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オウンドメディアの表記ガイドラインの作り方|表記ゆれ・数字・固有名詞・引用ルールを統一

部署:マーケティング担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
表記ゆれのある原稿を確認しながら共通の表記基準を整理する編集担当者の手元

複数のライターや編集者でオウンドメディアを運営していると、「できる/出来る」「Web/WEB」「1万円/10,000円」のように、同じ内容でも書き方が分かれていきます。そのたびに編集者が判断していると、校正や差し戻しが増え、担当者によって基準もぶれてしまいます。

問題の中心は、正しい日本語を知っているかどうかではなく、「自社メディアではどの表記を採用するか」「どんな場合を例外にするか」が、誰でも確認できる形で決まっていないことにあると考えます。表記ガイドラインで目指すのは、正しい日本語を網羅することではなく、その判断を基準表にまとめることです。

この記事では、漢字・ひらがな、数字、単位、記号、固有名詞、略語、敬称、引用・出典を中心に、表記ガイドラインの作り方と更新方法を5つのステップで解説します。読み終えると、最初に決める項目、迷ったときの優先順位、基準表を更新し続ける方法が分かります。

表記ガイドラインは何を決めるものか:採用表記と例外を共有する基準表

表記ガイドラインは、文章の正誤をすべて決める辞書ではありません。同じ意味で複数の書き方が成立するときに、自社メディアではどれを使うかを共有するための基準です。

文化庁の「公用文作成の考え方」でも、文章は読み手とのコミュニケーションとして捉え、文書の目的や読み手に応じて表記を工夫する考え方が示されています。公用文のルールをそのままオウンドメディアへ移す必要はありませんが、「読み手に合わせて基準を決める」という考え方は参考になります。

実際に株式会社GIGが公開しているオウンドメディア向けの表記ガイドライン例でも、漢字とひらがな、固有名詞、数字、専門用語、記号、全角・半角、出典など、複数の項目を媒体ごとの基準として整理しています。

基準表には、最低でも次の7項目を持たせると運用しやすくなります。各項目に何を書くかは、次の表のとおりです。

項目 記載する内容
対象語・項目 判断が分かれやすい語や表記
採用表記 原則として使用する書き方
避ける表記 通常は使用しない書き方
例外 別表記を認める条件
使用例 実際の記事での書き方
根拠・理由 読みやすさ、公式表記など判断理由
更新日 最後に基準を変更した日

この表のポイントは、「採用表記」だけでなく「例外」も同時に決めることです。表記は文脈によって意味が変わるため、単純な一括置換では対応できない場合があります。原則と例外を分けておけば、ライターが迷ったときにも判断しやすくなります。

まず何から決めるか:最初に押さえる表記ルール8項目

表記ガイドラインを最初から巨大な辞書にする必要はありません。まずは、記事制作で判断が発生しやすい8項目から決めると、運用を始めやすくなります。次の表は、各項目で決める内容の例です。

項目 決める内容の例
漢字・ひらがな できる/出来る、こと/事、ため/為
数字 1万円/10,000円、漢数字と算用数字
単位 %/%、km/キロメートル
記号 「」、『』、()などの使い分け
固有名詞 会社名、商品名、サービス名の正式表記
略語・英字 AI、SEOなどの初出時の扱い
敬称 氏、さん、様、役職名など
引用・出典 引用範囲、出典名、リンクの書き方

表記ゆれが起こりやすい項目については、神楽坂編集室が公開する表記統一の解説でも、漢字・ひらがな、外来語、送り仮名、数字、略語、大文字・小文字、全角・半角などが挙げられています。

ただし、一般的なルールを全部集めることが目的ではありません。自社の記事で実際に迷う項目から登録しましょう。「ルールを増やす」ことより、「同じ質問を編集者へ何度もしなくてよい状態」を目指したほうが、日常業務で使えるガイドラインになります。

どう作るか:表記ガイドラインを作る5つのステップ

表記ガイドラインは、既存のルール集をそのままコピーするより、自社の記事で実際に発生している判断を集めて作るほうが実用的です。ここでは、その作り方を5つのステップに分けて説明します。

