SNSのなりすまし被害では、「すぐ通報する」だけでなく、通報前に証拠を残すことが重要です。
企業名、代表者名、ブランド名、社員名などを使った偽アカウントを見つけたら、基本は次の順番で対応します。
- なりすましアカウントと投稿の証拠を保存する
- 被害範囲と緊急度を確認する
- X・Instagram・Facebookの公式窓口から通報する
- 顧客・取引先への注意喚起を判断する
- 金銭被害、脅迫、継続的な権利侵害がある場合は警察・弁護士への相談を検討する
- 犯人特定が必要な場合は、削除手続きとは別に発信者情報開示を検討する
削除と犯人特定は別の手続きです。
「まず何を保存すべきか」「各SNSでどう通報するか」「どの段階で専門家へ相談するか」を、企業担当者向けに整理します。
30秒でわかる|SNSなりすまし被害の初動
なりすましを見つけた直後は、次の5点を優先してください。
| 優先 | やること | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | URL・投稿・プロフィールを保存 | 削除後に証拠が確認できなくなるのを防ぐため |
| 2 | DM・送金誘導・問い合わせを保存 | 実害や二次被害の範囲を把握するため |
| 3 | 公式SNSから通報 | アカウント停止・修正等につながる可能性があるため |
| 4 | 顧客・取引先へ必要な注意喚起 | 偽DMや詐欺の拡大を防ぐため |
| 5 | 法的対応の要否を判断 | 削除だけでなく発信者特定や損害賠償が必要な場合があるため |
最も避けたいのは、証拠を残す前に通報・ブロックだけを行い、その後に問題投稿やURLを確認できなくなることです。
SNSなりすましとは?
SNSなりすましとは、第三者が他人や企業・ブランド等を装い、本人・公式アカウントであるかのように見せる行為です。
企業では、たとえば次のような被害があります。
- 会社名やロゴを使った偽公式アカウントが作られる
- 代表者や社員の氏名・顔写真を使われる
- 顧客へ偽キャンペーンや偽当選DMが送られる
- 取引先へ振込先変更などの虚偽連絡が送られる
- 採用担当者を装って求職者へ連絡される
- 偽アカウントから誹謗中傷や虚偽情報が投稿される
ただし、名称や画像が似ているアカウントがすべて同じ扱いになるわけではありません。
Xでは、他者を欺く目的のなりすましを禁止する一方、一定の表示条件を満たすパロディ・解説・ファンアカウントを認めています。通報時には、「似ている」だけでなく、何が誤認を招いているかを整理することが重要です。
なりすましを見つけたら最初に保存する証拠
アカウント情報
最低限、次を保存します。
- アカウントのURL
- ユーザーID・ユーザー名
- 表示名
- プロフィール画像
- プロフィール文
- フォロワー数・フォロー数
- 公式を装っていることが分かる表示
スクリーンショットだけでなく、URLをテキストでも控えるのがポイントです。
投稿・ストーリーズ・コメント
問題となる投稿がある場合は、次を残します。
- 投稿本文
- 投稿URL
- 投稿日時
- 画像・動画
- 返信・引用・コメント
- 拡散状況が分かる画面
投稿部分だけを切り抜くのではなく、アカウント名やURLとの関係が分かる状態で保存してください。
DM・問い合わせ・実害
偽アカウントからDMが送られている場合は、会話全体を残します。
特に、次の情報は重要です。
- 送金先・振込先
- 外部サイトへの誘導URL
- 電話番号・メールアドレス
- QRコード
- 「公式」「担当者」などと名乗った文面
- 顧客や取引先から届いた問い合わせ
- 実際に金銭・個人情報が渡ったことが分かる記録
被害者本人だけでなく、顧客や取引先が受け取ったDMも、可能な範囲で共有してもらいます。
証拠保存で避けたいこと
- スクリーンショットを加工して元データを残さない
- 投稿だけ保存してアカウントURLを控えない
- 証拠保存前に相手をブロックして確認できなくする
