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離職率を下げる方法|離職理由の分析・定着施策・採用へのフィードバック

部署:人事・採用担当者部署:経営者・責任者レベル:実践
人事担当者が離職データを時期・部署や職種・理由の観点で確認しているデスク

離職が続くと、研修や1on1、福利厚生などの施策を増やしたくなります。しかし、離職率を下げるために先に必要なのは、施策を増やすことではありません。「誰が・いつ・なぜ辞めているか」を同じ基準で分けて見て、原因に合った施策を選ぶことです。原因が分からないまま施策を重ねると、効果があったのかも確かめにくくなります。

厚生労働省の「令和7年雇用動向調査」によると、2025年の常用労働者全体の離職率は13.7%でした。ただし、この数字をそのまま自社の合否基準にすることはできません。業種、雇用形態、企業規模、採用時期などで離職の起き方は異なるためです。

本記事では、離職率を時期・部署・職種・理由で分解し、優先して改善すべき課題を決める方法を解説します。さらに、定着施策の効果を測り、採用要件・面接・求人情報・入社後の受け入れ支援(オンボーディング)へ学びを戻すところまで整理します。

離職率を下げる第一歩は「誰が・いつ・なぜ辞めるか」を分けて見ること

最初に決めるのは、離職データをどの切り口で分けるかです。全社平均だけを見て対策を決めると、原因を取り違えるおそれがあるためです。たとえば、全社の離職率がどちらも15%(仮の数字)でも、新入社員の早期離職が集中している会社と、特定部署の中堅社員が辞めている会社では、必要な施策が異なります。

そこで最初に、離職データを次の3つの軸で分けます。

分析軸 確認する内容 分かること
時期 入社90日以内、半年以内、1年以内、それ以降 入社直後のミスマッチか、在籍後の課題か
属性 部署、職種、雇用形態、勤務地、役職など 離職が集中している集団があるか
理由 仕事内容、上司・人間関係、勤務条件、評価、キャリア、健康・家庭事情など 自社で改善できる原因が何か

表の「時期」で入社直後に偏っているかを見て、「属性」(部署や職種など)で集中している集団を探し、「理由」で自社が変えられる原因かどうかを確かめます。

全社の離職率は経営指標として必要です。ただし、1つの数字に集約したままでは、離職が集中する場所が見えず、原因を特定できません。改善施策を決めるときは、この3つの軸まで分解して確認します。

離職率は同じ定義・同じ期間で測り続ける

分解した結果を毎回比べられるように、離職率の計算方法をそろえます。離職率は「離職者数を在籍者数で割る」指標ですが、企業によって分母の取り方が異なります。期首在籍者数を使うのか、期間平均の在籍者数を使うのかを決め、毎回同じ定義で測定してください。

社内管理で使う基本形の一例は、次のとおりです。

離職率 = 対象期間の離職者数 ÷ 対象期間の平均在籍者数 × 100

採用や組織拡大で在籍者数が大きく変わる企業では、期首人数だけを分母にすると実態とずれることがあります。そのため、平均在籍者数を使う方法も有効です。大切なのは、どちらが唯一正しいかではなく、定義を途中で変えず、期間をまたいで比較できる状態にすることです。

厚生労働省の2025年の雇用動向調査では、常用労働者全体の離職率は13.7%、一般労働者は11.4%、パートタイム労働者は19.9%でした。公的統計と比べるときは、対象者と計算方法が自社と同じではない点に注意してください。

また、厚生労働省が2025年10月に公表した新規学卒就職者の離職状況では、2022年3月卒の大学卒就職者の3年以内離職率は33.8%でした。これは、同じ年の卒業者を追った指標であり、全社員の年間離職率とは意味が異なります。自社でも「年間離職率」と「入社後○か月・○年以内の定着率」を分けて管理すると、改善対象を見つけやすくなります。

離職理由は「本人の発言」と「会社側の分類」を分けて記録する

次に、分析の材料となる離職理由の記録方法を決めます。退職者本人が話した内容と、人事側が分析のためにつける分類は、別々に残します。

退職者本人の発言と会社側の分析分類を分けて記録する人事担当者の手元

分けて残すと、推測を事実として扱う誤りを防ぎやすくなります。

たとえば、本人が「今後のキャリアを考えて転職する」と話したケースを、担当者の推測だけで「給与不満」と分類すると、誤った施策につながります。逆に、自由記述だけでは複数の退職者を比較しにくくなります。そこで、最低限、次の項目を分けて記録します。