迷う表記の収集から基準表作成、例外判断、運用更新までを示した5ステップのフロー図

図のとおり、迷う表記を集めるところから始めて、基準表の作成、例外の判断、運用しながらの更新へと進めます。

ステップ1:過去記事から判断が分かれている表記を集める

最初に、公開済みの記事や編集中の原稿を確認し、同じ語が記事によって書き分けられていないかを探します。例えば、次のような語が候補になります。

  • Web/WEB/ウェブ
  • 問い合わせ/お問合せ/お問い合わせ
  • できる/出来る
  • ユーザー/利用者
  • 1万円/10,000円
  • %/%
  • 株式会社を付ける/付けない
  • ChatGPT/チャットGPT

この段階では、どちらが正しいかを決める必要はありません。まず「編集者によって判断が割れているもの」を候補として集めます。

ステップ2:自社メディアの原則を決める

次に、個別の語を決める前に、媒体全体の原則を置きます。原則があれば、個別の語を決めるときの判断のよりどころになります。例えば、次のような方針です。

  • 読みやすさを優先して漢字を開く
  • 数字は原則として半角の算用数字を使う
  • 固有名詞は公式サイトの表記を優先する
  • 専門用語は必要に応じて初出時に説明する
  • 引用文の中は原文を勝手に変更しない

原則は、想定読者に合わせて決めます。文化庁も、広く一般に向ける解説・広報では、特別な知識を持たない読み手への分かりやすさを優先して表現を工夫する考え方を示しています。自社の想定読者に合わせて原則を決めておくと、新しい言葉が出てきた場合にも判断しやすくなります。

ステップ3:採用表記・避ける表記・例外を表にする

候補を集めて原則が決まったら、1語ずつ基準表へ登録します。次の表は、その一例です。

対象 採用表記 避ける表記 例外
Web Web WEB 正式名称内は公式表記
問い合わせ 問い合わせ 問合せ ボタン名は既存UIに合わせる
できる できる 出来る 固有名称・引用文は変更しない
数字 1、10、100 1、10、100 熟語や慣用表現は個別判断
会社名 公式名称 独自の省略 公式略称がある場合は使用可

ここで気をつけたいのは、「避ける表記=日本語として間違い」としないことです。あくまで「このメディアでは原則としてこちらを使う」という基準にします。

ステップ4:迷ったときの優先順位を決める

すべてのケースを事前に登録することはできません。そのため、ルール同士がぶつかったときの優先順位も決めておきます。一例は、次の順番です。

  1. 法令・制度・企業・商品などの正式名称
  2. 引用元の原文
  3. 自社メディアの表記ガイドライン
  4. 記事内の文脈
  5. 個別判断
正式名称、引用元、自社ルール、文脈、個別判断の順に表記を確認する優先順位図

自社の表記ルールと正式名称などが衝突した場合も、優先順位が決まっていれば担当者ごとの判断差を減らせます。例えば、自社では「Web」を採用表記にしていても、サービスの正式名称が「WEB○○」であれば、その名称は公式表記を優先します。ルールを増やすだけでなく、「どのルールを優先するか」まで決めると、例外の処理が安定します。

ステップ5:実際の記事で使いながら不足項目を追加する

最初から完成版を目指す必要はありません。実際の記事制作で新しい迷いが発生したら、その判断を基準表へ追加します。GIGも、ガイドラインは最初から完全なものを作るのではなく、運用しながら更新していく考え方を紹介しています。

表記ガイドラインは「完成した資料」ではなく、編集判断を蓄積する共通の基準表として扱うほうが運用しやすくなります。

漢字とひらがなは何から決めるか:頻出して判断が割れる語から

漢字とひらがなの使い分けは、すべての単語を登録する必要はありません。記事内で頻繁に使い、判断が割れやすい語から決めます。例えば、次のような語です。

  • できる/出来る
  • こと/事
  • とき/時
  • ため/為
  • さらに/更に
  • すでに/既に
  • ください/下さい

表記を考える際の参考資料として、文化庁の公用文に関する指針が利用できます。漢字・仮名、送り仮名、外来語などの表記が対象です。ただし、オウンドメディアでは読者や文体が異なるため、公用文と完全に同じ基準へ合わせる必要はありません。