- 社内チャットへ画像だけ貼り、原本の保存場所を決めない
- 被害日時を記録しない
企業では、案件ごとにフォルダを作り、「原本」「時系列」「顧客問い合わせ」「通報記録」を分けて保存すると後から確認しやすくなります。
STEP1|被害の緊急度を確認する
なりすましの中でも、優先順位は同じではありません。
緊急度が高い例
- 振込や送金を要求している
- クレジットカード情報や個人情報を入力させている
- 偽キャンペーンで外部サイトへ誘導している
- 脅迫・犯罪予告がある
- 取引先へ虚偽の指示を出している
- 多数の顧客へDMを送っている
- 会社の信用を大きく損なう虚偽情報を投稿している
この場合は、SNSへの通報だけでなく、顧客への注意喚起、社内セキュリティ担当への共有、警察や弁護士への相談要否を並行して判断します。
まず公式アカウントの乗っ取りではないか確認する
「なりすまし」だと思っていても、実際には自社の公式アカウントが乗っ取られているケースがあります。
次を確認してください。
- 公式アカウントへログインできるか
- 登録メールアドレス・電話番号が変更されていないか
- 不審なログイン通知がないか
- 管理者や連携アプリが追加されていないか
- 身に覚えのない投稿・DMがないか
乗っ取りの場合は、なりすまし通報より先に、各SNSのアカウント復旧・セキュリティ手順を使います。
STEP2|Xのなりすましアカウントを通報する
Xは、個人・集団・組織を混同や誤解を招く形で装う行為を禁止しています。
本人、ブランド、正式な代理人は、Xヘルプセンターのなりすまし報告窓口から申告できます。Xの公式案内では、Xアカウントを持っていなくてもなりすまし報告が可能とされています。
Xへ通報するときに用意するもの
- 被害を受けた本人・企業の情報
- 公式サイトURL
- 公式XアカウントURLがある場合はそのURL
- なりすましアカウントURL
- どの点が誤認を招いているかの説明
- 必要に応じて本人確認・権限確認に必要な情報
企業名や商標を不正使用されている場合は、なりすまし報告に加えて、商標に関する申告が適する場合もあります。
Xの通報後
Xは報告内容を確認し、ポリシー違反と判断した場合、アカウントの凍結やプロフィール修正等の対応を行う場合があります。
通報しただけで必ず削除されるわけではありません。報告番号やメールを保存し、追加情報を求められた場合に対応できるようにします。
STEP3|Instagramのなりすましアカウントを通報する
Instagramでも、他人や企業等になりすますアカウントを報告できます。
アプリ内では、対象プロフィールのメニューから報告フローへ進み、なりすましに該当する選択肢を選んで申告します。画面表示や項目名は更新されることがあるため、最新のInstagramヘルプセンターの案内も併せて確認してください。
Instagramで用意しておきたい情報
- なりすましアカウントのプロフィールURL
- ユーザー名
- 本人・企業の公式アカウントURL
- 公式サイトURL
- なりすましと判断した理由
- 無断使用された写真・ロゴ・投稿の記録
- 偽DMや外部リンクの記録
本人になりすましたアカウントの報告では、本人確認資料の提出を求められる場合があります。
STEP4|Facebookのなりすましプロフィール・ページを通報する
Facebookでも、他人になりすますプロフィールやページを報告できます。
対象プロフィール・ページから報告する方法のほか、Facebookヘルプセンターの案内から進める方法があります。
Facebookでも、通常のなりすまし通報はアカウントやページへの対応を求める手続きです。相手の氏名・住所等を被害者へ開示する手続きではありません。
X・Instagram・Facebookの対応を比較
| SNS | 公式のなりすまし報告 | 主に期待する対応 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| X | あり | 凍結・プロフィール修正等 | 企業・ブランドは商標申告が適する場合あり |