記録項目 内容
退職日・入社日 在籍期間を確認する
部署・職種・役職 離職が集中する属性を確認する
本人が話した理由 発言内容を過度に要約せず残す
主理由 最も大きい理由を共通分類で1つ付ける
副理由 複数要因がある場合に追加する
情報の確度 本人明言/会社側の推測/不明を分ける
改善可能性 自社で変更可能/一部可能/難しいを分ける

労働政策研究・研修機構(JILPT)が2025年に公表した若年者調査では、初職から離職した若者の理由として、人間関係、心身の健康、労働時間・休日、賃金条件、キャリア形成など複数の要因が確認されています。この結果から、離職理由を「給与」「人間関係」と1つに決めつけず、複数の要因が重なる前提で記録するのがよいと考えます。

退職者ヒアリングでは、理由だけでなく改善につながる情報を聞く

退職者ヒアリングでは、「何が嫌だったか」を聞くだけで終わらせず、改善に使える情報へ変えます。次の5点を確認すると、施策へつなげやすくなります。

  • 退職を考え始めた時期はいつか
  • きっかけになった出来事は何か
  • 入社前の期待と実際に違いがあったか
  • 続けるために変わってほしかったことは何か
  • 採用時や入社直後に知っておきたかった情報は何か

退職者が答えたくない項目を無理に聞く必要はありません。「不明」と残すほうが、推測で埋めるより正確なデータ管理になります。

離職理由は件数だけで見ず、時期・部署・職種と掛け合わせて分析する

記録がそろったら、離職理由を時期や部署と掛け合わせて、優先する課題を絞ります。離職理由の件数だけを見ると、改善対象を誤ることがあるためです。たとえば「仕事内容のミスマッチ」が全社で10件あったとしても、8件が入社半年以内の営業職に集中しているなら、全社向けのキャリア制度より、営業職の採用要件・仕事内容の説明・配属後支援を優先したほうが合理的です。

離職の時期・部署や職種・理由を掛け合わせて重点課題を特定する3軸分析図

離職理由は件数だけでなく、時期・部署や職種・理由の交点で見ると、優先して確認すべき課題を絞り込みやすくなります。分析は次の順番で進めます。

  1. 全社の離職率と離職人数を確認する
  2. 入社後の時期別に分ける
  3. 部署・職種・勤務地などで分ける
  4. 離職理由を掛け合わせる
  5. 同じ組み合わせで繰り返し起きている課題を抽出する

分析結果の読み方を、例で確認します。

分析結果 原因仮説 最初に確認すること
入社半年以内の営業職で「仕事内容の相違」が多い 採用時の説明と実務に差がある 求人票、面接時説明、配属後の業務内容
特定部署で「上司・人間関係」が多い マネジメントや役割分担に課題 退職者の発言、異動履歴、1on1実施状況
中堅層で「キャリア」が多い 成長機会や将来像が見えにくい 昇格・異動・育成機会、キャリア面談
複数部署で「勤務時間」が多い 業務量や人員配置に共通課題 残業時間、休日出勤、欠員状況

どの行も、結果から原因の仮説を立て、最初に確認するデータを決めるところまでが分析の役割です。1件の退職だけで部署や上司を原因と断定しないことも欠かせません。同じ傾向が複数回続いているか、客観データと一致するかを確認してから施策化します。

定着施策は離職理由ごとに「確認データ→施策→指標」でつなぐ

原因を絞れたら、次は施策です。離職率を下げるには、人気の施策を一律に導入するのではなく、確認できた原因に対応する施策を選びます。次の表は、離職理由ごとに、追加で確認するデータ、主な定着施策、効果を見る先行指標をつなげたものです。先行指標とは、離職率に結果が表れる前に、施策が実行されているか、原因に近い変化が起きているかを確かめる指標のことです。

