[独自調査] Report ID: SBR-2026-015
公開日:2026年9月18日 著者:菊地 将
要旨
本報告書は、原記事に記載された調査の内容を、原記事の記載の範囲で報告する。本記事では、生成AIの回答検証行動に関する国内外の実態調査と、独自企業データベースによる1,000社の公式サイト情報開示実測を組み合わせ、「AIの回答を受けた後、何が再確認されやすいのか」を分析します。結論から言えば、生成AIの回答をそのまま鵜呑みにせず何らかの形で裏取りする人は約8割にのぼり、法人購入検討者の45%は「レビューサイトからの引用」をAI回答の信頼を高める最大のシグナルと回答しています。一方、独自DBの実測では、実績・評判・口コミ・導入事例といった「裏取りされやすい情報」の開示率は2.2〜16.1%にとどまることが分かりました。今回の1,000社はデモンストレーション目的で抽出したサンプルであり、独自企業データベースに登録された企業全体(約13万社)を代表する値ではありません。
調査概要
- 対象:企業公式サイト
- 方法:公式サイト情報開示実測(独自企業データベース)
- サンプル:1,000社
生成AIで法人向けサービスを比較検討する見込み客が増えていることは分かっていても、AIの回答を見たあとに、そのまま問い合わせに進むのか、別の場所で確かめてから動くのかまでは把握できていない担当者は少なくありません。そこが分からないと、自社サイトのどの情報を先に用意すべきかを決められません。
先に答えを述べます。生成AIの回答をそのまま鵜呑みにせず、何らかの形で裏取りする人は約8割にのぼります。法人購入検討者の45%は、「レビューサイトからの引用」をAI回答の信頼を高める最大のシグナルと回答しています。一方、独自企業データベース(以下「独自DB」)の1,000社を実測すると、実績・評判・口コミ・導入事例といった裏取りされやすい情報を公式サイトで開示している企業の割合は、2.2〜16.1%にとどまりました。
本記事では、生成AIの回答検証行動に関する国内外の実態調査と、独自DBによる1,000社の公式サイト情報開示の実測を組み合わせ、「AIの回答を受けた後、何が再確認されやすいのか」を分析します。ここでいう「裏取り」「再確認」は、AIの回答を別の情報源で確かめる行動を指します。使う調査は対象がそれぞれ異なる(一般の生成AI利用者、B2Bの意思決定者、ローカルビジネスを検索した消費者)ため、節ごとに対象を示します。また、再確認されやすい情報は実測と調査を重ねた推定であり、実際の閲覧行動を観測した結果ではありません。読み終えたあとは、自社サイトのどの情報を優先的に補強すべきかが分かります。
生成AIの回答を見たあと、どのくらいの人が別の情報源で裏取りしているのか
この節では、外部の実態調査から、AIの回答後に裏取りする人の割合と、法人購入の場面で何が信頼のシグナルになるかを確認します。
ナイル株式会社が2026年5月27日〜6月1日に実施した「生成AIの信頼度に関するアンケート調査vol.3」(全国の20〜60代男女3,000人が対象)では、生成AIの回答について他の情報源で裏取り(ファクトチェック)を「する」と回答した人が28.1%、「たまにする」と回答した人が50.8%でした。合計すると約8割が、何らかの形で裏取りを実施しています。裏取りに使う情報源は、検索エンジンが91.6%ともっとも多く、生成AIが示す参照ページリンクをたどる人も27.7%いました。AIの回答は、そこで終わりにならず、検索などで改めて確かめられることが多いと分かります。
法人購入の場面では、さらに踏み込んだ実態が報告されています。G2社が2026年3月に実施した「The Answer Economy: G2’s 2026 AI Search Insight Report」(複数部門・事業単位の購買判断に関与するB2B意思決定者1,076名が対象)で、「AIの回答の中で、何が信頼を高めるシグナルになるか」を尋ねたところ、もっとも多かった回答は「レビューサイトからの引用」で、45%でした。AIの提案を検証する行動としては、「他の利用者の評価・意見を確認する」人が24%、「なぜその選択肢が除外されたのかをAIに質問する」人が22%、「別のAIツールでも試してみる」人が19%という結果も示されています。
AIの回答を確かめるとき、法人購入の検討者は、他の利用者の評価という第三者の情報を重く見ている、と読み取れます。ただしG2社の調査は海外中心のB2B購入層が対象のため、日本の法人購入にそのまま当てはまるとは限りません(詳しくは「分析の限界」で整理します)。
AIの推奨を受けたあと、人はどの情報源で確認するのか
次に、AIから推奨を受けた後の確認先を見ます。取り上げるYext社の調査は、法人向けサービスではなく、一般消費者のローカルビジネス検索を対象にしたものです。数値をそのまま法人購買に当てはめることはできないため、確認先の「分かれ方」を読み取る材料として使います。