| あり | アカウントへの措置 | 本人確認資料を求められる場合あり | |
| あり | プロフィール・ページへの措置 | 通報と発信者特定は別手続き |
公式の通報窓口や画面は変更されることがあります。古い記事のスクリーンショットだけを頼りにせず、各サービスの最新ヘルプを確認してください。
STEP5|削除までの間に二次被害を止める

通報から対応まで時間がかかる場合があります。
企業の場合は、削除を待つだけではなく、必要に応じて注意喚起を出します。
注意喚起に入れる内容
- 偽アカウントが確認されていること
- 正式な公式アカウントURL
- 会社からDMで求めない情報や行為
- 不審な連絡を受けた場合の問い合わせ先
- 偽アカウントへ返信・送金・個人情報入力をしないよう求める案内
注意喚起で避けたいこと
- 証拠なしに「犯人は○○」と個人名を公表する
- 偽アカウントを過度に引用・拡散する
- 感情的な反論を続ける
- 調査中の情報を断定する
注意喚起は、公式サイトと公式SNSの両方に掲載し、顧客が「どれが本物か」を確認できる状態にします。
STEP6|通報しても削除されない場合の考え方
通報後もアカウントや投稿が残ることがあります。
その場合は、次を確認します。
- 通報対象のURL・アカウントが正しいか
- 「なりすまし」以外の違反にも該当しないか
- 商標・著作権・プライバシー侵害など別の申告窓口が適切でないか
- 投稿単位での報告が必要でないか
- 実害が継続しており、法的な削除請求を検討すべき状況でないか
「SNSが削除しない=違法ではない」とは限りません。プラットフォームのルールと法律上の権利侵害は別の判断です。
「通報・削除」と「犯人特定」は別手続き


SNSへの通常通報は、主にアカウントや投稿への措置を求めるものです。
一方、誰が運営しているのかを特定し、損害賠償等まで検討する場合は、発信者情報開示の手続きが問題になります。

| 目的 | 主な方法 |
|---|---|
| 偽アカウント・投稿を止めたい | SNSへの通報、削除請求等 |
| 相手を特定したい | 発信者情報開示の検討 |
| 金銭被害・脅迫等がある | 警察・弁護士への相談を検討 |
| 顧客の誤認を止めたい | 公式サイト・SNSで注意喚起 |
犯人特定を詳しく知りたい場合は、関連記事「SNSなりすましの犯人を特定する方法|開示請求の条件・流れ・費用【X・Facebook対応】」をご覧ください。
なりすまし被害で警察へ相談した方がよいケース
次のようなケースでは、SNSへの通報だけで終わらせず、警察への相談を検討します。
- 金銭をだまし取られた、または送金させようとしている
- クレジットカード情報や認証情報を盗もうとしている
- 脅迫や危害予告がある
- 取引先や顧客への詐欺行為が続いている
- 実店舗や従業員の安全に影響が出ている
緊急性が高い場合は、SNSの削除結果を待たずに対応してください。
弁護士へ相談を検討するケース

- なりすましによる信用毀損や名誉毀損が継続している
- プラットフォーム通報で解決しない
- 発信者を特定したい
- 損害賠償請求を検討している
- 商標・著作権等の権利侵害が絡む
- どの法的請求が適切か判断できない
発信者情報開示や損害賠償請求などの法律事務は、個別事情による判断が必要です。
企業が社内で決めておきたい対応フロー
なりすまし被害は、広報・法務・情報システム・カスタマーサポートが同時に動くことがあります。
事前に次を決めておくと初動が早くなります。
- 誰が証拠保存を担当するか
- 誰がSNSへ通報するか
- 誰が注意喚起文を承認するか
- 警察・弁護士への相談基準
- 顧客問い合わせの一次回答
- 公式アカウント一覧の管理場所
- 経営層への報告基準
特に、「誰が公式アカウントを管理しているか分からない」状態は対応を遅らせます。アカウント一覧、管理者、登録メールアドレス、二要素認証の運用を平時から整理しておきましょう。
