AI回答で自社ブランドが何回紹介されたかだけを見ても、次に何を改善すべきかは分かりません。回数が示すのは「出たかどうか」までで、なぜ選ばれたのか、競合と何が違うのかは読み取れないためです。
手がかりになるのは、AIが自社や競合を推薦するときに挙げる理由です。「価格が分かりやすい」「特定用途に向いている」「実績が豊富」といった理由を、価格・用途・実績などの共通の観点に分けて見ます。この記事では、その観点を「評価属性」と呼びます。評価属性ごとに整理すると、自社がどの観点で選ばれ、どの観点で競合に差をつけられているかが見えてきます。
実際、2026年の国内調査では、AIは単純に1位から順番に企業を並べるだけではなく、用途・機能・対象者など複数の切り口を使ってブランドを推薦する傾向が確認されています。回数や順位だけでは、こうした推薦の仕方を捉えきれません。
この記事では、AI回答を「推薦された企業」「推薦理由」「評価属性」「根拠」「競合差」に分解し、改善テーマを決めるまでの方法を解説します。結論は、回数ではなく「何を理由に選ばれたか」を評価属性に分け、同じ条件で複数回比べることです。読み終えると、自社の回答データを見て、情報発信で直すべき点と、商品・サービス側で直すべき点を分けられるようになります。
関連する全体像や前提は「AIOの効果測定は何から始める?表示・引用・流入・成果、4段階で分かる全体像」で整理しています。
AI推薦の分析では「何回出たか」と「なぜ選ばれたか」を分けて考える
AI検索の分析では、まず「露出量」と「推薦理由」を分けます。露出量を表すのが AI Share of Voice(AI SOV)で、設定した質問群の中で自社ブランドがどの程度登場したかを競合と比較する指標です。一方、推薦理由の分析では、AIが自社をどの条件・特徴と結びつけて紹介したかを確認します。
両者の違いは、同じ30%のSOVでも状態が大きく異なる次の2社で確認できます。
| 企業 | AI回答での主な表現 | 分析結果 |
|---|---|---|
| A社 | 「導入実績が豊富」「大企業向け」「サポート体制が充実」 | 複数の強い推薦属性がある |
| B社 | 「選択肢の一つ」「関連サービスを提供」 | 露出はあるが選ぶ理由が弱い |

AI SOVが同じでも、AI回答内で企業に付与される推薦理由の数や内容には差があります。SOVだけなら両社は同程度に見える場合がありますが、購買候補としてAIが提示するときの説得力には差があります。A社には複数の強い推薦理由が付いている一方、B社は露出があっても選ぶ理由が弱い状態です。
AI検索の計測サービスや分析記事でも、ブランドの表示率だけでなく、推薦順位、センチメント(回答に表れる好意的・否定的といった評価の傾向)、引用元、説明内容などを分けて見る考え方が広がっています。そこで、推薦の分析は次の順序で進めると整理しやすくなります。
- 自社が推薦されたか
- どの位置で推薦されたか
- どのような理由が添えられたか
- その理由は何の評価属性に属するか
- 競合にはどの属性が付いているか
- その違いを生んでいる情報は何か
この流れの中心は、「出た・出なかった」から一段深く入り、AI回答の中で自社がどのような特徴と結びつけられているかを見ることです。これが推薦理由分析です。
AIの推薦理由は、どんな「評価属性」に分類するか
AI回答は、文章のまま比較するより、推薦理由を共通の評価属性へ分類した方が分析しやすくなります。分類の考え方は、次の調査が参考になります。
2026年5月時点の41,264件のAI回答を分析したGMO TECHの調査では、AI回答内の「条件と推薦をひもづける単位」を34種類の推薦軸として分類しています。AIは一つの絶対的な順位だけでなく、用途・機能・対象者などの条件ごとにブランドを推薦していました。
この調査の「推薦軸」は調査側の分類です。実務では、自社の業界に合わせながら、まず次のような評価属性に分けると扱いやすくなります。
| 評価属性 | 確認する表現の例 |
|---|---|
| 用途・課題適合 | 「○○用途に向く」「○○を解決したい企業向け」 |
| 対象者適合 | 「初心者向け」「大企業向け」「中小企業向け」 |
| 機能・性能 | 「分析機能が豊富」「自動化に強い」 |
| 価格・費用 | 「低価格」「料金体系が分かりやすい」 |
| 専門性 | 「○○領域に特化」「専門的な支援が受けられる」 |
| 実績 | 「導入実績が豊富」「多くの企業で利用」 |
| 信頼性 | 「長い運営実績」「評価が安定している」 |
| 使いやすさ | 「設定しやすい」「操作が分かりやすい」 |
