は、想定する対応ごとに、最低限残したい情報と、追加で検討する情報を示したものです。法的手続きを検討する場合は、保存済みの資料をもとに専門家へ確認します。
| 想定対応 | 最低限残したい情報 | 追加で検討する情報 |
|---|---|---|
| 社内判断 | 本文、URL、日時、投稿者 | 利用履歴 |
| プラットフォームへの削除申請 | 上記+ポリシー違反の根拠 | 類似投稿、時系列 |
| 再申請・異議申立て | 申請履歴、回答内容 | 追加の客観資料 |
| 弁護士相談 | 原本一式、確認記録、時系列 | 投稿者プロフィール等 |
| 法的手続き検討 | 専門家の指示に従う | 必要な追加保全 |
削除申請と法的請求の違いも押さえておきましょう。情報流通プラットフォーム対処法は2025年4月1日に施行され、大規模プラットフォーム事業者について削除申出への対応迅速化や運用の透明化などの仕組みが整備されています。
ただし、プラットフォームへの削除申請と、名誉毀損などを理由とした法的請求は同じ手続きではありません。
発信者の特定や損害賠償請求などを検討する可能性がある場合には、自社判断で先にすべての対応を進めず、保存した証拠を持って弁護士へ相談することも選択肢になります。
口コミ証拠保全シートを、1件1行で管理する
複数店舗や複数媒体を管理している企業では、証拠をフォルダへ保存するだけでは対応漏れが起こります。
次のような管理シートを設けると、広報、店舗責任者、法務などの間で状況を共有しやすくなります。
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 案件ID | REV-20260826-001 |
| 発見日時 | 2026/08/26 09:50 |
| 媒体 | |
| 対象拠点 | ○○店 |
| 投稿者 | 表示名を記録 |
| 投稿日 | 画面表示どおり |
| URL | 個別URLまたは共有URL |
| 証拠取得 | 完了 |
| 社内確認 | 確認中 |
| 想定論点 | 実体験に基づかない可能性 |
| 削除申請 | 未実施 |
| 担当 | 広報部○○ |
| 次の対応 | 店舗責任者へ利用履歴確認 |
このシートでは、「虚偽」「競合による投稿」といった断定を最初から入力しません。「虚偽の可能性」「利用記録を確認できず」など、確認段階に応じた表現にします。
迷ったときの優先順位は「保存→確認→判断→申請」
不正・虚偽の疑いがある口コミへの対応では、スピードは必要です。しかし、削除申請を急ぐあまり証拠を失わないことも重要です。
実務上は、次の順番を基本にします。
- 投稿が残っているうちに証拠保全
- URL・投稿者・日時を管理表へ記録
- 利用履歴等と照合
- ポリシー違反の可能性を整理
- 返信・削除申請・専門家相談を判断
- 実施した対応を時系列へ追記
この6つの作業を見出しの4語に当てはめると、1・2が「保存」、3・4が「確認」、5が「判断」です。「申請」は5の判断を受けて実施し、6でその結果を時系列に追記します。
前述のとおり、Googleで削除の対象になるのはポリシー違反の口コミです。だからこそ、最初の証拠保全と事実確認が、その後の判断の土台になります。
まとめ
不正・虚偽の疑いがある口コミを発見したら、すぐに削除申請だけを行うのではなく、まず投稿が存在している状態を保存してください。
最低限、口コミ本文、URL、投稿日時、投稿者情報、取得時の画面、社内確認記録、対応時系列の7点を残します。スクリーンショットだけで完結させず、PC全画面、PDF、URL、取得日時などを組み合わせることで、後から第三者が状況を確認しやすくなります。
また、「利用履歴が見つからない」という確認結果と、「虚偽投稿である」という判断は別です。事実と推測を分けて記録し、プラットフォームへの申請や法的相談に使える状態を整えてから、次の対応を判断してください。
最初の一歩として、今日見つけた口コミがあれば、削除申請の前に、PCで全画面スクリーンショットとPDFを保存し、URLと取得日時を管理表に記入してください。PCを使えない場合は、スマートフォンで先に保存し、後からPCで補完します。
参考文献・データ元
この記事で参照した情報を確認できます。
- 政府広報オンライン「インターネット上の人権侵害に注意!」:URL・該当画面等の保存方法の確認に使用。
- URL: https://www.gov-online.go.jp/article/200808/entry-9260.html
- 大阪府「インターネット上の誹謗中傷・差別等に関する専門相談窓口 参考資料」:PC全画面、PDF、保全日時を含む証拠保全方法の確認に使用。
- URL: https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/119670/13_sankoshiryo8.pdf
- Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス プロフィール上の不適切なクチコミを報告する」:削除対象、報告、審査、異議申し立ての確認に使用。
- URL: https://support.google.com/business/answer/4596773?hl=ja
- Google マップ「禁止または制限されているコンテンツ」:虚偽のエンゲージメント等のポリシー確認に使用。
- URL: https://support.google.com/contributionpolicy/answer/7400114?hl=ja
- 情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイト:法施行時期と制度概要の確認に使用。
- URL: https://www.isplaw.jp/
- 福岡県「情報流通プラットフォーム対処法」:制度背景・削除申出対応の確認に使用。
- URL: https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/johoryutuplatform.html
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