迷ったときは、「漢字として正しいか」だけでなく、自社の記事で読みやすいか、同じ語を何度も使ったときに重く見えないかまで確認します。

数字・単位・記号はどこまで決めるか:組み合わせまで

数字のルールは、「半角数字を使う」と決めるだけでは不十分です。同じ金額でも、次のように複数の表記ができるためです。

  • 10000円
  • 10,000円
  • 1万円
  • 一万円

そのため、数字は次の表のように項目を分けて決めます。

判断項目 ルール例
数字 原則として半角算用数字
桁区切り 4桁以上は3桁区切り
金額 本文では「1万円」など読みやすさを優先
割合 「10%」など媒体内で統一
年月日 「2026年9月20日」
範囲 「10〜20人」など記号を統一
単位 kg、km、GBなど採用形を決める

どの形式を採用するか以上に大切なのは、同じ条件で同じ表記になることです。「本文」「表」「ボタン」「グラフ」など表示場所によって別の形式を認める場合は、それも例外として記録します。

固有名詞・略語・敬称は公式表記を起点に決める

会社名、商品名、サービス名、人名などの固有名詞は、原則として公式情報で確認した表記を使います。GIGの表記ガイドライン例でも、固有名詞については正式表記を確認することを基本としています。企業名であれば、次の点まで確認します。

  • 株式会社を付けるか
  • 前株・後株を正しく記載するか
  • 英字の大文字・小文字
  • スペースの有無
  • 公式略称があるか

Microsoftのスタイルガイドでも、ブランド名・製品名などの固有名詞について、その名称固有の表記を維持する考え方が示されています。

略語は、読者がそのまま理解できるものと、説明が必要なものに分けます。例えば「SEO」「AI」のように対象読者が日常的に使う語はそのまま使い、専門性が高い略語は初出時に正式名称や意味を添える、といったルールです。

敬称も同様に基準を決めます。「氏」「さん」「様」「役職名」のどれを使うかを記事ごとに決めるのではなく、取材記事、専門家コメント、顧客事例など用途別に基準を決めます。

引用・出典では何を決めるか:書き方に加えて利用条件も確認する

引用ルールでは、「出典:○○」という書き方だけを統一して終わらせないことが大切です。引用には、表記とは別に、著作権法上の条件があるためです。

文化庁は、著作権法上の引用について、公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、引用目的上正当な範囲であることなどを条件として説明しています。また、出典の明記だけで引用の条件を満たすわけではありません。

そのため、表記ガイドラインでは少なくとも次を決めます。

  • 引用部分と自社文章を明確に分ける
  • 引用元を記載する
  • 元ページへリンクする場合の形式を統一する
  • 引用文を任意に書き換えない
  • 長い文章をそのまま転載しない
  • 図表や画像は文章の引用と同じ扱いだと思い込まない

引用できるかどうかは、個別の利用方法によって判断が変わります。「出典を書けば自由に使える」というルールにはしないよう注意しましょう。

例外はなぜ決めておくのか:ガイドラインを形骸化させないために

表記ガイドラインを厳密にしすぎると、実務で使いにくくなります。例えば、自社では「問い合わせ」と表記すると決めていても、Webサイト上の既存ボタンが「お問い合わせ」なら、操作説明で名称を変えるとかえって分かりにくくなります。同様に、次のようなものは、通常の採用表記とは別に扱う場合があります。

  • 正式な商品名
  • UI上の名称
  • 引用文
  • インタビューでの話し言葉
  • 法令や制度の名称
通常の記事本文では採用表記へ統一し、UIや正式名称、引用では例外として元の表記を維持する考え方を示した図

図のとおり、通常の記事本文では採用表記へ統一し、UIや正式名称、引用では例外として元の表記を維持します。表記ガイドラインには、採用表記だけでなく、こうした例外の条件と理由もあわせて残します。

例外が発生したときに担当者だけで処理せず、「なぜ例外にしたか」を基準表へ記録しておけば、次に同じケースが出たときに再度議論する必要がなくなります。

更新はどう管理するか:正本を1つにして履歴を残す

複数人で運用する場合、ガイドライン自体が複数存在すると、今度は「どのガイドラインが正しいか」という問題が起こります。そのため、複数のコピーを作らず、共有する正本を1つにします。