| 支援・サポート | 「導入支援が充実」「伴走支援がある」 |
| 独自性 | 「○○に特化した独自機能がある」 |

AI回答の表現をこのように分類すると、自社と競合の違いを比較しやすくなります。ただし、最初から属性を細かく増やしすぎないようにします。まず8〜12程度の大分類を作り、実際の回答を見ながら業界固有の属性を追加すると、月次比較や競合比較がしやすくなります。
AI回答から推薦理由を抽出する5ステップ
推薦理由分析は、同じ質問条件で自社と競合の回答を集め、文章を属性単位に分けて比べる作業です。次の5ステップで、質問の固定から根拠の確認まで進めます。改善後の再測定は、あとの「月次」の節で扱います。

STEP1.比較する質問を固定する
最初に、実際の顧客が比較検討するときに聞きそうな質問を設定します。たとえばBtoBサービスであれば、次のように質問のタイプを分けます。
- 「おすすめの○○会社は?」
- 「中小企業向けの○○サービスは?」
- 「サポートが充実している○○は?」
- 「A社とB社ならどちらがよい?」
- 「○○を改善したい企業に向くサービスは?」
質問文が変わればAIが重視する条件も変わります。そのため、競合比較や時系列比較では、原則として同じ質問セットを使います。
質問を固定する理由は、AIが質問をそのまま検索するとは限らないためです。GoogleはAI Modeについて、入力された質問を複数のサブトピックへ分解し、関連する複数の検索を同時に実行する「クエリ ファンアウト」を利用すると説明しています。ChatGPT Searchも、質問を一つ以上の検索クエリへ書き換える場合があります。つまり、似ているように見える質問でも、AIが調べる情報や形成する回答が変わる可能性があります。
STEP2.「ブランド名+推薦理由」を抜き出す
回答を保存したら、ブランド名の前後から「なぜ推薦しているのか」を表す文を抜き出します。たとえば、次の回答があったとします。
「A社は導入支援が充実しており、初めて導入する中小企業に向いています。一方、B社は分析機能が豊富で、大規模運用を行う企業に適しています。」
この回答は、次のように分解できます。
| ブランド | 推薦理由 | 評価属性 |
|---|---|---|
| A社 | 導入支援が充実 | サポート |
| A社 | 初めて導入する企業向け | 対象者適合 |
| A社 | 中小企業向け | 対象者適合 |
| B社 | 分析機能が豊富 | 機能 |
| B社 | 大規模運用向け | 用途・規模適合 |
一つのブランドに複数の理由が付いている場合は、すべて記録します。この例では、A社に3つ、B社に2つの推薦理由が付いています。
表の評価属性は、前の節の10属性を短く書いたものです。「サポート」は「支援・サポート」、「機能」は「機能・性能」に当たります。「大規模運用向け」は規模に関わる理由なので、「用途・規模適合」という属性を足して分類しています。10属性に収まらない理由が出たら、このように実際の回答を見ながら属性を追加して構いません。
STEP3.肯定・中立・否定だけでなく属性別に評価する
ブランド全体を「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」の3段階だけで分類すると、どこを改善すればよいのか分かりにくくなります。
たとえば「機能は充実しているが、価格は高め」という回答は、ブランド全体では中立に見えます。しかし属性単位なら、次のように分けられます。
- 機能:プラス
- 価格:マイナス
AI回答のセンチメント分析でも、価格、サービス、品質などの側面ごとに評価を分ける「属性単位」の分析が有効とされています。マーケティング施策につなげるなら、ブランド全体の感情スコアより、「どの属性で勝ち、どの属性で負けているか」が判断の材料になります。
STEP4.競合との差を表にする
属性分類が終わったら、自社と主要競合を属性ごとに横並びにします。10回の回答を分析した場合は、次のような表を作れます。表の「回」は、10回の回答の中でその属性が推薦理由として現れた回数の例です。
| 評価属性 | 自社 | 競合A | 競合B | 判断 |
|---|---|---|---|---|
| 専門性 | 7回 | 3回 | 2回 | 自社優位 |
| 実績 | 2回 | 8回 | 5回 | 改善余地大 |
| 価格 | 1回 | 6回 | 3回 | 改善余地あり |
| サポート | 6回 | 3回 | 7回 | 競合Bと拮抗 |
| 使いやすさ | 2回 | 5回 | 6回 | 改善余地大 |