離職理由 追加で確認するデータ 主な定着施策 効果を見る先行指標
仕事内容・配属のミスマッチ 求人情報、面接説明、配属先、異動歴 仕事内容の具体化、配属基準見直し、初期面談 配属後面談での役割理解、早期異動相談
上司・人間関係 退職者発言、1on1実施状況、異動状況 管理職支援、1on1設計、相談経路整備 1on1実施率、相談件数、同一部署の離職推移
評価・処遇 評価結果、説明実施、報酬差 評価基準・説明の見直し、フィードバック強化 評価面談実施率、評価後の相談内容
勤務時間・業務量 残業、休日出勤、欠員、業務配分 人員配置、業務削減、シフト・役割調整 残業時間、休日出勤、欠員期間
キャリア・成長 異動、昇格、育成機会、面談記録 キャリア面談、育成機会、社内公募・配置検討 面談実施率、異動・育成施策の利用
入社直後の不安 オンボーディング実施状況、質問・相談内容 役割説明、受け入れ計画、定期フォロー 初期面談実施率、研修完了、相談内容

施策の効果は、離職率だけで判断すると時間がかかります。離職率を最終成果として見ながら、先行指標も併せて追うと、早い段階で変化を確認できます。

早期離職は、まず採用時の期待差とオンボーディングを確認する

入社後早い時期に離職が集中している場合は、入社後の施策だけでなく、採用時点から確認します。採用時に伝えた仕事内容、働き方、評価、配属、キャリアと、実際の職場との差が大きければ、入社後にフォローを増やしても根本原因が残るためです。

採用時に伝えた仕事内容や働き方と配属後の実態の一致を確認する図

採用研究では、仕事内容や職場の現実を過度に良く見せず伝える「Realistic Job Preview(現実的な職務情報の提示)」と離職の関係が長く研究されています。Earnestらのメタ分析では、現実的な職務情報の提示が組織の誠実さに関する認識などを通じて、自発的離職に関係する経路が検討されています。この記事では、採用時に実態を伝えることも、離職対策の一部として扱います。

実務では、次の一致を確認します。

  • 求人票に書かれた仕事内容と実際の仕事
  • 面接で説明した働き方と配属後の働き方
  • 採用時に期待した役割と上司が求める役割
  • 入社時に伝えた評価・キャリアと実際の運用
  • 入社初期に必要な支援とオンボーディング内容

採用チャネルごとの90日・180日定着率を比較したい場合は、採用チャネルと入社後定着率をつなげて評価する方法で確認できます。本記事では、チャネルの優劣ではなく、離職原因から採用内容を改善することに焦点を置きます。

離職理由を採用要件・面接・求人情報へどう戻すか

離職率改善を人事制度や現場施策だけで完結させず、採用へ学びを戻すと、同じミスマッチの再発を減らせます。この節では、離職から分かったことを、採用側のどこに戻すかを決めます。

離職理由の分析結果を採用要件・求人・面接・オンボーディングへ戻して再測定する改善フロー

離職理由を退職後の集計で終わらせず、採用要件・求人・面接・オンボーディングへ戻し、同じ指標で再測定する流れです。次の表は、離職から分かったことと、採用へ戻す内容を対応させたものです。

離職から分かったこと 採用へ戻す内容
想定より対人折衝が多く、仕事内容のギャップが出た 求人情報と面接で、業務比率・難しい場面まで具体化する
配属後に求められるスキルが不足していた 採用要件と選考質問を見直す
勤務時間や繁忙期への認識差があった 働き方と繁忙期の情報を応募前・選考中に明示する
入社直後に役割が分からなかった 採用から配属先への引き継ぎ項目を固定する
キャリアの見通しが合わなかった 面接時にキャリア例と不確実な点を分けて説明する

ここでの目的は「辞めそうな人を採らない」ことではありません。退職データから、採用前に伝えるべき情報、確認すべき適性、入社後に引き継ぐべき情報を明確にすることです。

離職率改善は30・60・90日で「分析→実施→再測定」を回す

原因がまだ特定できていない会社は、最初から大規模な制度改定を行うより、小さく分析と改善を回すほうが進めやすくなります。次の表は、90日間の進め方と、各期間でそろえる成果物の例です。

期間 実施内容 成果物
0〜30日 離職率の定義統一、過去12か月程度の退職データ整理、理由分類 離職データ一覧、重点課題候補
31〜60日 重点部署・職種の原因確認、施策決定、担当・期限設定 改善施策表、先行指標
61〜90日 施策実行、初期指標確認、採用・オンボーディングへの反映 初回レビュー、採用側への変更点
90日以降 同じ定義で再測定し、継続・修正・停止を判断 月次・四半期レビュー