なりすまし被害の再発防止策
公式アカウント一覧を公開する
自社サイトに、X・Instagram・Facebookなどの公式アカウント一覧を掲載します。
「当社の公式SNSはこちらです」と明示しておけば、顧客が真偽を確認しやすくなります。
公式アカウントのセキュリティを強化する
- 二要素認証を有効にする
- 管理者を必要最小限にする
- 退職・異動時に権限を削除する
- パスワードの使い回しを避ける
- 連携アプリを定期的に見直す
ブランド名・代表者名を定期確認する
SNS内検索や検索エンジンで、自社名、ブランド名、代表者名などを定期的に確認します。
被害が大きくなる前に偽アカウントを発見できる可能性が高まります。
SNSなりすましのよくある質問
Q. なりすましアカウントはすぐ削除できますか?
必ずすぐ削除されるとは限りません。各SNSが報告内容を審査し、ポリシー違反かを判断します。まず証拠を保存し、公式窓口から正確に申告してください。
Q. Xはアカウントを持っていなくても通報できますか?
Xの公式ヘルプでは、なりすまし報告にXアカウントは必要ないと案内されています。
Q. Instagramで本人確認書類を求められることはありますか?
本人になりすましたアカウントの報告では、本人確認資料を求められる場合があります。提出時は必ず公式のMeta・Instagramの案内から進んでください。
Q. 偽アカウントから届いたDMは保存した方がよいですか?
はい。会話全体、相手のアカウント、日時、リンク、送金先などを保存してください。顧客や取引先が受け取ったDMも、実害把握の重要な資料になります。
Q. 通報する前に相手へ「削除してください」と連絡した方がよいですか?
一律には勧められません。相手へ反応することで投稿が増えたり、証拠が消されたりする可能性があります。まず証拠を保存し、被害状況に応じて通報・専門家相談を判断してください。
Q. なりすまし犯人を特定できますか?
一定の要件を満たす場合、発信者情報開示によって特定につながる可能性があります。ただし、通常のSNS通報とは別手続きです。詳しくは「SNSなりすましの犯人を特定する方法」をご確認ください。
Q. なりすまし投稿が誹謗中傷にも当たる場合はどうすればよいですか?
なりすまし通報と、投稿内容自体の権利侵害は分けて整理します。判断基準は「誹謗中傷とは?口コミサイト・SNSの書き込みは該当する?判断基準を解説」も参考にしてください。
なりすまし発見時チェックリスト
- アカウントURLを保存した
- ユーザー名・表示名・プロフィールを保存した
- 問題投稿のURL・本文・日時を保存した
- DM・コメント・問い合わせ記録を保存した
- 顧客・取引先の実害を確認した
- 公式アカウントの乗っ取りでないか確認した
- X・Instagram・Facebookの公式窓口から通報した
- 通報番号・メール等を保存した
- 顧客への注意喚起が必要か判断した
- 金銭被害・脅迫等がある場合の警察相談を検討した
- 発信者特定・損害賠償が必要な場合の弁護士相談を検討した
- 公式アカウント一覧を自社サイトで確認できる状態にした
- 二要素認証・管理権限を見直した
まとめ|証拠保存→通報→被害拡大防止の順で動く
SNSなりすまし被害では、最初の数時間・数日で何を残したかが、その後の対応を左右します。
基本の流れは、
証拠保存 → 被害確認 → SNSへの通報 → 注意喚起 → 必要に応じて警察・弁護士相談
です。
通報・削除と、犯人特定は別の手続きです。まずは被害を止めることを優先し、発信者情報開示が必要な場合は別途判断してください。
SNS上の反論が逆に拡散を招くケースもあります。対外発信の判断に迷う場合は「逆炎上とは?企業が誹謗中傷対策でやってはいけない6つの対応と防止策」も併せて確認してください。
参考情報
この記事で参照した情報を確認できます。
- X Help「なりすましアカウントの報告」
- X Help「Authenticity」
- Facebook Help Center(なりすましプロフィール・ページの報告)
- Instagram Help Center(なりすましアカウントの報告)
- 裁判所「発信者情報開示命令申立て」
- e-Gov法令検索「情報流通プラットフォーム対処法」
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別案件の法的判断を行うものではありません。具体的な発信者情報開示、損害賠償請求、刑事手続等は弁護士その他の専門家へご確認ください。
‹ 親記事: 誹謗中傷とは?口コミサイト・SNSの書き込みは該当する?判断基準を解説