※数値は分析方法を説明するための例です。
この例では、専門性は自社が7回で競合より多く、自社が選ばれる理由になっています。実績と使いやすさは、競合の回数が自社を上回っており、改善余地が大きい属性です。価格にも差があり、サポートは自社6回に対して競合Bが7回で、ほぼ並んでいます。
この表で見るべきなのは、「自社が何回登場したか」ではありません。自社は何を理由に選ばれ、競合は何を理由に選ばれているかです。
STEP5.推薦理由と根拠となる情報を結びつける
最後に、AI回答内の推薦理由について、その判断に使われた可能性がある根拠を確認します。確認する対象は主に次の4つです。
- AI回答内で引用されているページ
- 自社サイトのサービス・事例・料金ページ
- 比較記事や業界メディア
- 口コミ・レビュー・第三者評価
ChatGPT Searchでは検索を利用した回答に引用元が表示される場合があり、OpenAIも検索結果の掲載には関連性や信頼性など複数の要素を使用すると説明しています。掲載そのものは保証されません。
そのため、「AIがこう言ったから、このページが原因だ」と断定せず、推薦理由とWeb上の情報との対応関係を仮説として確認するという扱いが適切です。
競合分析では「ある属性」だけでなく「ない属性」を探す
AI推薦理由の競合分析では、自社に付いている属性だけでなく、競合には付いているのに自社には付いていない属性を探します。自社の強みだけを見ていると、選ばれない理由を見落とすためです。
たとえば競合について、次の理由が繰り返し出ているとします。
- 導入実績が豊富
- 大企業向け
- セキュリティに強い
- 導入支援が充実
一方、自社に付いている理由が次の2つだけだとします。
- 高機能
- 専門サービス
この場合は、「実績」「対象企業」「安全性」「支援体制」が、情報上の弱点候補になります。
2026年8月に日本企業100ブランドを対象に行われたAI検索調査でも、上位ブランドには「カテゴリとの結びつき」「比較コンテンツでの定番性」に加えて、推薦理由が明確に言語化されているという傾向が報告されています。
ここから、実務では単に「もっとブランド名を露出させる」のではなく、「○○なら自社」という組み合わせをAIが説明できる状態を増やすことが方針になると考えます。
改善優先順位は「重要度×競合差×改善可能性」で決める
不足属性が見つかっても、すべてを一度に改善する必要はありません。次の3軸で優先順位を決めます。
| 判断軸 | 見る内容 |
|---|---|
| 重要度 | 顧客がサービス選定で重視する属性か |
| 競合差 | 競合だけが頻繁に評価されているか |
| 改善可能性 | 自社に実態があり、情報を追加・改善できるか |
顧客が重視する属性で競合との差があり、自社に実態があって改善できるものから着手します。
たとえば、競合だけが「導入実績」を理由に頻繁に推薦されている場合、自社にも十分な実績があるのにWeb上で数字や事例が出ていなければ、優先度は高くなります。
一方、自社には存在しない機能について競合が高く評価されている場合は、コンテンツの修正だけでは解決できません。商品・サービス側の改善テーマとして切り分ける必要があります。
推薦理由分析を行うと、競合との差の原因を次の4種類に分けられます。
- 情報不足:自社には強みがあるがWebに十分書かれていない
- 証拠不足:強みを主張しているが実績・数字・第三者評価が弱い
- 認知不足:自社サイトにはあるが外部で語られていない
- 実態差:そもそも競合の方がサービス条件で優れている

競合との差には、情報発信で改善できる問題と、商品・サービス自体の改善が必要な問題があります。上の4種類では、情報不足・証拠不足・認知不足が前者、実態差が後者です。
この分類まで行うと、「記事を増やす」のような曖昧な施策ではなく、改善を担当する部署まで決めやすくなります。
AI推薦理由は1回の回答では判断しない
1回の回答で結論を出さないのは、AI回答に揺らぎがあるためです。
2026年7月にChatGPT、Gemini、Google AI Modeを対象として行われた10業種・100クエリ・15,000試行の調査では、各クエリで最も多く1位になったブランドが実際に1位として出る割合は平均77.7%でした。また、同じ23クエリを3か月後に再計測すると、1位ブランドが約54%のケースで入れ替わっていました。
したがって、1回の回答から「AIは自社を○○と評価している」と断定するのは適切ではありません。分析のたびに、最低限、次の条件を記録します。
- AIサービス