Yext社が2026年に実施した「Yext 2026 Consumer Search Behaviors Report」(ローカルビジネスを検索した18歳以上の消費者3,848名が対象)では、AIから推奨を受けた後に取る行動として、「Google・Bingで検索して確認する」が53%、「企業の公式サイトに直接アクセスする」が49%、「AIが示した引用元をクリックする」が42%、「Google・Yelp等でレビューを確認する」が28%、「企業のSNSを確認する」が20%という結果が示されています。AIの回答から直接購入に進む人は、わずか5%にとどまります。

AIから推奨を受けた後も、検索・公式サイト・引用元・レビューなど複数の情報源で確認する行動が見られます。Yext調査は一般消費者のローカルビジネス検索が対象です。
この図が示すのは、AIの回答だけで完結せず、検索エンジン・公式サイト・引用元・レビューサイトという複数の情報源に分散して裏取りする、という行動パターンです。このパターン自体は、法人購入検討者を対象にしたG2社の調査(レビューサイトからの引用を重視する回答が最多)とも方向性が一致しています。つまり、確認先は公式サイトの1か所ではありません。
公式サイトだけで再確認は完結するのか:独自DB分析
ここからは独自DBの実測を使い、「再確認されやすい情報ほど、公式サイト側にそもそも用意されていないのではないか」という観点で分析します。
独自DBに登録された企業の中から、固定条件で抽出した1,000社(話題性が高いと判定された企業404社、それに近い条件の企業475社、無作為抽出121社)を対象に、公式サイトを確認しました。データ取得日は2026年9月14日です。「事実」「評判」「条件」という3つの観点に分け、次の論点について情報の開示率を測定しています。
- 事実の裏付けとなる情報:実績(導入社数・成果等の数値)、導入事例
- 評判に関わる情報:評判、口コミ
- 条件に関わる情報:価格・費用・相場、契約期間、解約、導入期間、トライアル、保証
開示率は、各論点について実際にページを確認できた企業だけを分母とし、そのうち該当ページ・記載が見つかった企業の割合です。サイトの取得に失敗した企業(ドメイン切れ、タイムアウト、サーバーエラーなど)を「情報なし」として扱うと、実態より低い数値になってしまうためです。分母となる観測できた企業の数は、論点によって1,000社中866〜972社(86.6〜97.2%)の範囲でした。
結果は次の表のとおりです。
| 区分 | 論点 | 開示率 |
|---|---|---|
| 事実 | 実績 | 2.2% |
| 事実 | 導入事例 | 16.1% |
| 評判 | 口コミ | 7.3% |
| 評判 | 評判 | 8.2% |
| 条件 | 価格・費用・相場 | 19.3% |
| 条件 | 解約 | 15.3% |
| 条件 | 契約期間 | 16.7% |
| 条件 | 導入期間 | 16.7% |
| 条件 | 保証 | 16.7% |
| 条件 | トライアル | 36.5% |
表を区分ごとに読みます。「事実」は実績が2.2%、導入事例が16.1%、「評判」は口コミが7.3%、評判が8.2%でした。「条件」は相対的に開示率が高く、特にトライアル(36.5%)や価格・費用・相場(19.3%)は比較的多くの企業が用意していました。契約期間・導入期間・保証はいずれも16.7%、解約は15.3%です。次の2つの小見出しで、再確認に使われやすい「事実」と「評判」を詳しく見ます。
実績を具体的な数値で示している企業は2.2%にとどまる
「事実」に関わる論点のうち、導入社数や成果指標を具体的な数値で示している企業は、ページを確認できた企業のわずか2.2%でした。同じ区分の導入事例は16.1%で、実績より高いものの、多数派ではありません。
この結果は、利用者がAIの回答にある「導入実績が豊富」といった記述を公式サイトで裏取りしようとしても、具体的な数値そのものが載っていないケースが大半である、ということを意味します。
評判・口コミを確認できる企業は1割未満
「評判」に関わる論点(評判ページ・口コミページ・第三者の口コミサイトへのリンク)の開示率は、7.3〜8.2%にとどまりました。G2社の調査で法人購入検討者の45%が「レビューサイトからの引用」を最大の信頼シグナルとして挙げていたことをふまえると、まさにその裏取りに使われやすい情報を、公式サイト自身はほとんど提供していないことになります。

レビューはAI回答の信頼確認で重視される一方、公式サイトで口コミ・評判情報を確認できる企業は1割未満でした。数値は異なる調査・母集団によるもので、直接比較ではありません。
再確認は、どの情報に向かいやすいのか:実測と調査から推定する
この節では、ここまでの外部調査と独自DBの実測を重ね、再確認が向かいやすい情報を推定します。
筋道は2つです。第一に、生成AIの回答を検証する際、多くの利用者は「レビューサイトからの引用」を重視し(G2社調査、45%)、実際に他の利用者の評価を確認する行動を取っています(同24%)。第二に、独自DBの実測では、まさにその裏取りの対象になりやすい「評判」「口コミ」「実績」といった情報の公式サイトでの開示率が、今回測定した論点の中でも特に低い部類(2.2〜8.2%)にとどまっていました。この傾向は、価格やトライアルなどの条件情報と比べると、次の図のように整理できます。

1,000社の公式サイト実測では、実績・口コミ・評判などの情報は、価格やトライアルなどの条件情報より開示が少ない傾向でした。