最初の30日は、改善よりも、定義とデータをそろえることに使います。この土台があれば、61日目以降の施策も、90日以降の再測定も、同じ定義で比べられます。

人材の定着には、仕事内容、人間関係、組織とのつながり、失うものの大きさなど複数の要素が関わります。Jiangらが65の独立サンプル、合計42,907人を対象に行ったメタ分析でも、職場や組織への「埋め込み(job embeddedness)」は、離職意向だけでなく実際の離職とも負の関係が確認されています。

そのため、離職率改善を単一施策で解決しようとせず、自社で確認した原因に合わせて複数の施策を組み合わせ、同じ指標で再測定することが重要だと考えます。

離職率だけでなく、応募から入社・定着までの指標を一続きで確認する場合は、採用改善の効果測定の全体像もあわせて確認してください。

離職率改善で確認するチェックリスト

最後に、自社の離職率改善を始める際の確認項目を整理します。次の10項目のうち、まだ当てはまらないものから着手してください。

  • 離職率の計算方法と対象者を固定している
  • 全社平均だけでなく、入社時期・部署・職種別に見ている
  • 退職者本人の発言と社内の推測を分けている
  • 離職理由を共通分類で記録している
  • 1件だけで原因を断定せず、複数のデータを確認している
  • 離職理由ごとに追加確認するデータを決めている
  • 施策ごとに担当者・期限・先行指標を決めている
  • 施策後も同じ定義で離職率・定着率を再測定している
  • 早期離職の原因を採用要件・求人情報・面接へ戻している
  • 採用からオンボーディングへの引き継ぎ内容を見直している

離職データの切り分けや改善施策を社内で整理する際は、無料ダウンロード資料も活用できます。確認用の資料一覧は、資料ダウンロードページから確認してください。

まとめ

離職率を下げるには、施策を増やす前に「誰が・いつ・なぜ辞めているか」をそろえて分析することが出発点です。

全社の離職率だけではなく、入社後の時期、部署・職種、離職理由を掛け合わせれば、優先して改善すべき課題を絞り込めます。そのうえで、離職理由ごとに確認データ、定着施策、先行指標をつなぎ、同じ定義で再測定します。

特に早期離職では、入社後のフォローだけでなく、採用時の仕事内容・働き方・評価・配属の伝え方まで戻って確認します。離職を「退職後の結果」で終わらせず、採用と組織改善へ戻すデータとして扱うことで、同じミスマッチの再発防止につなげられます。

最初の一歩は、離職率の定義を決め、過去12か月程度の退職データを時期・部署・職種・理由で並べることです。

参考文献・データ元

この記事で参照した情報を確認できます。

  1. 厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」
    URL: https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/26-2/index.html
    使用内容: 2025年の離職率、一般労働者・パートタイム労働者の離職率

  2. 厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」
    URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00010.html
    使用内容: 2022年3月卒大学卒就職者の3年以内離職率

  3. 労働政策研究・研修機構(JILPT)調査シリーズNo.250
    「若年者の初職における経験と若年正社員の離職状況―第3回若年者の能力開発と職場への定着に関する調査―」
    URL: https://www.jil.go.jp/institute/research/2025/250.html
    使用内容: 若年者の初職離職、職場経験・離職理由に関する調査

  4. Jiang, K., Liu, D., McKay, P. F., Lee, T. W., & Mitchell, T. R. (2012).
    When and how is job embeddedness predictive of turnover? A meta-analytic investigation.
    Journal of Applied Psychology, 97(5), 1077–1096.
    DOI: 10.1037/a0028610
    URL: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22663557/
    使用内容: job embeddednessと離職意向・実際の離職の関係

  5. Earnest, D. R., Allen, D. G., & Landis, R. S. (2011).
    Mechanisms linking realistic job previews with turnover: A meta-analytic path analysis.
    Personnel Psychology, 64(4), 865–897.
    DOI: 10.1111/j.1744-6570.2011.01230.x
    URL: https://doi.org/10.1111/j.1744-6570.2011.01230.x
    使用内容: 現実的な職務情報の提示と離職の関係を説明する研究

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