- 使用した質問
- 実行日
- 実行回数
- Web検索の有無
- 推薦されたブランド
- 推薦順位
- 推薦理由
- 評価属性
- 引用・参照元
記録がそろったら、単発の表現ではなく繰り返し現れる属性を、AI回答での自社の推薦のされ方として見ます。
月次では「推薦理由の増減」を追う
改善後は、SOVだけでなく、属性ごとの出現率を同じ条件で比較します。たとえば、次のような推移があったとします。
| 評価属性 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|
| 専門性 | 60% | 65% | 70% |
| 実績 | 15% | 30% | 50% |
| サポート | 35% | 40% | 55% |
| 価格 | 20% | 20% | 25% |

前の節のとおりAI回答には揺らぎがあるため、単発の回答ではなく、同じ質問条件で推薦属性の変化を継続して確認します。
上の表のような変化があれば、「実績」「サポート」を伝える情報整備後に、それらの属性がAI回答へ現れる頻度が増えたことを確認できます。
ただし、前後で数字が変化しても、施策だけが原因とは限りません。AIモデルの変更、検索結果、参照ページ、競合の情報更新なども影響する可能性があります。そのため、因果関係を断定せず、「施策後にこの変化が確認された」と記録します。
自社の分析を確認するチェックリスト
自社で分析するときは、次の12項目を確認してください。
- 同じ質問条件で自社と競合を比較している
- 1回ではなく複数回計測している
- ブランドが出た回数を記録している
- 推薦順位を記録している
- 推薦理由の原文を保存している
- 推薦理由を評価属性へ分類している
- 属性ごとに自社と競合を比較している
- 競合だけに存在する属性を抽出している
- 引用・参照元を確認している
- 自社サイトに根拠情報が存在するか確認している
- 第三者サイトで同じ評価が語られているか確認している
- 改善前後を同じ条件で再計測している
すべてを満たす必要はありません。
最初は「10〜20の重要質問×自社+主要競合」程度から始め、よく現れる推薦属性を把握するだけでも、SOVだけでは見えなかった改善テーマを発見できます。
まとめ:推薦理由は評価属性に分け、繰り返し確認する
AI回答で自社が推薦される理由を分析するときは、「何回出たか」だけでなく「何を理由に選ばれたか」を評価属性へ分解することが、改善テーマを決める出発点になります。
基本手順は、次の流れです。
質問を固定する → 推薦理由を抜き出す → 評価属性へ分類する → 競合と比較する → 根拠を確認する → 改善後に再測定する
AI検索では、用途・機能・対象者など複数の条件からブランドが推薦される傾向があります。さらに回答や推薦順位には一定の揺らぎがあります。だからこそ、一度の回答や単純なSOVだけで判断せず、複数回答に共通する「自社が選ばれる理由」と「競合だけが持つ理由」を追ってください。
最初に取り組むなら、10〜20の重要質問で自社と主要競合の回答を集め、推薦理由を評価属性に分けるところからです。推薦理由を継続的に記録すれば、AI検索対策を「掲載されるための施策」から、自社がどの価値で選ばれる状態を作るかというブランド改善へつなげられます。
参考文献・データ元
この記事で参照した情報を確認できます。
- GMO TECH「AI検索は『ランキング』ではなく『推薦パターン』で動いている―41,264件の回答から見えた5つの事実」:2026年5月時点の41,264件のAI回答を分析し、34種類の推薦軸を整理。
- Forbes JAPAN「SEOの常識が変わる AI検索で自社ブランドを推薦させる新手法」:GMO TECH調査の推薦軸・出現率を紹介。
- AI Score「AI Score Japan AI Visibility Index 2026」:日本企業100ブランド、50問、3AIエンジンによる2026年8月18日の比較調査。
- 株式会社はちのす制作「AI検索の推薦順位は『毎回』も『3ヶ月』も揺れる」:10業種100クエリ、15,000試行による2026年7月調査。
- OpenAI Help Center「ChatGPT Search」:ChatGPT Searchの検索・引用元表示・検索クエリ生成に関する公式情報。
- Google「Google 検索の AI Mode」:AI Modeのクエリ ファンアウトに関する公式情報。
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