1つの表記ガイドラインを正本として判断内容を記録し共有しながら更新する運用サイクル

図のように、正本に新しい判断と変更理由を継続的に追加し、共有しながら更新していきます。表記基準を変更するときは、次の情報を残します。

更新項目 記録内容
変更日 いつ変更したか
対象 どの表記を変更したか
変更前 以前の採用表記
変更後 新しい採用表記
理由 なぜ変更したか
適用範囲 新規記事のみ/既存記事も対象など
判断者 誰が確定したか

デジタル庁のウェブコンテンツガイドラインも、文章表現だけでなく、コンテンツの品質確保やライフサイクル管理を扱っています。Webコンテンツのルールは、作成時だけでなく、更新・管理まで含めて設計する考え方が重要です。

表記ガイドラインも同様に、「作って配布して終わり」ではなく、編集業務の中で更新される資料として管理します。表記ルールを各原稿へ漏れなく反映するには、出典やCTA、著者欄などと一緒に記事テンプレートへ組み込むと運用しやすくなります。

公開前に何を確認するか:表記ガイドラインのチェックリスト

自社のガイドラインを作成したら、公開前に次を確認してください。

  • 漢字・ひらがなの頻出語が決まっている
  • 数字の全角・半角が決まっている
  • 金額や割合の書き方が決まっている
  • 単位の表記が決まっている
  • 記号の使い方が決まっている
  • 固有名詞の確認方法が決まっている
  • 略語の初出時ルールが決まっている
  • 敬称の使い分けが決まっている
  • 引用・出典のルールが決まっている
  • 採用表記だけでなく例外が記録されている
  • ガイドラインの正本が1つに決まっている
  • 変更履歴を残せる状態になっている
  • 新しい判断を追加する担当者が決まっている

すべての日本語表現を網羅する必要はありません。実際の記事制作で何度も発生している判断から順番にルール化し、必要な項目を追加していくほうが、実務で使いやすくなります。

まとめ

オウンドメディアの表記ガイドラインは、正しい日本語を集めた辞書ではなく、複数の執筆者・編集者が同じ基準で判断するための資料です。

最初の一歩は、漢字・ひらがな、数字、単位、記号、固有名詞、略語、敬称、引用・出典のうち、自社の記事で実際に迷う項目について、「採用表記」「避ける表記」「例外」「使用例」を決めることです。そのうえで、正式名称や引用などの優先順位を設定し、新しい判断が出るたびに正本へ追加します。

自社用の表記基準をゼロから作る場合は、基準表のひな形やチェックシートをたたき台にし、自社で実際に使う表記へ置き換えていくと整理しやすくなります。実務で使える資料は、資料ダウンロードページから確認できます。

表記ルールを制作フロー全体の中で位置づけたい場合は、コンテンツ制作・運用体制の全体像もあわせて確認してください。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

・「公用文作成の考え方(建議)」文化庁・文化審議会、2022年1月7日。読み手に応じた表記、用語、文章の考え方の確認に使用。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/93657201.html

・「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」文化庁。著作権法上の引用に関する基本条件の確認に使用。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunka_gyosei/kibankyoka/faq/index.html

・「デジタル社会推進標準ガイドライン」デジタル庁。ウェブコンテンツの文章表現・品質確保・ライフサイクル管理の考え方の確認に使用。
https://www.digital.go.jp/resources/standard_guidelines

・「オウンドメディア表記ガイドラインの作り方」株式会社GIG、2020年10月15日。オウンドメディアでの表記項目・固有名詞・数字・出典等の実務例の確認に使用。
https://giginc.co.jp/blog/giglab/ownedmedia_notation_guideline

・「表記ゆれを防ぐには?表記統一で気を付けたい9つのポイント」第一資料印刷株式会社・神楽坂編集室、2026年4月20日。表記ゆれが起きやすい項目の整理に使用。
https://kagurazaka-editors.jp/unified-notation/

・「Capitalization – Microsoft Style Guide」Microsoft Learn。ブランド名・製品名などの固有名詞の大文字・小文字と表記維持の考え方の確認に使用。
https://learn.microsoft.com/en-us/style-guide/capitalization

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