公式サイトを見ても実績や評判の裏付けが確認できない場合、利用者はレビューサイトや比較サイトなど、公式サイトの外側で裏取りをせざるを得ません。このため、公式サイトの情報開示が薄い論点ほど、比較後の再確認が公式サイト以外の情報源に流れやすいと推定できます。
ただし、これはあくまで、実測した情報開示率の低さと、外部調査が示す検証行動の傾向を重ね合わせた分析・推定です。特定のサービスについて、実際に生成AIの回答後に何が検索・閲覧されたかを観測した結果ではない点にご留意ください。
生成AIが企業情報の信頼性を判断する際の要素を整理したい場合は、AI検索の信頼性シグナルの全体像もあわせて確認してください。
分析の限界と、今回分からなかったこと
ここまでの結果は、次の限界を前提に読んでください。
- 「機能」「品質」の2論点は、対応する専用ページの項目を用意していないため、開示率を算出できていません。
- サイトの取得に失敗した企業は分母から除外していますが、除外された企業の中に実際は該当情報を持つ企業が含まれている可能性はゼロではありません。
- 今回の1,000社はデモンストレーション目的で抽出したサンプルであり、独自DBに登録された企業全体(約13万社)を代表する値ではありません。
- Yext社の調査は一般消費者のローカルビジネス検索を対象にしたものであり、法人向けサービスの購買行動をそのまま表すものではありません。G2社の調査は法人購入検討者を対象にしていますが、グローバル(海外中心)のB2Bソフトウェア購入層が対象であり、日本の法人向けサービス市場全体を代表するとは限りません。
- 「事実」「評判」「条件」のどの区分がもっとも再確認されやすいかという優先順位そのものを直接比較した調査データは見つからず、順位付けは行っていません。
- 業種別・企業規模別の開示率の違いについては、今回は十分な精度で分類できるデータが整っておらず、分析対象から除外しました。
公式サイトでは、何から点検すればよいのか
今回の分析を踏まえると、法人向けサービスを提供する企業は、比較後の再確認に備えて次の4点を点検することが有効と考えられます。実績・評判・条件・ページ構造の4点を、公式サイトで確認できる状態にしておくための項目です。

生成AIで比較された後に公式サイトでも確認できるよう、実績・評判・条件・ページ構造の4点を点検します。
- 導入社数や成果指標を、具体的な数値として明示しているか
- お客様の声や第三者評価・口コミサイトへのリンクを、自ら設置しているか
- 契約期間・解約条件・導入期間など、条件面の情報をFAQ等でまとめているか
- 生成AIの回答から訪れた人が探しやすいよう、実績・評判に関する情報を独立したページとして整理しているか
これらは、いずれも今回の実測で開示率が2割に満たなかった論点です。生成AIの回答をきっかけに比較検討が始まった見込み客が、公式サイトで十分に裏取りできず、他の情報源へ確認先を移す可能性があります。それを避けるために、優先して情報を補強しておくことが有効と考えられます。
まとめ:再確認に応えられていない情報から点検する
生成AIの回答をそのまま鵜呑みにせず、何らかの形で裏取りする人は約8割にのぼり、法人購入検討者の45%は「レビューサイトからの引用」をAI回答の信頼を高める最大のシグナルと回答しています。一方、独自DBによる1,000社の実測では、論点ごとの開示率の単純平均が、「事実」に関する情報は9.2%、「評判」は7.8%で、「条件」の20.2%を下回りました。
公式サイトが「事実」「評判」の裏付けを十分に示せていない状態は、比較後の再確認が口コミサイトや比較サイトに流れやすい土壌になっていると考えられます。まずは、前の節の4点のうち、自社サイトで裏取りに応えられていないものを洗い出してください。それが、生成AIでの比較を経た見込み客を取りこぼさないための一つの手段になります。
参考文献・データ元
この記事で参照した情報を確認できます。
- ナイル株式会社「調べものでの使われ方や信頼性への意識が変化?生成AIの信頼度に関するアンケート調査 vol.3」(調査期間:2026年5月27日〜6月1日、対象:全国の20〜60代男女3,000人、調査方法:インターネット調査〈Freeasy〉)https://www.seohacks.net/column/30680/
- G2.com, Inc.「The Answer Economy: G2’s 2026 AI Search Insight Report」(調査時期:2026年3月、対象:複数部門・事業単位の購買判断に関与するB2B意思決定者1,076名)https://learn.g2.com/g2-2026-ai-search-insight-report
- Yext, Inc.「Yext 2026 Consumer Search Behaviors Report」(調査時期:2026年、対象:ローカルビジネスを検索した18歳以上の消費者3,848名)https://www.yext.com/resources/consumer-search-behaviors-full-report
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